VOL.7 新鮮!安い!直売所のあれこれっ! その②問題編 ~地域移住のコレいい、コレあかん~
朝8時半に町内放送でチャイムが結構な音量で鳴るんやけど、これ夜勤の人とかやったらそこそこ地獄やと思います。これは田舎だから?生まれ育ったとこではなかったが。
さてさて。
前回に引き続きテーマはこちらです!
【安い!新鮮!直売所のあれこれ―!“その2 問題編”】
前回は直売所ってなにー?をQ&A方式でお届けしました。特に比較的新鮮で安い商品が販売されており、さらに生産者の手取りも多くなるシステムってことで、『うぉー!直売所っていいことばっかやん!!』と思う方もいらっしゃるかと思いますが、そんな甘くはないのが世の中。
直売所は主に3つの組織(人)から成り立っています。直売所を運営する「運営者」、直売所で商品を販売する「生産者」、直売所で購入する「消費者」です。
それぞれの視点から直売所の問題点を記述していきたいと思います。
(1)運営者の問題について
運営者は簡単な話で店舗を運営させて利益を求めるわけです。但し、運営者の形態が千差万別なのが直売所ビジネス。その運営者の問題についてはどのようなことがあるのでしょうか?
(A)そもそもビジネス素人であることが多い
直売所ではビジネス素人が経営に携わっているケースが多々あります。これは直売所を自治体がメインとなり設立するケースで比較的多くあり、その経営を地元の生産者組合や自治体主導でできた第三セクターの企業に任せることから生まれてきます。当然、箱もの小売店を経営したことがない方々が経営することになりますので、ここで活躍するのが「謎のコンサルタント」となります。そして、毎年のように「自治体の助成金」ありきの運営となることにも繋がってしまいます。
予め言っておきたいが、必ずしもこの全てが悪いと言いたい訳でない。但しこれが「当たり前」となってしまうと、経営努力を怠ることにも繋がり、結果的に直売所運営が苦しくなることに至ってしまうのである。
【直売所の運営主体一覧】
(B) そもそもスタッフが野菜販売素人であることが多い
(A)が起因となることになるが、一般的に小売店となると「スタッフ」の役割が相当重要になってくるのは言うまでもない。「コンビニ」のようなある種インフラの役割を担う業態や「チェーン飲食店(吉〇家やマ〇ドなど)」のように商品がカスタマイズされた業態ではスタッフの役割や重要性は薄らぐが、直売所はそうではない。商品での差別化が難しい中、スタッフの接客スキルや知識などが売り上げに直接的に貢献することになります。
道の駅くるめ(https://www.michinoeki-kurume.com/sommelier/)ではスタッフの一部が「野菜ソムリエ」の資格を取得し、経験則だけではなく栄養面や調理法など知識面からの情報の提供も行っている。スタッフの仕事がただの「レジ打ち」や「商品陳列」だけでは他との差別化は困難になる。
(C)結果強い直売所と弱い直売所に分かれる
(A)と(B)の結果はそのまま、購買力の強い直売所と弱い直売所が分かれていくことに繋がります。しかも直売所は地域外には出荷できない決まりがあるところも多く、出荷可能だとしても遠方に出荷し、また売れ残りを回収することを考えるとかなりの手間になります。
結局生産者は地元の直売所と心中する事が基本です。
特に農地を持たない新規就農者は近くにある直売所が「強い直売所」か「弱い直売所」かは、就農エリアを決める際の重要な要素にしたほうがいいですね。
最後に一つモンスター直売所を紹介しておきます。直売所界の怪物、モンスター、ファンタジスタとの名を欲しいままにするJA糸島が経営する「伊都菜彩」(https://www.ja-itoshima.or.jp/itosaisai/)です。売り場面積などにもよりますが、年間売上が3億あれば優秀と言われる直売所において2017年段階で40億オーバーなんですね。ここまで直売所そのものをブランディングさせ購買力を向上させると、当然値段の強気の設定が可能です。そうなるとさらに商品が集まる、好循環が生まれます。
優秀な生産者を多く引き込みたいなら、直売所自体が優秀な経営をしていかないといけないのは言わずもがなです。
(2)生産者の問題について
直売所の魅力でもあり問題でもあるのが「生産者が直接納品して値付けをする」ということです。自分が育てた野菜を、自分が値を付けて、直接お客様が買ってくれた時はそりゃ嬉しいです。そして自分の野菜が売れ残った時はモヤモヤ~っとするものです。しかも売れ残りは生産者が回収に行かないといけないのが基本です。ではなるべく多くの人に買ってもらいやすくして売れ残りを避けるためにはどうするか、一番簡単な方法は「他の人より値を下げる事」となります。
「いや値を下げたら手取りが少なくなるじゃん?」との意見がありますが、ごもっともです。しかしこれには農業の超高齢化問題が背景にあります。「え~んじゃよ、わしゃ儲けなくても。安くなってもお客さんが喜んでくれりゃ」という層が直売所によっては多数派になる場合があります。
そもそも農業従事者の平均年齢は約67歳と言われてます。「30代のバリバリ働いて稼いでいくぜぃ!」と「定年後の趣味程度にちょこっとお小遣い稼ぎができたらいいよねー」がバチバチになる産業界なのです。そしてその縮図が直売所となるわけです。
ダラダラと値が下がっていくのか、堪えてそこそこ高値でもお客様が買ってもらえる工夫をしていくのか、ここが優秀な直売所になるための分かれ目であり、最終的にそれが生産者にも還元されていくことに繋がります。
私の知り合いの若手農家は直売所にあまり出荷しない農家が多くいます。直売所では自分の販売したい額で販売できない状況に追い込まれるからです(その他POP不可やブランド品種の販売がしにくい等もある)。最悪の場合、その地域において若手農業者が育たないことにも繋がってしまします。
【直売所の問題点】
「安い直売所はダメな直売所、高い直売所は優秀な直売所」と呼ばれる所以はここにあるのです。
(3)消費者の問題について
正直、消費者においてそれほど直売所で購入することにおいて問題はない。前回のnoteにも記述したが、比較的新鮮で安価に農産物を購入できるのだから消費者にとっては基本的にうれしい事が多いのです。
ただ私は基本的にうれしいことが多い直売所だからこそ「買い物を楽しむ」だけではなく次のステップを意識してほしいと思ってます。それは自分たちが購入した野菜のことや農業について(畜産や魚介も同様)知るということです。
最近、種苗法改正がフューチャーされました(私もnote書きました)。
賛成派反対派様々意見はあると思いますが、農業を知るきっかけができたことは私はよかったと思ってます。一番危険なことは“無関心”であることです。食は基本的には誰もが携わらざるを得ません。もちろん直売所に行く目的は「安くて新鮮な野菜を買いに行きたいー!」で構いません。ただその直売所の中で野菜のことを知り、農業のことを知り、自分たちや子供たち孫たちがおいしい野菜を食べ続けれるようにするには、どのような協力ができるのだろうか。
その考えるきっかけを直売所は与えていってほしいし、消費者の方々は感じてほしいと思います。
っと、直売所の問題についてでしたがいかがでしたでしょうか?直売所に行きたくたくなったのではないでしょうか?笑
次回は直売所3部作の最終、私が好きな振り切った直売所2選をお届けします。
お読み頂きましてありがとうございました。
ではまたー