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日下野由季『句集 祈りの天』(ふらんす堂・平成19年)
みなさま、こんにちは。
今日は『句集 祈りの天』という本を見ていきましょう。
著者は以前ご紹介した日下野由季さんです。
↓過去記事はこちらです。
『句集 祈りの天』では、俳人 高橋悦男さんが序文を寄せています。
この句集の最大の特色は何といっても作品が若々しいということである。作者はまだ二十代の若さ、しかも、この句集には十代からの作品が収められている。(中略)若い人の句は、とにかく独りよがりで解りにくかったり、表現がぎこちなかったりしがちだが、由季さんの句にはそういう若さゆえの未熟さや独善的傾向が全くない。表現はやさしい中にもめりはりがあり、何よりも発想が新鮮で若々しい。(中略)いわゆる前衛俳句のような飛躍した難解さはない。言葉はあくまで易しく、しかし、発想は独自で鋭く繊細である。しかも、言葉に汚れがなく、透明で清純である。これは天性のものであろうが、それに加えて、私はこれは由季さんの日々の努力の中から生まれてきた精華だと思う。
上記は抜粋ですが、全文をお読みいただければ大変行き届いた評だとお分かりになると思います。もはや私がここで云々する必要はありません。
好きな句を引いておこうと思います。
竜胆はわが誕生花瓶にさす
遠まはりして幸せを待つ花野
流れゆく時ゆるやかに秋の海
青空のかんざしとして梅ひらく
かなかなや人恋ふるとは宥すこと
はくれんの祈りの天にとどきけり
菜の花や明日を明るき日と思ふ
薄紅の雫こぼるる余花の雨
あぢさゐにある海のいろ空のいろ
白萩に屈みたる身のやはらかき
待つといふことの一途に秋桜
竜胆咲くむらさきの意志つらぬきて
好きな句を引いておきます、とは言ったものの本書に収められている句はどれも惹かれます。
句集まるごと好き、というのは私にとってはなかなか珍しく、こういう本に出合えたことに大きな喜びを感じます。ずっと手元に置いておきたい本になりました。
俳句も短歌も絵画も、私はいつも「美」を求めています。