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知音俳句会の思い出

みなさま、こんにちは。
今日は知音俳句会の思い出を書いてみようと思います。

就職して数年経ったころ、俳句と短歌をしっかりと勉強してみたいと思い、知音俳句会と塔短歌会に入会しました。
毎月、俳句二十句余・短歌十首の原稿を書いて送る生活。
三十歳までに俳句か短歌のどちらか一つに絞ろうと決めていました。
その結果、私は短歌を選んだわけですが、決して俳句が嫌いになったわけではありません。
高校生の頃に買った水原秋櫻子の『俳句小歳時記』は今も時折ひらいています。

知音は行方克巳先生と西村和子先生の複数代表制です。私が入会した時は、行方先生の選を受けておりましたが、途中から西村先生の選になりました。

下記は『知音』2021年1月号の掲載句。西村和子選です。私がはじめて西村先生の選を受けたときのものです。

ゆく夏に取り残されしピアノかな
秋風もすれ違ふとか迷ふとか
物語はじまる秋のベンチかな
耳に髪かけるしぐさや銀杏ちる

『知音』2021年1月号

葉書で五句出して四句掲載。選の数だけで言えばこのときがいちばん成績が良かった。晩夏から秋にかけての句で、自分のなかでもとりわけ思い出深い句です。

知音では私のような新規の入会者は、まず「ボンボヤージュ」という初心者教室に通います。ちょうどCOVID-19が流行しだした頃だったので、私は井出野浩貴先生に毎月郵送で添削をいただいておりました。通信教室でうまれた句はこちら…。

父と来し神田まつやも冬に入る
独り身の箸おく音や冬深し
たなごころひらくごとくに紫木蓮
フルートの音色やはらか雪解水
雨の日の桜散り敷く母校かな
たんぽぽの綿毛飛び立つあしたかな
すずらんのひとつ離れて咲きにけり
送り火や絶ゆることなき川の音
うきくさの風のかたちを描きけり
くるぶしの高さの花に秋の蝶
読みさしの詩集に栞秋うらら
箸一本落つる音さへそぞろ寒
寒林や生涯未婚てふ言葉
初雀独り暮らしの我が家にも
受験子の机上にひとつチョコレート
町の名の地図より消えて花林檎

「ボンボヤージュ句会」2020年3月~2021年4月

添削の現場としては、「父と来し神田まつやの冬に入る」を先生が添削されて上記の「父と来し神田まつやも冬に入る」になりました。添削の意図としては、冬に入るのは「まつや」だけではなく、町全体なので「も」がいい。一文字でずいぶん様子が変わりますね。
他には、「雨ふつて桜散り敷く母校かな」も、因果関係で言葉を繋いでおり、説明的な句になっているため、「雨の日の桜散り敷く母校かな」に直していただきました。すっきりしましたね。


私が知音に所属していた期間は短いものの、季節が二周する程度にはたまっていたようです。転職前に作ったものです。

すれ違ふよそゆき顔の春ショール
春立つやフレアスカート風はらみ
久々にランドセル見し立夏かな ※COVID-19緊急事態宣言解除後
ででむしの一日二十八時間
かきつばたゆつくり話す人とゐる
ふるさとの母よ緋牡丹咲きにけり
村中が死んでしまつたやうな夏
行間に取り残されしままの夏
秋晴や入試問題校了す
言ひさしの言葉さがして風は秋
願ひごとひとつ唱へて星月夜
学生のゐないキャンパス冬紅葉
駆け寄つて笑ふ学生息白し
どの人もうつむきがちに冬の駅
鯛焼の袋の端の湿りかな
肩掛をすべらす指の白さかな
昇進のしらせありけり梅ひらく
寒梅や髪を切つたと言ふ人と
立子忌や赤鉛筆を買ひ足して
難しいことはさておきさくらんぼ
恋人の歯ブラシ買うて夏隣
思ひ出のかをりたとへば夏蜜柑
夏蝶や紙の栞を愛用す
妹のピアスきらめき若楓
盆帰省祖母のくしやくしや笑顔かな
秋風や頬杖ついて見送りぬ
丸もじの手紙をもらふ夢二の忌
読みかへす内定通知小六月
冬の朝ロッカー閉づる音ひびき
往来の人をながめて秋の暮
横顔のくつきり見ゆる冬の朝
早朝の教室しづか黄水仙

『知音』2020年7月号~2022年5月号

その他、知音のホームページに掲載していただいた句をリンクとともに記しておきます。

秋風もすれ違ふとか迷ふとか
さう言へば今日は修司忌空を見る
沢庵を切つてはじめる月曜日

『知音』2021年1月号、2021年8月号、2022年3月号


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