「結婚って、実際どうなん?」|曖昧で文学的な最高純度の大学生活
「なあお前ら、俺は将来結婚はしないつもりだ。なぜならいつまでも多種多様な女と寝たいからなっ!フハハハハ!!!」
なぜ僕は、こんな野蛮な奴と友達になってしまったのだろう。恥ずかしいことこの上ない。きっとこいつは、来世はバッタか何かだろう。
ミツヤがそんなことを突然叫んだのは、僕ら文学部の必修授業である「近代文学入門A」が終わった後、廊下で3人で駄弁っていた時だった。
「やっぱりさ、結婚しちゃうと浮気が不倫になっちゃうわけで、法的にも面倒なことになっちゃうじゃない?慰謝料とか。俺、そういうの嫌なんだよね」とミツヤは自身ありげに言う。
「じゃあお前は40代、50代になったときでも、まだ自分がモテる自信があるのか?」
「それは、、、まあ、自分磨きすりゃいけるだろ。」
「いや、無理だね、若い連中には負けるさ」と羽鳥が珍しく正論を言う。
明日は釘が降るかもしれない。
「なぁ、詠世はどう思うよ?」とミツヤが僕に加勢を求めて目を丸くしている。
「僕は、、今は結婚したいとは思わないかな。」
「だろ!! やっぱり詠世だって女とヤリたいよな!」
「いや、そう言うことじゃなくて、きっと今後、彼女と結婚したいと思う時がくると思うんだ。今はまだ来ていないだけで」
「たとえば?」と羽鳥が聞いた。
「たとえばさ、僕が一世一代の決心をしてベーリング海峡でカニ漁をしてくると言うとするじゃん?」
「おお、あの半数が生きて帰ってこないという伝説の出稼ぎか?」
「うん。で、それを彼女に話した時、彼女が泣いて自分のことを心配してくれたとする。」
「なるほど、確かにそれはグッとくるかもな。」とミツヤ。
「でもね、僕はちゃんと彼女に説明するんだ。ベーリング海峡でカニ漁をすることは小さい頃からの夢なんだ、ってね。そのために体も鍛えてきたし、船や海流、漁業に関することを必死で勉強してきたんだ。って。」
「それで?」
「それで、彼女は泣きながら僕を応援してくれるんだ。詠世がそんなに言うなら、分かった、って。本当にやりたいことを後押ししてくれる。それで彼女は、僕の気持ちを理解しようと、色んな人に聞いてまわったり調べたり、ベーリング海に行きたいという頭のオカシイ僕を必死に理解しようとしてくれるんだ」
「待って、泣きそう」羽鳥はチビデブのくせに涙もろいやつだ。
こいつと友達になって、僕は心底良かったと思っている。彼はいい奴だ。きっと来世は、カピバラか何かだろう。
「泣いてくれていい。僕もきっと、もし彼女にこう言われたら、涙を我慢して静かに誓うと思う。」
「彼女と結婚しよう、って?」とミツヤが尋ねる。
「そうだ。」
僕らはその後、羽鳥の家にいつも通り集合して、また麻雀をやった、男3人の地獄のような麻雀。煙草は換気扇の下で吸ってくれよミツヤ。的な空間で過ごしていた。
「なあ、俺やっぱり結婚したいかもしれんわ。よく考えてみたんだけど」
「ミツヤ、やっと詠世の話の良さがわかったか!じゃあミツヤも早く俺みたいに可愛い彼女を見つけろよ。」
「うるせえな、なんで羽鳥があんなに可愛い彼女がいるのか不可思議なんだよ。ナスカの地上絵くらい不可思議だわ」
「で、ミツヤは明日何するの?」
「え、決まってるだろ、タップルいれるんだよ」
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