ハルノートは精読すらされてないと思う
広島に比べると長崎の原爆はあまり話題にならない気もするのですが、長崎は太平洋戦争の前と後で産業構造の転換は行われていないため、長崎では軍需産業がそれなりに強い街とも言えます。
長崎では平和記念公園以上に目立つのは三菱の工場、研究所で、市内の至る所に三菱の事業所が存在する三菱城下町です。
イージス艦の製造も行われていますし、三菱通りと言う名の道路もあれば、重工記念病院だってあります。共産党ですら長崎では三菱に頭が上がりません。
そして、三菱重工は日本で唯一魚雷を造れる会社なのですが、隣町の長与には魚雷製造工場があります。
広島の産業構造が太平洋戦争前と後で変わったのかは知りませんが、長崎は今も神戸と並ぶ軍都と言えるでしょう(尤も神戸は川崎重工やIHIなども拠点を構えているので長崎以上に本格的です)
そんな長崎に玉音放送が流れた日にいることになったわけですが、日本がアメリカと開戦する理由に「ハルノートの内容があまりにも酷かったから」というものがあります。
何故こんな風説が出回るようになったのかわかりませんが、ちゃんと時系列を追うと、ハルノートは全く日本の意思決定に影響を及ぼしていないことがわかります。
中高生時代に習った歴史は大半の大人が忘れてる
ネットでは「学校の歴史は嘘だらけだった」みたいなこと言ってる人がいますよね。
もしそんな人を見かけたらこう言ってみてください。
「じゃ貴方が中高生時代に使ってた日本史の教科書を写真で見せて」と。
恐らく大半の大人が中高生時代に習った歴史なんて覚えてないでしょうし、まして教科書は捨ててるでしょう。一部には取っておいてある人はいるとおもいますが、私自身、中高生時代の学校の教科書は世界地図を残して捨てています。ちなみに世界史と地理は超得意な教科でした。
ある意味で、日本史は多くの人が大人になってから学び直しているのです。
もっと言うと、皆さん微分積分できますか?
三平方の定理は?
私なんて連立方程式すら怪しいです。
中高生時代に習った英語を世の中の大人60%覚えていたなら、英会話教室の売上なんて殆ど上がらないでしょう。関係代名詞Thatなんて、大半の大人は忘れています。だから外国人を前にすると、何も話せずシドロモドロするのです。日本史だって同様です。使わなきゃ衰える。大半の大人は中高生時代に習った日本史なんて忘れますよ。
ハルノートが理由だと時系列がおかしくなる
しかし、中高生時代の歴史を忘れていても、ハルノートが日本軍の意思決定に影響を及ぼしていないことを知る方法はあります。
NHKの開戦前の証言を記したアーカイブなんかは良い情報源です。
ここから、日米開戦に向けた時系列がわかるのです。
さて、真珠湾攻撃には加賀という空母が出撃していますが、加賀は真珠湾攻撃を行う部隊と合流するための行動を、11月17日の段階で始めていました。そして11月23日には加賀を含めた真珠湾攻撃部隊が択捉島に集結、11月26日にハワイへ向けて出航しています。ハルノートが届いたのはその後の話です。
ハルノートが日本に届いたのは27日の朝(日本時間)の話であり、もしハルノートが開戦の原因とした場合、少なくとも11月25日よりは前でないと辻褄が合わないのです。
更に言うと、真珠湾攻撃が決ったのは10月19日。
12月8日は真珠湾攻撃をしたと同時に、陸軍のマレー半島上陸もありますから、かなり入念な戦争準備をしていたことがわかります。
ここから、ハルノートは太平洋戦争開戦の理由にはなっておらず、日本側の意思決定には大して影響を及ぼしていないことがわかります。
ともすれば、精読されたかすらが怪しいのではないでしょうか。
少なくとも読まれたには読まれたでしょう。
ただし、それは後に開戦理由を正当化するために「都合よく翻訳された」のではないでしょうかね。
日本人同士ですら関東人には関西言葉が正しく理解できないことがあるのですから、米語なんて猶更です。
少なくとも時系列から読み取れるのは、日本は交渉を続行する意思は最初から無く、開戦は既定路線だったということです。
そして、ここから日本人が考えるべきことは「何故日本は絶対勝てない戦争に踏み切ったのか」ということではないでしょうかね。
改憲するなら戦争を正面から受け止めるべき
私自身は三菱重工や三菱電機、川崎重工が兵器メーカーであるということを知った上で投資しているので、反戦だとか平和を守ろなんて言う気はさらさらありません(と言っても日本は防衛産業がビジネスとして成立しないから撤退企業が増えてます)。
別に日本が再び戦争に向かっても、私は私の利益があればそれで良いという考え方であり、大事なのは平和ではなく利益です。
一方で、日本が平和を維持するには、現行憲法がベストであると言うこともまた、理解はしています。
そもそも先の大戦の反省として日本国憲法が生まれ、基本的人権が保障されるようになったわけです。
憲法改正は近年の近隣諸国との緊張が高まっているからこそ必要とされているのかと思いますが、仮に改憲してキチンと戦争できる普通の国になったとして、先の戦争を「日本は悪くない!」で済まそうとするなら、また同じ過ちを繰り返すと思いますよ。
尤も、改正憲法は統一教会(CIAの下部組織)やリチャード・アーミテージの思惑が絡んでるものなので、それこそ外国勢力の介入があるのですけどね。
「外国勢力から自分達を守るために憲法改正して防衛力強化が必要だ」とするなら、その先には徴兵も必要になります。
今現在の自衛隊すら慢性的な人手不足なので、防衛力強化が必要と言うなれば、予算を投入するだけでは到底足りず、徴兵しなければ今の自衛隊の人手不足は解消できないのです。
別に改憲しようが日本が再び戦争できる国になろうが、私は私の利益が得られる限りにおいて一向に構いませんが、少なくとも開戦正当化にあたってハルノートを持ち出すようでは、お先は真っ暗なんじゃないでしょうかね。