変わらないもの
いつからか、変わらないものに美しさを感じるようになった。
それに気づいたきっかけのことを少し振り返ってみる。
あれはコロナが流行り始めて世界が大きく変わり始めた時だった。
ものすごいスピードで、あらゆるものが姿形を変えていく中、相反するように私の心は変化を拒んだ。
変わりゆく世界に身体も心も追いつけなくて、さみしくて吐き気がした。そして死ぬほど泣いた。
追いつかなくて泣いて、追いつきたくなくて泣いて、追いついたのに追いついてる自分に気付きたくなくてまた泣いた。
世界と一緒に変わることは、過去の自分を忘れてしまうことに繋がるんじゃないかと思えた。これまで存在してきた自分が、消えてなくなってしまうんじゃないかと思えて、ただ単純にものすごくさみしかった。
でもそんな2020年に、この気持ちに出会えた。
変わることをさみしいと素直に思えたからこそ、変わらないものの美しさに改めて気付くことができた。
人の中にある大事にしたい思いとか、生きる上で大切にしたいこととか、人の心の根本にある「核」のようなものに触れた時、この上ない美しさを感じるようになった。
天気よりすきな子を選んだこととか、
自分が目立つよりも先に、楽曲を届けたいと思ったこととか、
なくなっていく映画館を前に、さみしいと言ったこととか、
受け取り方がどれだけ変わっても、いつだって誰かに音楽は届いてくれていることとか、
どれだけ世界や環境が変わっても、この思いだけはずっと変わらずにある感じ、
どんな些細なことでも、心の奥底でこれだけは誰にも変えられたくない、奪われたくないっていうものが垣間見得た時、私の心は大きく震える。
自分が美しいと感じるものたちに、共通点を見つけた気がする。どれも根本にずっと変わらない何かが存在していることだ。
変わらないもの、誰にも変えられないもの、誰にも奪われたくないもの
吐き気のする2020年だったけど、この1年がなかったら今の自分はいないと断言できる。
この1年があったから、美しいと思えるものたちの共通点を見つけることができた。
この1年を経て、私は人の大事にしたいものを大事にできる人でありたいと思えるようになった。
何かを与えられなくとも、せめて奪わない人でありたいと思うようになった。
それが私の、あの日から変わらないもの。