24/10/05 飲めるそば屋(しかもテキーラ)
友人から食事に誘われた。
・テキーラに力を入れている
・創業70年以上
・代々木八幡の蕎麦屋
・ペアリングコースがある
・そこに夏は鱧、冬は鴨の鍋がつく
ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ。多い多い。要素が多い。
まずさ、蕎麦とテキーラのペアリングって何なんだ。老舗のパリピ? いいでしょうと即答して行ってきた。エビバデダンスダンスじゃん。
パーリー会場は、そば處大野屋@代々木八幡。
入って席に着くと、真ん中に枯れ木のようなものが生けてあった。と思ったら枯れ木じゃない。揚げたそば。イタリアン居酒屋で揚げたパスタ出てくるノリですか。先制攻撃が早いのよ。
1杯目のテキーラが出てきて乾杯。悔しいことに軽いノリでそこにいた揚げそばだが、しっかりそばの香りがした。ちゃんと美味い。
このあたりで、あ、これ奇抜なお店じゃなく本当に土台しっかりしたお店ですねと姿勢を正す。パリピノリだったのは私だけでしたすみません。
その後そばがき、前菜盛り合わせ、季節の天ぷらと続き、合わせてテキーラが出てくる。前菜のシェリー酒で茹でた落花生がとんでもなくテキーラと合った。青パパイヤの煮物もよかった。
この時点で何料理なのかもう全然わからない。店内はずっと鰹出汁のいい香りがしていて、絶対に絶対に和食なのに。テキーラがいて、シェリー酒が使ってあって、パパイヤが煮てある。他の感覚の全てが違う国にいる。国っていうか違う世界だ。今我々は3次元で座標の表せないどこかにいる。
テキーラを出すたび、店主の大野さん(ワインソムリエでありテキーラマエストロのそば屋店主って何)が丁寧に説明を加えてくれる。そして途中で紙芝居が始まる。
メキシコのテキーラについて写真とともにプレゼンしてくれるのだ。
そもそもテキーラとは何ぞという話だが、テキーラはアガベ(リュウゼツラン)を使ったお酒で、テキーラ地区でつくられたものだけがテキーラと呼ばれている。他はメスカル。
シャンパンとスパークリングワイン、紹興酒と老酒、テキーラとメスカル、みたいな話っすね。
アガベからつくられるテキーラは、「100%アガベ」を謳っている高級品以外、50%くらい他のお酒が混ざっているんですよと教えてくれた。
テキーラといえばパリピスタイル(罰ゲームで一気飲み)のイメージが強かったのだが、大野屋での飲み方は基本ソーダ割り。ワインより少しアルコール度数が低いくらいに調整して出してくださっているそうだ。
ジンのようなさわやかでスイスイ飲めるものもあれば、フルーツのような華やかな香りで色もかなり黄色っぽいものも。樽で熟成しているものは味しっかりめ。
なぜ日本ではパリピスタイル飲み方が流行ったのかと質問したところ、昔テキーラは薬種的な立ち位置で、現地では気つけ薬のようにクッッッと飲んでいたからそこだけが日本で発展したのかもねと聞かせてもらった。ありそう。
「うちは鴨、冷凍じゃないんですよ。ちゃんといいやつを氷詰めで輸送してもらってる」と目の前で鴨鍋を調理してもらう。大野さんはつきっきりのサーブである。テキーラのコースにするなら直接サーブしてもらえるよう1階の席を予約するのがよい(お店は地下にも席がある)と言われた。
鴨ももちろん美味しかったが、そのあとに鰹と鴨の出汁で食べるそばが全部かっさらうくらい美味かった。そばちゃんと美味いのかよ…!!このそばで全然飲めるなと思い、コース外のテキーラを2度も追加した。全7種。
大野さんいわく、「テキーラはダウナーな酔い方をしない。早めに酔っ払って、ずっと楽しいが続く」。アゲな酒である↑↑
せっかくだから南下(国的な意味で)しようかと、2軒目はラムを飲みに行く。そこも店主さんが解説を丁寧にしてくれる店だった。
「たとえばテキーラなんかも、『100%アガベ』って言ってるものは本来のテキーラですけど、他のものはお酒が混ざってるんです。何が混ざってるかって言うと、ラムが混ざってるんですよね」
1軒目の話の復習だ。
同じ話でも1軒目では「半分混ぜ物なんですよ」とネガティブなニュアンスだったのに対し、2軒目では「それくらい身近なお酒なんですよ」とポジティブニュアンスなのが対照的であった。
つまり今日、テキーラとラムを飲んだ我々の腹の中では、本来のテキーラじゃないテキーラが出来上がっているわけねなどと思いながら帰った。
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