バイオ・マイスター®ver 2.0 “細胞計算盤による細胞数計測” 解説
セルミミックのウェブサイトに掲載しているバイオ・マイスター®ver 2.0の
細胞計算盤による細胞数計測ゲーム
を解説します。
ディスポーザブル細胞計算盤
その昔、私が大学院生だった頃は、細胞数計測はコールターカウンターを使っていました。卒業後、県立病院の歯科に勤務しながら、検査室の培養室で、患者さんの歯肉由来のケラチノサイトを培養させてもらうようになり、さて、細胞数を数えようとしたら、
何もない!
当然ですよね。。。
そもそも研究用に培養している部屋ではなく検査科の間借りさせてもらってたわけですから。研究用の予算もなく、コールターカウンターを買うなんて夢のまた夢です。
(ま、お金持ちの科は大きな研究費をもってらっしゃいましたけどね~)(;^_^A
実は、私は初めてそこで計算盤を使って細胞を数えました。大学院生の時は、病棟もありましたので、実際の血液の血球などは数えることもあり、血球計算盤は使ったことがあったので使い方は理解していました。
当然、検査室で使用するものなので、患者さん由来の血液を計測します。ですが、培養室でプライマリーの細胞を取り扱う際に、ガラス製の計算盤を使うことには気を使いました。計算盤を使った後は、流しでしっかりアルコールでサンプルを流し、その後は手袋を交換していました。
そんな時代を経て、ある時から、ディスポーザブルの細胞計算盤が販売されるようになりました。その頃は患者さん由来のプライマリー細胞を取り扱っていたわけではないですが、ウシ血清などは使ってましたので、バイオハザードの観点からは使い捨てが安全だと思いました。
近年では、ディスポーザブルの細胞計算盤も種類が増えて、価格も下がり、使いやすくなってきました。ありがたいです。
以前は、ガラス製品に比べれ、細胞分散液の流れが悪く、細胞が均一に分布しない、また、アプライ量を多めにして押し込むように入れないと溶液が入らないなどの問題がありましたが、今は、ガラス製品とほぼ同じような感覚で使えるようになったと思います。
光学顕微鏡下でマニュアルで数える
細胞浮遊液の11μL取り、計算盤に注入して光学顕微鏡下で数えます。カウンターを持って、目で一つずつ追っていき、カウンターを押して計測します。もちろん、慣れていないと数え間違えるかもしれません。ですが、慣れると早くて正確に数えられるようになります。2~3個の細胞が塊になっている細胞も、機械だと1個と数えてしまいますが、目視であればそれを3個と同定できます。 あまり多くの細胞が塊を作っていれば、再度、ピペッティングを行って分散しなおさないといけないことも気が付きます。
9つの区画がありますので、4つの角を数えます。対物x4では数えにくいので、対物x10にして数えていきます。
計算盤上の細胞の数え方
上の線と左の線、下の線と右の線のどちらでもいいのですが、線状の細胞はどちらかしか数えません。容量の問題でもあるのですが、
例えば、上の線と左の線を数えることにすると決めれば、
線上にある細胞は、
・上の線にかかった細胞を数える。
・下の線にかかった細胞は数えない。
・左の線にかかった細胞を数える。
・右の線にかかった細胞は数えない。
というルールで数えると、二度数えることがありません。
1区画は、1.0mmx1.0mm 深さは0.1mm
1区画の容積は
1mmx1mmx0.1mm=0.1μL
この区画で数えた数の平均をNとすると
N cells /0.1μL (1ml=1000μL)
1ml中にある細胞数に換算すると
=Nx 10,000 cells/ml となる。
トリパンブルーを等量に入れて希釈していれば、
N x 10,000 x 2 cells/ml となります。
つまり、1区画あたりの 数が20個だったとすると、20万個/ml ということになります。これに希釈率を掛けれると、40万個/mlとなるわけです。
計算盤で数えることのメリット
機械で数えるのもいいと思いますが、
① 細胞を解凍した時
② 細胞を凍結する時
③ マルチウェルに播種する細胞を調整する場合
④ 凝集しやすい細胞種の数を計測する場合。
⑤ マイトマイシン処理したフィーダー細胞を回収した場合
⑥ 少し激しくピペッティングしてしまったかも、と、思った時
という時は、計算盤で数えた方が、確実なのではないかと思います。
ただ、ある時は機械で数える、ある時は計算盤で数えるというのは、止めた方がいいです。数え方は一定にした方がいいと思います。
再生医療用の細胞を調整する際は、機器をどう消毒するのか?機器からでる排気は綺麗なのか?という問題を考えないで済むので、計算盤を使用されている方も多いと聞いてます。
それに、機器による細胞数測定のバリデーションするのは大変ですよね。。。
ともあれ、細胞計算盤で測定するのを一度もやったことがないよりは、やったことがある方が、いいことも多いです。やったことがない方は、是非、ゲームをトライしてみてください。