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H3ロケット3号機、7月1日に打ち上げへ 「試験機2号機の成功がまぐれではないことを証明する」
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2024年6月28日、H3ロケット3号機の打ち上げ前ブリーフィングを開催した。
天候悪化が予想されることから、打ち上げは1日延びることになったものの、打ち上げに向けた準備作業は順調だという。
3号機では、試験機1号機で打ち上げに失敗した「だいち3号」と同じ名前をもつ「だいち4号」を打ち上げるほか、試験機2号機の成功がまぐれではないことを証明する、重要なミッションとなる。
打ち上げは7月1日に
H3ロケット3号機の打ち上げは、当初6月30日に予定されていたが、打ち上げ前日と当日に天候悪化が予想されることから1日延び、7月1日に再設定されることとなった。
打ち上げ予定時刻は変わらず、12時06分42秒から12時19分34秒(日本標準時)となっているほか、打ち上げ予備期間として7月2日(火)から7月31日(水)まで確保されている。
延期について、JAXAによると、6月29日については、機体移動を行う20時30分ごろに雨と雷が予想されるという。とくに、機体移動では発射台の上に人が立って行う高所作業があるため、安全性の点から、雷が発生しないことが実施の条件となっている。
また、30日については、強風のほか、打ち上げ時間帯に高層に氷結層(氷を含んだ雲)が発生する恐れもあるという。ロケットもまた、雷を受けると故障する恐れがあることから、打ち上げ延期が決定された。
なお、7月1日の打ち上げの可否については、明日以降の天候状況を踏まえ、再度判断するとしている。
現在の天気予報では、30日から7月2日にかけて、やや強い風が吹くことが予想されている。JAXAでH3ロケットのプロジェクト・マネージャーを務める有田誠 (ありた・まこと)氏によると「(強風が打ち上げや準備に影響を与える)心配がまったくないかと言えば、ゼロではない。明日(29日)以降も慎重に天候判断を続けていきたい」としている。
スロットリングの技術実証
H3ロケット3号機は、JAXAが開発した先進レーダー衛星「だいち4号(ALOS-4)」を搭載し、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられる。
H3は昨年3月、試験機1号機の打ち上げに失敗し、先進光学衛星「だいち3号(ALOS-3)」を喪失した。今年2月には、模擬(ダミー)衛星を搭載した状態で、試験機2号機の打ち上げに臨み、失敗からのリヴェンジを果たした。
今回の3号機は、初めて「試験機」とつかない打ち上げとなり、本格的な運用開始に向けた、重要な一歩となる。
もっとも、H3は未完成であり、まだやるべき開発や実証試験が残っている。今回の3号機でもその一環として、第1段ロケットエンジン「LE-9」のスロットリング機能の、初めての飛行実証が行われる。
スロットリングとは、エンジンの推力(パワー)を絞る動作のことである。ロケットが第1段エンジンを燃焼させて飛行している状態で、エンジンの推力が一定の場合、推進薬(燃料)を消費し機体が軽くなるにしたがって、機体の加速度が大きくなり、搭載している人工衛星への負荷が厳しくなる。そこで、そのタイミングでスロットリングを行うことで、加速度の増加を抑え、衛星にとって乗り心地のいいロケットにすることができる。
今回のミッションにおいては、第1段エンジン燃焼フェーズの最後の段階で、数秒かけて推力を約66%に絞り、約20秒間、その状態で飛行する計画となっている。
有田氏によると、「他のロケットでは、5.5Gくらいの加速度がかかるのが標準となっている。H3ではスロットリングによって、今回の場合は4G程度にまで抑えることができる」という。
また、三菱重工でH3のプロジェクト・マネージャーを務める志村康治(しむら・こうじ)氏は「衛星は非常に高価なものなので、(衛星会社などの)お客さまにとって、乗り心地は重要なファクターである。また、加速度や振動を少しでも抑えることができれば、衛星の設計をする上でも効果が大きい。こういう機能があることで、お客さまにとっても非常に喜んでいただけると思う」と語った。
スロットリングは、固体ロケットブースター(SRB-3)をもたない「H3-30」形態を完成させるためにも必要不可欠な能力である。今回の実証が無事に成功し、30形態の実現につなげられるか、そして完全型のLE-9である「タイプ2」の完成につなげられるかが重要となる。
もともとLE-9にとって、スロットリングは開発当初から織り込まれていた機能だった。しかし、LE-9の開発が難航したことを受けて、早期の打ち上げを実現するために、まずはスロットリング能力をもたない「タイプ1」エンジンを開発して試験機1号機打ち上げ、その後スロットリングができる「タイプ1A」を開発するという流れとなった。
なお、厳密はタイプ1でも、技術的にはスロットリングは可能だったものの、試験機1号機の早期の打ち上げを実現するために、スロットリング機能を使わないことにして認定(完成)された。試験機2号機では、試験機1号機と同じ飛行プロファイルで飛ぶ計画だったこと、なによりタイプ1と1Aを1基ずつ装備していたため、やはりスロットリングは行われなかった。
有田氏は、「100%と66%の、2段階の推力を検証することは、ある意味2倍の労力がかかるところがある。タイプ1Aについては、これまでの地上燃焼試験で、スロットリング機能について十分な検証をした。通常の推力100%の燃焼と同じ自信を持って、フライトに供せると判断した」と語った。
「試験機2号機の成功がまぐれではないことを証明する」
今回の打ち上げは、H3にとって初めて「試験機」とつかないミッションとなる。また、JAXA側も三菱重工側もプロジェクト・マネージャーが代わり、新たな体制となって初めての打ち上げとなる。
H3の開発計画における、今回のミッションの位置づけについて、有田氏は「試験機2号機の打ち上げが成功したことで、H3がシステムとして宇宙へ飛んで行けるロケットであることは示せたが、それがまぐれではないことを証明しなければいけない。本格的な実用化に向けて大事なステップとなる」と語った。
また、打ち上げに向けた心境については、「正直なところ、緊張して眠りが浅い日が続いている(笑)。ただ、極低温点検の結果も踏まえ、打ち上げ準備作業は非常に順調で、着々と進んでおり、非常に心強く思っている。些細なことも見逃さず、着実に打ち上げ成功に導き、『だいち4号』をなんとしても軌道に届けたい」と語った。
そして、「H3の信頼性を盤石なものとするために、連続成功あるのみ。この先、一度も失敗することなく成功を続けることが私たちの使命だと思っている」と力強く語った。
志村氏は、「ロケット関係者一同、緊張感を持って取り組んでいる。ロケットの打ち上げはどれも等しく大事なので、今回が特別という想いを必要以上に抱くことなく、落ち着いて、平常心で打ち上げに臨みたい。打ち上げまで残りわずかとなったが、一つひとつの作業を最後まで確実、丁寧に仕上げ、『だいち4号』を宇宙に送り届けたい」と語った。
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