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H-IIAロケット49号機、天候不良で打ち上げ延期 延期が決まった3つの要因とは

 内閣衛星情報センターと三菱重工は2024年9月9日、H-IIAロケット49号機の打ち上げを延期すると発表した。

 当初、打ち上げは9月11日の13時00分から15時00分の間に予定されていたが、打ち上げ時の気象状況が条件を満たさないと予想されることから、延期を決定したという。

 新しい打ち上げ日は未定で、決定し次第、発表するとしている。

9日15時ごろ、竹崎展望台プレスセンターから見た種子島宇宙センター周辺。雨により、大型ロケット発射場が見えなくなっている

延期が決まった3つの理由

 9日の種子島地方の天候は、沖縄地方に近接する低圧部や、高気圧周辺の暖湿気流の影響により、大気の状態が不安定になっており、洋上で発達した雲が流れ混んできている。実際、発射場周辺も雨が断続的に降ったり止んだりしており、ときおり強い風も打ちつける荒れた天気になっている。

 予報では、このまま明日にかけて雨が降ったり止んだりの状況が続き、また雨足はさらに強くなっていくという。この状況は明日いっぱい、さらに当初の打ち上げ予定日だった11日のお昼ごろまで続き、大雨と雷に見舞われるとされる。

 こうしたことから、9日に行われた打ち上げに向けた判断会議において、打ち上げの延期が決定された。

 打ち上げ前ブリーフィングに登壇した、三菱重工のMILSET(三菱打上げサービス射場チーム)長を務める鈴木啓司(すずき・けいじ)氏によると、打ち上げ延期の要因は主に3つあるという。

 1つ目は、機体移動を予定していた10日から、打ち上げ予定日だった11日の午後にかけて、雷の発生が予想されることで、ロケットが射点で起立している状態では雷が落ちやすく、万が一落雷があると、機体や搭載機器が損傷する危険性がある。

 2つ目は、11日のお昼過ぎに、ロケットの飛行経路上に、規定値を超える厚さの、氷結層を含む雲の発生が予想されることである。氷結層とは、雲の中の0℃からマイナス20℃の層のことで、その中で氷の粒が衝突し合うことで電気を帯び、その衝突が激しい場合は落雷へとつながることが知られている。とくに、高速で飛行するロケットが氷結層を含んだ雲の中を突っ切ると、雷を誘発してしまう危険性がある。このため、飛行経路上に氷結層の発生が予想される場合は、打ち上げができない。

 3つ目は、11日には上空で強い東寄りの風が吹くことが予想されていることである。打ち上げの制約条件では、高層風については「射点近傍で破壊した場合に、落下破片等による警戒区域外への影響がないこと」が条件として定められており、これに抵触する可能性があるという。

 こうした3つの要因を総合的に評価した結果、打ち上げ延期を決定したとしている。

 新しい打ち上げ日は未定で、決定し次第、発表するという。打ち上げ予備期間は、9月12日から10月31日までの2か月弱の間が確保されている。

 なお、太陽同期軌道への打ち上げであるため、打ち上げ日が変わっても、打ち上げ時刻は変わらず、13時00分から15時00分の間のどこかになる。正確な打ち上げ時刻は、打ち上げの実施が決まり次第、決定され発表される。

 なお、種子島宇宙センターが発行しているセンター周辺の週間気象情報では、12日から天気が回復し、13日には打ち上げができそうにも見えるが、鈴木氏は「13日に関しても、必ずしも楽観できる状況にはない。気象予報はさまざまな要因で変わるので、日々、最新の気象予報に基づき判断したい」と延べた。

種子島宇宙センターの週間気象情報 (C) JAXA

 また、いまから1か月あまり後の10月20日には、H3ロケット4号機の打ち上げが予定されているが、今回の延期の影響について、鈴木氏は「H-IIAロケット49号機とH3ロケット4号機の間は、無理なく進められるスケジュールを取っているが、余裕があるというわけではない。もし、49号機の打ち上げが大幅に遅れることになった場合には、4号機の打ち上げ時期について検討することになる可能性は否定できない」と語った。

 ただ、「現時点で、たとえば『いつまでに49号機を打ち上げないと4号機に影響が出るか』といったことを一律に言うことは難しい。延期の理由などにも左右される。極力、4号機に影響がないように進めたい」とも語った。


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