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H-IIAロケット49号機、9月11日打ち上げ 情報収集衛星「レーダー8号機」を搭載

 内閣衛星情報センターと三菱重工は2024年9月11日に、鹿児島県の種子島宇宙センターから、H-IIAロケット49号機を打ち上げる。

 ロケットには、情報収集衛星「レーダー8号機」を搭載し、所定の軌道へ投入する。

 打ち上げ予定時刻は11日の13時00分から15時00分の間で、詳細な時刻は打ち上げ2日前の9日に開催される「打ち上げ前ブリーフィング」で発表される。

 9月8日時点での天気予報では、打ち上げ予定日の11日、また機体移動などの作業が行われる10日も、雷が発生する可能性があるとなっている。ロケットの打ち上げにあたっては、「発射前および飛行中において、機体が空中放電(雷)を受けないこと」など、さまざまな制約が設けられており、条件を満たさない場合には打ち上げが延期される可能性もある。

 天候不良で延期となる場合なども、打ち上げ前ブリーフィングで、その理由や新しい打ち上げ予定日などが発表される。

 打ち上げ延期に備えた予備期間は、9月12日から10月31日まで確保されている。

2024年9月8日時点の、種子島宇宙センターの週間予報 (C) JAXA

情報収集衛星「レーダー8号機」

 情報収集衛星は、内閣衛星情報センターが運用する衛星で、外交・防衛などの安全保障や、大規模災害への対応など、日本の危機管理のために必要な画像情報の収集を目的としている。その目的から「事実上の偵察衛星」とも呼ばれる。

 1998年の北朝鮮による「テポドン」ミサイルの発射を受けて導入が決定され、2001年に内閣衛星情報センターが設立された。そして、2003年から衛星の打ち上げが始まり、これまでに実証機や運用を終了したものを含めると18機が打ち上げられている(打ち上げに失敗したものを含めると20機)。

 情報収集衛星は、「光学衛星」と「レーダー衛星」の2種類から構成される。光学衛星は、光学センサー(デジタルカメラ)を使って地表を撮影する衛星で、地表を細かく見られるものの、夜間や雲があるときには観測ができない。

 一方レーダー衛星は、合成開口レーダー(SAR)という装置で、電波を使って撮影する衛星で、あまり細かいものを見ることはできないものの、夜間や雲があっても観測できるという特長がある。光学衛星とレーダー衛星を組み合わせて運用することで、日本周辺をはじめ、世界各地の安定的、継続的な監視、観測を行えるようになっている。

 現在の方針では、光学衛星とレーダー衛星それぞれ2機ずつの計4機体制で運用することになっており、これにより地球上のあらゆる地点を1日1回以上撮影することができる。4機体制は2013年4月に確立され、現在は、設計寿命を超えて稼動している衛星や予備機を含めると、光学衛星が4機、レーダー衛星は5機が運用されている。

 また2020年には、情報収集衛星と地上局の間で通信を中継するための「データ中継衛星1号機」が打ち上げられている。同衛星を使うことで、光学衛星やレーダー衛星が撮影した画像が地上に届くまでにかかる時間を短縮し、即時性を向上させることが可能になった。

 内閣衛星情報センターは、情報収集衛星の外観の写真をはじめ、質量や寸法、性能など、詳細については非公表としている。ただし、そうした具体的な事柄に触れない範囲で、基本的なことや特筆すべきことについては、わずかではあるものの明らかにされている。

 同センターが発表している資料によると、今回打ち上げられるレーダー8号機は、2023年1月に打ち上げられたレーダー7号機の同型機だという。同じ形の衛星を一体開発することで開発経費を大幅に節減できたとされる。

 また、6号機など前世代の衛星と比べ、レーダー7、8号機は「発信電波の増強による画質向上」、「受信アンテナの複数搭載による撮像幅の拡大」、「データ中継機能の搭載による即時性の向上」など、画質性能と運用性能の向上を実現したとされる。

 設計寿命は5年とされる。そのほか、外観や質量、製造メーカーなどは、これまでと同様に明らかにされていない。

 軌道についても公表されていないが、レーダー衛星であること、そして打ち上げ時刻から、降交点通過地方太陽時がお昼すぎの太陽同期軌道に投入されるものとみられる。

 このほか、令和2年度第3次補正予算案において、「情報収集衛星システムの機能の拡充・強化に資する施策」が計上されており、レーダー8号機などの開発工程における重要な品質の問題等を早期に把握・解決することを目的とし、開発などに必要な部品・材料等の調達、製作・試験や設計を可能な限り早期に実施するとされている。

 同予算案ではまた、レーダー8号機などの確実な打ち上げを行うことを目的として、ロケットの組立・試験工程の前倒しを実施し、ロケットの組立・試験工程の時間を十分に確保し、ロケット製造体制を強化することも盛り込まれている。

 情報収集衛星をめぐっては、情報収集衛星に不測の事態が発生した際の代替などを目的とした「短期打上型小型衛星」の開発も進んでいる。今年3月には、民間企業スペースワンの「カイロス」ロケットにより実証衛星が打ち上げられたものの、ロケットの打ち上げ失敗により失われている。

 政府はまた、宇宙基本計画において、2028年度以降をめどに、基幹となる光学衛星、レーダー衛星各2機の4機体制とは別に、基幹衛星とは異なる時間帯で地表を観測できる「時間軸多様化衛星」を計4機、さらにデータ中継衛星も2機備えた、計10機体制への拡充を計画している。

情報収集衛星レーダー8号機のミッション・ロゴ (C) 内閣官房

※トップ画像はH-IIAロケット48号機

参考資料


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