ファイアーエムブレム風花雪月プレイ&考察まとめ16-アビス書庫で見る帝国黎明期&金鹿後日談まとめ
皆さまお久しぶりです、もう2020年もあと三ヶ月というのはビックリですね!最近は紅花の散策記録をつけながら、大神と紋章の第一部をのんびりプレイ中です。今回は様々な場面で考察に関係してくるアビス書庫の内容を日英合わせてさっくり資料化しよう...としましたが見事にさっくりいきませんでしたので、アビス書庫まとめその1として帝国黎明期に関連する書物についてまとめたいと思います。考察記事というよりは資料記事を目指して作成しておりますので、モチーフ参考になりそうなものが真偽関係なく含まれておりますがご承知ください。(最終追記 11/28 ユリハピ支援の内容・北極星の考察を追加)
※DLC含めた全ルートに関連する盛大なネタバレ祭りです!
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アビス書庫とは
DLCで解禁されるアビスの書庫には、教団の書庫から密かに破棄された書物が眠っており、一部の教会の司祭たちやアビスの住人、また煤闇でリンハルトが閲覧している様子が見られます。金鹿ルートのトマシュによると黒き獣のように英雄の遺産により引き起こされる魔獣化に関する書物は、現在フォドラ中で破棄されてしまったとの話があります。英雄の遺産による魔獣化はセイロス教の権威に関係するため秘匿されているというレアとの会話もあることから、書物の検閲をセイロス教が積極的に行なっている様子がうかがえます。
(聖墓などに関しても書物は残っていない様子)
さらにアビスの書庫に存在した退廃の饗宴には廃棄に際してセテスの署名が入っており、また金鹿ルートでクロードの持っていた白きものの書物もセテスにより没収されます。修道士による女神再誕の儀での散策会話では、修道院に相応しくない書物がセテスにより廃棄されているとも言われており、教団関係者のうち少なくともセテスはこれら書籍の検閲に直接的に関係していると考えられます。
このようにアビスの書庫に保管されている書物は、以前大修道院の書庫に存在していた貴重な書物の可能性があります。そこで今回の記事ではアビスで発見された書物の日英版に関する情報をまとめます。全ての内容をひとまとめにしようと思いましたが、あまりの分量の多さに断念しましたので、今回は暦の謎と古びた手記、退廃の饗宴、愛の挨拶についてのまとめです。残りは紅花後日談と合わせて出せればいいなと思っていますが、今のところ未定です。ちなみに世界破滅伝奇に関しては以前の記事にまとめてありますので割愛させていただきます。
1. 暦の謎
暦の謎は帝国暦が制定されて久しい=だいぶ年月が経ってから書かれた書物で、そのうちの第二篇目の文章です。本編フォドラの世界のカレンダーでは一年は12の節に分割されています。この節という単位は帝国の建国以降に導入されたもので、その前には月という名称が使われていたそうです。「いたことがわかっている」という言い回しや、そもそも本にまとめられているほどなので、この本が書かれたのは月が用いられた時期を知る存命の人間がいない、帝国暦で少なくとも数百年単位で時間が経っている可能性が考えられます。
フォドラの暦は太陽暦である?
帝国暦以前の暦では1年は1月の守護の節から始まり12月の星辰の節で終わる形式だったようで、これは現代の暦と一致しています。一方フォドラの世界では4月大樹の節から始まり、3月孤月の節で終わる仕様になっています。フォドラのカレンダーには2月が28日と29日になる年が存在し、その他の月も現代の暦とおよそ一致する日数になっています。そしてカレンダーによると七曜の概念も存在しています(ただしメニュー画面はカタカナが許されているなどルールが異なるため、本編と異なる世界観の可能性もあります)。
白雲の章:(ちなみに閏日が日曜になるのは直近では2004年と2032年)
紅花の章:
現代で共通の暦として用いられているのはグレゴリオ暦ですが、その暦が作られる際に参考になったであろう暦が、古代エジプトで作られたソティス暦とローマで作られたユリウス暦です。この両者の暦はどちらも太陽の動きをもとにした太陽暦の一つですが、ソティス暦で暦の基準となったのは本編でソティスのモチーフでもあったシリウスの周期でした。このシリウスの周期は太陽とは完全に一致しておらず、シリウスが365日で一周したのに対して地球の公転周期はもう少し長くかかり、そのため少しずつ季節とズレが発生します(この差はおそらく地球の歳差運動とシリウス自体の固有運動の影響だと思われます)。
そこでユリウス暦では4年に一度閏年を導入することでその周期を365.25にし、さらに正確なグレゴリオ暦では閏年を導入する年を調整することでその周期を365.2425日にして調節しました。これにより地球の公転による季節の変動と高い精度で一致した暦を作り上げましたが、両者の間には1000年で7.5日差が生まれることとなりました。
エジプトがローマの属州となった際、ユリウス暦と一致させるため古代エジプト暦にも閏年が導入されていますが、こちらの暦は一月が基本的に全て30日でありフォドラの暦とは一致していません。またユリウス暦では時期によっても違うそうですが閏日の挿入は2月24日を繰り返す形で導入されていたそうなので、閏年を2月29日に持つフォドラの暦は太陽を基準にしたグレゴリオ暦に極めて類似していると考えられます。またなんらかの恒星(コニーのセリフから太陽の存在は確定)の周りを回転する惑星上にフォドラが存在した場合には、その公転周期は地球とほぼ同じである(365-366日の間)と推測されます。
書庫にある地球儀上でのフォドラの位置を見ますと、ほぼ一面を覆うほどの大きさを持ち、南・北半球にまたがっています。もし仮にこれが正しい縮尺で且つフォドラ全体で季節が統一されているならば、太陽に対してフォドラのある惑星の公転軸は傾いていないということになるかもしれません。しかしこの縮尺ではパルミラやダグザを大国と呼ぶのは少し難しい(途切れている)と思いますので、おそらくフォドラの地図を引き伸ばして球に貼っているだけで、真の地球儀ではないのではないかなと思います。ただ地図を球に貼るという発想があること自体が、フォドラが丸い惑星上にあって地動説が既に発明されている状況証拠にはなるかと思われます。また、大司教の部屋に置かれているオブジェは公転軸の傾いた地球のような惑星を模しているように見えます。
エジプトにおける新年と女神再誕の儀の類似
本文中では新たな暦において新年の時期をずらしたことについて言及されています。現代日本では新年は1月1日に設定されていますが、実は新年をいつに設定するかというのは国ごとにかなり大きく異なります。例えばベトナムなどの東南アジアの国々はフォドラのように4月を元旦としますし、中国では2月の旧正月を大々的に祝います。そして先述の古代エジプトの暦においては、シリウスを女神イシス等に見立てて信仰しており、新年を1月1日ではなくシリウスが日の出の直前東の空に見え始める日(ヒライアカル・ライジングが起こる日)に設定しました。この当時元旦とされた7/19はほぼ夏至の日に近く、この日をもとにナイル川の氾濫を予測し農耕に利用していたそうです。
そしてフォドラにおいても女神の星(=青海の星≒シリウスがモチーフ)が観測される時期が暦上重要なイベントであることを、7月の青海の節「女神再誕の儀」でナレーションと男の子の散策会話から知ることができます。少年によると「女神のふるさとである星(≒シリウス)が地上から見えるようになる日が女神再誕の儀を祝う由来である」とされ、エジプトにおけるヒライアカル・ライジングとほぼ同様の日である7月26日が女神再誕の儀の記念日として祝われていることがわかります。この日付は現実のソティス暦で最初に設定された元旦である7月19日(ユリウス暦上で)とは少し差がありますが、同じ月という点でかなり近い日ではあると言えます(追記:この日付自体は風花雪月の発売日に対応しているとのことです)。
ちなみに、5年後の7月のカレンダーを見てみますと↓、ここでも女神再誕の儀の予定は7/26に書かれています。地球上のシリウスの周期だとユリウス・グレゴリオ暦とは5年で本来約1.25日のズレが発生するため、この日程は天体の動きに関係なくセイロス教によりある程度固定された記念日であるか、フォドラでは太陽の周期と女神の星の周期が一致している可能性などが考えられます。
余談ですが、女神再誕の儀の章では少年が同時に「春にはお星さまは見えない」という発言をすることから、フォドラではこの7月から冬の間は夕方から明け方の間に女神の星を見ることができるのではないかと考えられます。各章冒頭のナレーションからフォドラの気候は地球における北半球に対応すると考えられるので(4月に植物の芽吹き、11月に冬の訪れなど)、北半球のフォドラでは7月から冬の間が青海の星を見ることのできる期間と考えられます。一方現代でシリウスが観測される時期は、例えばこちらによると11月中旬から3月下旬の夜空に見えるとされ、こちらの星ファンサイトでは夏の終わりから早朝に空に昇る姿が見られるともありました。緯度の違いによってこの日付も一週間ほどずれるのですが、2020年の8/15-16に一部地域で観測できるはずというブログ記事が少なくとも存在しています。つまりフォドラにおいて女神の星が初めて観測される時期(7月)と観測できなくなる時期(春)は、現代におけるシリウスの出現時期とは若干のズレがあるようです。
(シリウスはその明るさから早朝にも見ることができる、という点も青海の星と一致しているようです)
フォドラの北極星は地球から見て5000年後の姿?
そしてユリハピ支援でもう一つ明らかになるのが、現在のフォドラにおいて北天の中心にある星、北極星の存在です。北極星は不動のものだと思いがちですが、実は地球の自転軸は歳差運動という物理現象により少しずつズレており、数千年単位で北極星(最も北天に近い星)も変化します。現在の地球において、北極星はこぐま座の一星ポラリスですが、数千年たつとまた別の星が北極星になります。これらの星々にはケフェウス座のα・β・γ星が含まれているのですが、そのうち西暦7300-7500年前後に北極星となるα星アルデラミンの別名が「王の右腕」です。これは王が両手を広げた形を模したケフェウス座の中で、アルデラミンがその右腕部分で輝く星であるためなのですが、フォドラの北極星もハピの出身の里では「古の王の右腕」と呼ばれています。
闇に蠢くものたちに関する考察で、アビス書庫の書物や本編中の会話から彼らが過去(現代人のように)高い軍事力を持ち地上で繁栄していたこと、そしてOPで見られるソティスの走馬灯から、フォドラ以前に猿から進化した人類が大航海時代などを経て近代文明を築いた歴史が存在する可能性が示唆されていました。もし仮にフォドラが現在から遠い未来の時間軸に対応するのであれば、この北極星の通称の一致から考えるに、彼らは約5300年先の地球で生きている人類なのかもしれませんね。
(そしてこれを書いている最中に、過去記事でたまにシリウスに北極星という修飾を何も考えずにつけていることに気づきました。お詫びして訂正いたしますm(_ _)m )
なぜ四月が新年?
さて話を戻しますと、青海の星のヒライアカル・ライジングの日が女神再誕の日として人々に祝われているかわりに、フォドラの新年は4月大樹の節に設定されています。4月は日本における年度の開始月であり、士官学校の入学・卒業と対応していて都合がよいですがストーリー上必要な訳でもないため、わざわざここで言及した何かしらの理由がある可能性もあります。ただこれについてはエジプト関連で何かしら有力なものは見つかっていません...単純に名簿の表記を簡略化するためかもしれませんが、情報を絶賛募集中です(´;ω;`)
4月に新年を迎える国は東南アジアの国が多く、これらの国はヨーロッパの文化を中心とする風花雪月のモチーフにはあまり登場しません。ちなみに先述のユリウス暦では新年が初め3月であったため、年末である2月に閏日が挿入されていたという説があるようです。個人的に私が最初に女神再誕と聞いたとき一番に思い浮かべたのは、四月にあるキリストの復活祭でした。本来元旦とされていたヒライアカル・ライジングが7月の再誕の日に、そして元旦が逆に復活祭のある4月に設定されているため、この二つの関係をストーリーに合わせて逆転させたのではないかな〜というのが漠然と思い浮かんだ案ではありますが、あまり信憑性が高いとは言えないですね...。
カエサルのユリウス暦=ヴィルヘルムによる新暦?
暦の謎の続きに戻りますが、「途方に暮れるほど昔」「神代に答えを求める」とあり、今のフォドラの民が繁栄する前、おそらくアガルタの民たちの時代から月に基づく暦が使われていたことが示唆されます。冒頭ソティスから誕生日を聞かれる場面で節での回答を求められますが、もしこれがゲーム上の都合によるものではないのであれば、ソティス時代にも節が使われていたことになるのではないかと思います。すなわちソティス時代=節→?→アガルタ時代=月→帝国暦=節という変遷をしているのではないかということです。またソティスが知っているのが完全に現代のフォドラの節と同じだったため、花冠の節や青海の節など各節の名前とそのモチーフは、ソティス時代を再現するためにセイロスが人為的に教典などに盛り込んでいた可能性があります。
アドラステア帝国の皇帝ヴィルヘルムはフォドラの統一に先立って、混乱の中この新たな暦を導入し、結果フォドラで1000年の長きに渡り使われる暦となりました。そして歴史上このような皇帝による暦の導入で最も有名な例は、ガイウス・ユリウス・カエサル(以降カエサル)によるユリウス暦の導入ではないかと思います。ユリウス暦はヨーロッパにおいて約1600年にわたって使用された暦であり、ヨーロッパ全土だけでなく後に属州となったエジプト暦とも統合されました。さらに現在でもキリスト教の正教会と一部ローマ教皇指導下のカトリックの教会で暦として用いられているそうです。
宗教の教義やそれぞれで重要とされる概念には詳しくないので、実際にセイロス教とカトリックの中身が類似しているのかについてはここでは触れません(↓参考リンク)。がしかし、ヨーロッパに広く普及している宗教という意味で、キリスト教の様々な要素がセイロス教のモデルに取り入れられているだろうことは想像に難くありません。キリスト教にとりいれられたユリウス暦と、セイロス教にとりいれられたフォドラ暦(?)という関係からモチーフ関係が存在していてもおかしくありません。
そして実はこのカエサル、士官学校の始まりのムービーで先生が読んでいる戦術書に彼の著書であるガリア戦記が引用されていることを先日発見しました。以下1枚目の馬の絵の下に書かれているラテン語を検索したところ、ガリア戦記の一文がヒットしました(ちなみに1枚目の向かって左側のページだけ文章が右揃いになっており、画像が上下逆さまではないか?と疑っています)。著者不明の戦術本いう設定だそうですが、内容は帝国の建国など何らかの過去の戦争と対応している可能性があります。このような要素を鑑みると、武力でフォドラ全土を統一し、その際大きな混乱を招きながらも皇帝が新たな暦を導入するという流れは、カエサルを彷彿とさせるものではあります。
追記:ニンドリインタビューで古代ファーガスのモデルがガリアであることが言及されていました。このことからも、古代ファーガス=ガリアに対して帝国=ガリアに遠征したローマという図式が存在しており、カエサルが何らかの点でヴィルヘルムのモデルとされている可能性は高いと思われます。
英語訳を元にすると、「使者は彼らの国民にこれを伝えて、熟考したのち三日以内にカエサルの元に帰ってくるだろうといった」となります。挿絵に出てくる絵とフォドラの地図を見比べたところ該当する土地は見つけられませんでしたが、例えば2枚目左ページの絵はガリア戦記でライン川に橋を建設し部族を襲撃したときの地形図に類似しており、フォドラではなくガリア戦記で出てくるヨーロッパの地形がモデルになっている可能性があります。
参考:https://www.loebclassics.com/view/caesar-gallic_wars/1917/pb_LCL072.191.xml
またユリウス暦が用いられている正教会関係で色々と調べていてふと思い浮かんだこととして、風花本編でクローズアップされる西方教会と中央教会の間の対立で、この「西方教会」や「東方教会」という呼称はカトリックなどが所属する西方教会とギリシャ正教が所属する東方教会を元来指すものなのですよね。西方教会と東方教会は元々一つだったものが、ローマ帝国の東西分裂に起因した分裂により生まれたという背景があります。そしてギリシャ正教である東方教会は、ロシアで最も人口の多い宗教であるロシア正教会を擁しています。アガルタの民たちのモチーフでギリシャ(幹部の名前、ギリシャ文字など)とロシア(シャンバラにおけるキリル文字)が出てくること、また幹部たちがなんらかの宗教団体の司祭たちであるということを考えると、この東西の対立が参考にされていると考えると少し面白いかもしれません...?
なぜ節の名称が変更されたのか?
節の名称が数字から聖人に由来する単語に変更された理由に関して、現実ではあまり対応しそうな由来は残念ながら見つけられませんでした。唯一近いと感じたものが、古代エジプト暦では最初期に各期間を3分割しそれぞれを数字で呼んでいたそうなのですが、その後ギリシャ由来のヘレニズムの文化の導入により各月が神に由来する名前で呼ばれるようになったということでしょうか。ただもしソティス時代に節を現在のように読んでいたのならば、むしろこれだとモチーフとは逆の対応になっているような気がしますね...。
エジプトに関する余談ですが、ヘレニズム文化は古代ギリシャ人のアレクサンドロス3世(ディミトリのミドルネームの由来?)によるプトレマイオス朝によりもたらされ、その後共和政ローマのカエサルとクレオパトラによる共同統治の後、最終的にローマ帝国により属州とされることとなりました。このようなエジプト→ギリシャ→ローマという流れは、エジプトの女神由来のソティスと眷属による文化が、幹部の名前がギリシャ人であるアガルタの民により上書きされ、最終的に共和制ローマやローマ帝国に対応するアドラステア帝国が覇権を握ったという流れとも一致するように感じます。
セイロス教の影響と星読みとの関係
ここで、暦の変更がおそらくセイロスによって指示されたであろうということが示唆されます。主が暦を変えることを求めたとセイロスから伝えられた可能性もあると書かれており、この時代には主の預言者としてセイロスが皇帝・帝国に強い影響力を持ち、様々な面で干渉していたのかもしれません。
また、権威づけという面でも歴史的に暦の変更は大きな意味を持ってきました。フォドラ統一を前に制定されたということから、当時フォドラの中では二つの暦が混在していたことになります。制定時期はおそらく建国後かつタルティーンよりは前ではないかなと考えています(ネメシスが討たれていたらそう表現する気がするので)。
以上、暦の謎に関する資料まとめと関連しそうな由来探索でした。本編においては女神再誕の儀以外にも、アビスの魔道士の星読みや、占星術師の部屋の床にある月の満ち欠け表、古い技術を伝えるティモテの里における天文学の知識、レア様の落とし物である星図、そしてはたまたフォドラの虫大全における天の観察の禁止など、様々な場面で登場する重要な要素となっています。
またそれ以外にも、レア様の部屋の前の星のテラスには記念碑的な小さなオベリスク状のものが立っていますが、オベリスクはエジプトにおける太陽神の象徴であるだけでなく、巨大なものは日時計としても使われていたということを先日教えていただきました。このようなヒントをまとめると、フォドラにおける暦が太陽やシリウスなどの星の動きをもとに作られた太陽暦であり、それを作れるほどの優れた天文学の知識と技術を過去持っていたが現在教団以外には秘匿されているというのは、おそらく間違いないのではないかと考えています。
英語版
英語版では節はMoon、そして以前の月が"Months"と呼ばれていました。それ以外ではほとんどの場合日本語版と同じ内容になっています。このことから英語版と日本語版では以前に用いられた暦が現代の暦と同じだったということが共通点であり、「月」という名称を変更した理由と月が天体の名前であることとは関係ない可能性が高いのではないかと思います。
ここ興味深いのが、これが書かれた時点でHistorians=史学者の存在が明言されています。
2. 古い手記の断片
この書物はタルティーン会戦後に書かれたネメシス派の氏長の手記と見られ、他の書物よりもボロボロであることから、最も古くに書かれた書物である可能性があります。世界破滅伝奇の方が描かれている事象自体は古いと思われますが、そちらは民間伝承や昔話として写本が出回っており、一方この手記は氏長自らが書いた現物なのかもしれません。
最も古い始まりはネメシス王が討たれた=タルティーン会戦から数ヶ月の出来事です。年表記がないため、同じ年なのかそれ以降のことなのかはわかりません。ここから読み取れるのは筆者が氏長であること、ダフネルが友であること、そしてタルティーン後も生き延びていることです。また「長きにわたる生」ということから眷属の血を直接受けた十傑のような氏長である可能性が高いです。これが書かれたアリルの森はダフネル(ガラテア)領のすぐ北、フラルダリウスやリーガン領とも近い位置にあります。このことから、この手記の主もアリル周囲に領地を持つ氏長であった可能性があります。
そしてこのとき、アリルは今のように溶岩が噴出するような土地ではなく、森に覆われていたことがわかります。アリルは修道院に向かって放たれた光の杭が反射された結果、煉獄の谷と呼ばれるまでになってしまったことが翠風・アビスの老人により語られます。この事件がいつ起きたかについては明確な言及がないのですが、セテスが光の杭を伝承でしか知らない様子であったことから、少なくとも四聖人が教会を去ってからセテスが修道院に戻る18年前までの間にこの事件が起きているはずです。伝承とされていることからも、おそらくは数百年単位で過去のことであり、また降り注ぐという言い回しから一本ではなく何本も打ち込まれた可能性があります(ただし翠風で語られたレア様目線では巨大な光の塊だったそうです)。
ちなみに氏族・氏族の長という単語はユーリス・コニー外伝失われた遺産で、ドローミの鎖環を持ち逃げしたネメシス陣営の十傑とそれに与する者たちを指す単語としても使われています。
次の手記は王国北側ゴーティエ領付近にあるイーハ平原で書かれています。「神器」と言う単語が出てきますが、これは本編ではメリクルやグラディウスなどの武器だけでなく、十傑が持っていた武器のことも指します(イングリットとセテスの支援会話参照、あとは聖墓も神器ですね)。この手記が長き生を持つ(≒眷属の血を得た)氏長により書かれたものであり、そして当時は英雄たちが生存しており英雄の「遺産」とは当然呼ばれなかったはずです。このことから、この神器は英雄の遺産を指しており、手記の主も英雄の遺産を持つ氏族の長であったのではないかと考えています。実際に皇帝家に伝わっていた伝承では、セイロスは十傑たちを殺して英雄の遺産を回収していったとあり、狙われていたこの氏長が強い竜の力と英雄の遺産を持っていたのであればその記述と合致します。子孫がいるので、現在まで受け継がれている紋章の持ち主かもしれません。
最後のページは書かれた場所は不明です。地図上での逃亡経路を考えると手記の持ち主の最終目標はおそらくゴーティエ領からスレンの方に逃げることだったのではないかと推測されます。もしこれが正しければ、ダグザに渡ったドローミ持ちとはまた別の人物だと思われますし、エドマンド領の森に潜んでいたモーリスともおそらく別人ではないかなと思っています。
ちなみに本編中でスレンが登場するのはクロード外伝の砂に眠る神話くらいですが、マクイルが持っていたリーガン対応のベガルタの剣の持ち主がこの手記の主ということもありうるのでしょうか...?(ただし神聖武器が神器と呼ばれたことがあるかどうかは未確認です)
このページから読み取れるのは、①この手記の主はセイロスの正体と英雄の遺産の関係を知らない、②ネメシスではない「奴」に何らかの取引を持ちかけられた、そして③それが起きたのが遥か昔であったということです。遥か昔という表現からも、奴というのは英雄の遺産を作るきっかけとなった闇に蠢くものとその計画を指している可能性が考えられます。
本編で唯一会話ができる元十一傑の一人であるモーリスは、自身の獣の紋章を「我が紋章」と呼んでいます(一方ネメシスは「我と同じ炎の紋章」という表現)。しかし十傑の紋章はレア様によれば眷属の血から作り出されたものであり、眷属自身も元々保持していたと思われます。もし彼らが真実を知っていれば紋章を自身が起源のように話すのは少し奇妙であり、十傑たち自身がなぜ紋章を得たのか、そしてセイロスが何者でなぜ恨まれているのかを全く知らずに戦っていたのかもしれません。
ちなみに最後にある「この体が朽ちる前に、邪悪な...」という文章も、モーリス外伝の「この体が朽ちたなら」という表現と類似しています。そのため手記の主はモーリス!?とも思ったのですが、逃亡経路的に少し考えづらくもあります。ただ手記の主もモーリス同様に邪悪な思念に囚われかけており、魔獣化の危険がかなり高い状態にあったことを示唆しているのかもしれません。手記が最終的に教会に残されていることからも、持ち主は国外に逃げる前に大事な荷物を置いて去った=魔獣化してしまったか、国外に出る前にセイロスに討たれた可能性などが挙げられます。
英語版
こちらでは「私たちと私たちのリーダーの首を狙っている」と訳されています。これが誤訳でなければ、手記の主はその上に複数のリーダーが存在する、すなわち十傑の下の地位にあったかもしれません。
神器はSacred weapon(聖なる武器)とされています。
奴の話はHis offerとされています。また体が朽ちるは体が灰に帰す、といった表現がされています。
ちなみに英語版での戦闘会話では、体が分解される(decay)になっており、ここの類似度は日本語版よりも低くなっています。
3 退廃の饗宴
退廃の饗宴はアドラステア帝国を題材とした小説で、読むことのできる部分は皇帝リュカイオン3世の結婚を祝う宴とそこで開かれた芝居の様子を描いたものです。書庫の書物によるとリュカイオン一世はヴィルヘルム一世の息子であり、彼が急病で崩御した98年にようやく英雄戦争が終結します。急病とあることから老衰というほど年老いていたわけではないのではないかと思いますが、その場合帝国が建国された年にヴィルヘルムが若くても20歳ぐらいとしますと、彼が50で子供を産んだとしてもリュカイオン一世は98年時点で若くとも68歳になります。この時代での文化・生活水準ではかなり高齢の部類ではないでしょうか?ヴィルヘルム一世がセイロスと直接赤き血と白き剣の盟約を交わしていることから、もしかすると彼も長き生を持っており、リュカイオン一世は晩年生まれた後継だったのかもしれません。
さて、本文には「若き皇帝リュカイオン3世の結婚」とあることから皇帝の位はすでに三世に譲られた状態であることがわかります。城なのでおそらくアンヴァル宮城が舞台でしょうか?ボラマスはアンヴァルに近い、地図上で南東に存在する地名です。バクスは「バクス漬けのウサギの串焼き」があるので何かしらの飲み物だと思われます。お酒の神バッカスからきている+血を連想させる飲み物なので赤ワインかなにかだと思われます。この部分が第七歌であるので、リュカイオンの一生を逸話として描いた小説なのかもしれません。他に気になる点としては、北の剣闘士はネメシスの軍勢やその残党を指すのだと思われますが、「剣闘士」もまた古代ローマの戦士を指す言葉ですね。
(また月により日数を数える太陰暦の名残のようなものも見受けられます)
ここでポイントとなるのが、キッホルは紋章アイテムで地竜に対応していますが、ガルグ=マクにおける聖人たちの説明などではキッホルが大地を司ることを示唆した文章は一般的には登場しません。ただしキッホルの紋章の説明文には「力の象徴。大地を司る」との記述があり、これが民衆にも知られているのであれば、現代のフォドラでも四聖人はそれぞれ司る対象を持つ存在として認識されている可能性があります。また、文章内に登場するリュカイオンは初代皇帝のひ孫世代に当たると思われるので、聖キッホル・セスリーンどちらもこの時点では既に死んだものとして扱われています。
キッホルに関してですが、現在聖人キッホルの聖地に設定されているのは外伝海の見える場所で登場するロディー海岸で、西方教会の信者により熱狂的に信仰されている様子が描かれます。一方彼が元妻が出会ったのはアンヴァルの教会で、セスリーンもその地で暮らしていたという話があります(アンヴァル総力戦・潜入戦での特殊会話)。キッホル・セスリーンとセイロスが戦乱の中出会ったのもアンヴァルでした(銀節の章交差の結末及びフレン・イグナーツ支援参照)。このときの「教会」は果たして「セイロス教の教会なのか?」という疑問を以前のブログでも書いたことがありますが、ニンドリインタビューで眷属たちは竜であり神としてフォドラ中に散らばって各地を治めていたという話がありました。このことから教会自体はセイロスがアンヴァルに逃げ延びてくるよりも前から存在しており、現地の眷属を信仰していたのではないか?と個人的に想像しています。ザナドにいなかったとされるキッホルは、もしかするとセイロス教ができる以前からアンヴァルの教会のような場所で、既に大地を司る聖人のような扱いをされていた可能性も考えられます。
この出し物においてネメシスはセイロスに倒される邪なるものとして扱われています。現在のセイロス教でも解放王だったネメシスは最終的に邪に染まったとされていますが、今のセイロス教では好まれないようなセイロスとヴィルヘルムのゴシップも存在しているようなので、もしかするとこの時点では十傑や解放王などの設定はまだなかったのかもしれません。実際に起きたことを正確に知る人物が亡くなっていったあとに、教会は少しずつ都合の良いストーリーを広めていったのかもしれませんね。
セテスは18年前からガルグ=マクに今の名前で勤めていることから、退廃の饗宴に関してはその間に廃棄されたものであると考えられます。それまでは書庫の検閲もあまり厳しくはなかったのかもしれません。そしてこちらも大部分が痛んでおり、オリジナルに近い版の可能性が高そうです。
英語版
"fine bacchus from Boramas"とあり、バクスの綴りが酒の神バッカスと同じであることが確定します。
4 愛の挨拶
こちらはセテスにより破棄された、恋人作りに関する書物です。このような本を一体誰が大修道院の書庫に入れたのかも不思議ですが(士官学校の学生でしょうか?)聖セスリーンの寓話に関する書物という名目で購入されたのかもしれません。リンハルトの落し物で四聖人の真実という本もありましたし、四聖人の読み物は巷で人気があるのでしょうか。目次以外が見当たらないということは、廃棄されたあとに本文を誰かが持ち去ったのだと思われますが、これらのことに興味津々な人といえば一体誰でしょうかね...さっぱりわかりませんね...(棒)
追記:恋人にまつわる5篇の文章という点から、ヘブライ聖書や旧約聖書に含まれている詩集である雅歌がモデルになっている可能性があります。既に廃棄されていることから、セイロス教の初期の時点では存在していた多彩な聖典の内容も、より厳格なものへと修正されているのかもしれません。
以下英語版です。"The Myth of True love's Singularity"というのもなかなかパンチが聞いていますね、「真実の愛が一つしかないなんて作り話」といったところでしょうか。
以上、アビス書庫のまとめその1でした!基本的に考察ではなく関連しそうなトピックをまとめた資料として書きましたので、話半分にとっていただけたら幸いです。残りは後日また別の記事にまとめる予定です。
後日談まとめ(金鹿)
後日談って撮った日付がバラバラになるので、収集するのちょっと面倒ですね...金鹿1週目はクロードとの支援あり人員しかスカウトしなかったので、あまりカバーできておりませんが、おかげで私の通常プレイで発生するペアエンドの傾向がわかりますね。ベレト先生でのプレイ後日談を追加予定です。個人的にクロードとリシテアの後日談は衝撃でした...!あとはヒルダとセテスのほのぼの後日談と、ラファエルとマリアンヌの鳥の食堂大団円も、支援の突飛さを生かしていて良きですね。
先生の後日談
異学級
金鹿
黒鷲
なし
青獅子
灰狼
その他
おわりに
今回はアビスの書庫の蔵書の約1/3をまとめました、最後まで読んでくださってありがとうございます。今回は暦の謎が中心でしたが、古びた手記の主が誰だったのかという点もかなり気になるところではあります。後日英雄の遺産に関するレポートの情報もまとめて、考察に組み込めたらなと思っております。今回は考察記事ではありませんでしたが、ここはおかしい!といったコメントなどありましたら、Twitterやマシュマロなどでお待ちしております。
おまけ
お茶会大好き人間が集うガルグ=マク士官学校。
マリアンヌ外伝での先生の戦闘会話フラグが、天帝の剣を所持品に入れて戦闘をスタートすることだった件。
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