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オメガ3脂肪酸のサプリメントについて 〜コクランレビューより〜


コクランレビューとは?

コクランレビューは、医学論文の系統的な評論を行なう国際的団体であるコクランが、年4回発行されるコクラン・ライブラリーに収載されているレビュー(評論)です。


コクランは、営利目的や利益相反のある資金の提供を受けていないため、商業的・金銭的な利益からくる制限を一切受けずに、権威と信頼ある情報を生み出すことを目的とした団体です。


コクランは、医師が十分な情報を得たうえで治療を選択できるように、世界の研究から得られた最良のエビデンスを収集し要約しています。


それゆえ、コクランレビューは、とても信頼できる情報源となります。


コクランの名称は、科学分野の疫学の発展に大きく貢献した英国の医学研究者Archie Cochrane(アーチー・コクラン)氏に由来します。


さて、

今回は、オメガ3脂肪酸のサプリメントについて、コクランレビューの報告をご紹介します。*論文1 Cochrane Database Syst Rev. 2020;3(2):CD003177.


多くの人がオメガ3脂肪酸のサプリメントを摂取すると、血液がサラサラになって、心臓病、脳卒中を予防できると信じている方が多いと思いますが、実際にはどうなんでしょう。

まずは、基本的なことですが、

オメガ3脂肪酸には下記の3種類があります。

スライド1


ALAは、体内でEPA/DHAに変換されますが、変換率は1/10なので、ヴィーガンの方は、オメガ3脂肪酸を意識して摂取する必要があります。


今回ご紹介するコクランレビューでは、心臓血管病に対するオメガ3脂肪酸(EPA/DHA/ALA)の効果を調べた86のランダム化試験(サプリorサプリ以外のもの、どちらか均等に割り当てられる試験)を評価しています。

対象は、北米、ヨーロッパ、オーストラリア、アジアに住んでいる162,796人なので、大規模な研究であることが分かります。


以下が結果です。


結果①:EPA/DHAの効果

EPA/DHAを増加させても、全体の死亡率と心臓血管病による死亡率と発症、脳梗塞、不整脈の発症にほとんど影響はなかった。(確実性が高い論文の解析)

ただし、EPA/DHAを増やすと、狭心症や心筋梗塞による死亡率およびその発症のリスクが10%くらい低下する可能性がある。(確実性が低い論文の解析)
結果②:ALAの効果

ALAを増加させても、全体の死亡率と心臓血管病による死亡率、狭心症や心筋梗塞による死亡率、心臓血管病の発症にほとんど影響はなかった。(確実性が中等度の論文の解析)

ただし、ALA増やすと、狭心症や心筋梗塞の発症を5%低下させる可能性がある。(確実性が低い論文の解析)

ALA増やすと、不整脈の発症のリスクを27%低下させる可能性がある。(確実性が中等度の論文の解析) 脳卒中に関しては不明。


一言でいうと、

オメガ3脂肪酸(EPA/DHA/ALA)のサプリメントは、心臓血管病に対しては、『パッとしない』になります。

一方、下のスライドのように、魚を食べると死亡率が大幅に下がります。
*論文2 Zhao LG et al.  Eur J Clin Nutr 2016. 70, 155–61

以前の記事をご参照下さい。 

スライド2


結論

オメガ3脂肪酸のサプリメントは、『パッとしない』けれども、オメガ3脂肪酸を含む魚は素晴らしく良い!になります。


上記の研究結果からも、成分主義にならないように心がける事が大切ですね!


DHA/EPAという成分を摂ると健康に良いではなくて、それを含む食品を摂るから健康に良いのです。・・これ重要です!


ビタミンは、「ビタミン剤」からではなく、「果物・野菜」から摂る方が良い!と同じです。ちなみにβカロテン(ビタミンA)を摂ると、肺ガンのリスクが上がります。*論文3 Tanvetyanon  T et al. Cancer  2008 Jul 1;113(1):150-7.


次回は、オメガ3脂肪酸が豊富なアザラシの生肉や脂肪を食べているイヌイット(エスキモー)の健康について調べてみます。