三軒茶屋の舞台とポークジンジャーとビール小説のこと。

今日は友人の脚本家の舞台を観に行く予定だった。


社会派な彼女の舞台は、震災とか原発とか、普段は目を背けたくなるような重いテーマのものが多い。

今回の舞台のテーマは、60年代の安保闘争だった。


難しいことはわからないが、いざ舞台を見ると、「これは私たち庶民の物語なんだ」と思わせてくれるような親しみを感じさせ、セリフがすんなりと体の中に入ってくる。そして気が付くと涙が流れている。そんな彼女の舞台が好きで、時間の許す限り足を運ぶようにしていた。


いつもは旦那に娘を任せてひとりで出向くことが多いのだが、珍しく大学時代の友人を誘って、三軒茶屋に12:30で待ち合わせをした。10分ほど遅れるというので、スマホにダウンロードしていた読みかけのビールの小説を読んだ。


この小説の作者、林さんの渋谷のお店には何度か訪れたことがある。

主人と、会社の同僚と、女友達と。

そういえば今日待ち合わせている友人とも行ったことがあった。


ある日、林さんのお店に会社の同僚と訪れた時に、もう閉店も近いからと、渋谷Bunkamura近くのパン屋さん、VIRONのバゲットをプレゼントしてくれたことがあった。嬉しくて、酔っ払った勢いで、会計の時に「私、noteいつも読んでます!」と伝えたら、「もっと早く言っててくれればよかったのに」と少し困った顔をしながら名刺をくれた。


”ホップテロワール”というビールの誕生と共に生まれたその小説は、作者が現地に行ったことがないなんて信じられないほど、その土地の人の生活が目に浮かぶようで、ビールという飲み物がいかにして生まれ、いかにして世界中の人々に愛されてきたかがわかった。

いますぐロンドンやドイツやベルギーに行ってビールを飲みたい!

そう思わせてくれるような、読んでいるだけで旅をしたくなるような文章だった。


絵里子と高志の物語もとても運命的で、こんな恋愛がしてみたかった、どうかふたりには幸せになってほしいと祈りながら読み進めた。


三軒茶屋での舞台が終わり、編集者をしている友人らしく、少し辛口な批評を聞きながら、三角地帯の穴場なカフェを訪れると、奇跡的に席が空いていて、ふたりとも本日のまかない・ポークジンジャーと、友人は生ビール、私は黒ビール
を頼んだ。

普段はワイン一辺倒だが、今日だけはどうしてもビールを飲みたかったのだ。
黒ビールの苦味を感じながら、いつかハラタウという土地を訪れてみたい。
そう思った。


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