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F.クープラン「クラヴサン曲集」プログラムノート第1巻第5オルドル その1(短!)
第5オルドル:オルドル前半の風景は、再び伝統的「フランス舞踏組曲」に戻る。舞曲は5つ。後半は第1から第3オルドルと同様、魅力的な標題作品が9つ並ぶが、最後の「波」に至るまで異常とも言える6/8曲の連続、それも名作が稠密している。このオルドルの前には是非「クラヴサン奏法」掲載の同じ調性の前奏曲第5番をアミューズ・グルとして味わいたいものだ。これもまた絶品で、これからサーヴィスされるフルコースの料理へ
もっとみるF.クープラン「クラヴサン曲集」プログラムノート 第4オルドル
第4オルドル:1巻の中で唯一、フランス風舞踏組曲無し、標題音楽のみの構成である。曲数も4曲と他と比べて圧倒的に少ない。そう、これはもう画期的という他にないのだ。これ以前にフランスで出版されたクラヴサン曲集を見ても、私の知る限りこのような例はない。しかしクープランは次の第5オルドルで再びアルマンドから始まる形式、つまり第1から第3までと同じフォーマットに戻している。これは一体何を意味するのだろう?実
もっとみるF.クープラン「クラヴサン曲集」プログラムノート第3オルドル その1
これを書いている時点(2024年6月夏至の後)では、ベーレンライター楽譜出版社の新刊紹介欄にクラヴサン曲集第4巻の「お知らせ」はまだ見つからない。去年、コンセール・ロワイヤル新エディションの方が先に出版されたので、今年中の発刊はあまり期待出来ないのかもしれない。案の定かなり遅れているようだが、その分、新情報満載を強く望むところである。
第3オルドル:前2つのオルドルより規模は小さいが同じ構造を持
F.クープラン「クラヴサン曲集」プログラムノート第2オルドルその2
第2オルドル後半12曲(数え方によって少々違う)は名作がめじろ押しである。調号無し二短調系と#2個の二長調系が交替する。
「La Charoloise シャロレ−ズ」 ファクシミリ譜面ではわずか2段、14小節(前半6小節、後半8小節という非対称性にも注目)のジーグ風小品。マドモワゼル・ド・シャロレと呼ばれたクープランの弟子、ブルボン=コンデ公の娘ルイーズ・アンヌ(1695年生まれ)が最有力候補だろ
F.クープラン「クラヴサン曲集」プログラムノート第2オルドル その1
続きを始める前に最近目にした新情報(未確認なのだが)を書いておこう。ヴェルサイユ宮殿所蔵、作者不詳のクープランの肖像として伝わっていた絵画(タイトルの画像)の成立年代が、どうも今まで考えられていたより古いらしいのだ。つまりこれはフランソワでなく彼の父か叔父のものではないかというわけである。確かにもう一つの銅版画の肖像とあまり似ていないなー、と前から思ってはいたのだが。。。
第2オルドル
F.クープラン「クラヴサン曲集」プログラムノート第1巻第1オルドル その2
前回予告の舞曲の総括的なものは第5オルドルの後に書くことにしました。第4オルドル以外全ての前半部はフランス組曲形式ですので、巻の最後にまとめてみたいと思います。では第1オルドル後半戦!
一転して同主長調のト長調で開始するが、その後の曲は長調と短調が入れ替わる。1曲の中、前後半で変わるものもある。固有名詞など表題付きのものが11曲、うち2曲には舞曲表記が見られる。
「Les Silvains シ
フランソワ・クープラン「クラヴサン曲集第1巻」プログラムノート(第1オルドルその1)
大変気ままではありますが、第1オルドルから少しづつ個人的なコメントのようなものを不定期に書いてみたいと思います。解説、分析などという偉そうなものではなく、もう少し気楽な短いものを考えています。10年以上前になりますが、都内のある個人スタジオで1巻から4巻まで順番に、「生演奏付き」全曲解説セミナーを4年にわたって開催しました。演奏は私自身での他、国内、海外在住の多くの邦人の方々にお願いしました。聴
もっとみるフランソワ・クープラン「クラヴサン曲集第1巻」への序文邦訳
1713年第1巻への序文の邦訳は今まで幾つかありました。出版されたものとしては1977年に音楽之友社から発行された佐藤峰雄訳『クラヴサン奏法』内の45ページに掲載されています(現在絶版ですが図書館などにあります)。他にもネット上に見つけられるでしょう。最新の英語訳は2016年ベーレンライター社の新全集(BA10844)のXXXVIページ、Peter BLOOM氏によるものでしょうか。今回クラヴサン
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