longcovidからのリハビリ⑥ 【ペーシングの難しさ】
後遺症からの回復の際に行うことの一つとして、ペーシングが取り上げられています。
自分の後遺症の中では、倦怠感やブレインフォグ(頭のしびれ、もやもや感、思考低下など)が見られ、これらは様々な負荷、外出や運動、家事、デスクワーク、会話、スマホやパソコンの操作などを行った後にも起こりやすく、1日や1週の中での症状の波が頻発していました。
自宅療養と言えども日常的にいろいろな動作も必要で、通院や買い物にも出掛けなければなりません。また体調が上向けば、少し欲張って動こうとすることもあります。仕事のことを思い出し、手を付けたくなることもあります。そういった様々な負荷をどの程度こなして行けば良いのかは悩みの種でした。
ペーシングを自分なりに解釈すると、肉体動作やデスクワーク、スマホやパソコン操作などの負荷時間と休息時間のスケジュール管理を行うことと考えています。またその目的は、後遺症の安静期から少しずつ負荷を増し、無理のない社会復帰を目指すことと考えています。
健常であれば、1時間でも2時間でも連続してできていたことが、後遺症では長くは続けられられなかったり、また後になって倦怠感などが出でしまう、さらに症状が悪化してしまうこともあると考えられます。ようは休み休みで少しずつ何かを始めて、そのペースをつかみ、また少しずつ伸ばしていくような自己管理になるのでしょう。
この稿を書き始めた頃にペーシングをいろいろと試行していたのですが、なかなかコツがつかめず、一進一退だったり、逆行することもありました。そうするうちにTwitterで勤医協札幌病院による米国退役軍人省の「Long COVIDに対する Whole Health Systemアプローチ」の翻訳による紹介があり、具体的なペーシングの考え方を理解することができました(参考資料1))。
以下に、同資料のペーシングに関する箇所を引用します。
「ペース配分された活動
低強度の日常的な活動から始めます。症状の重さが異なれば、耐えられる活動量も異なることを念頭に置いてください。」
この頃は自宅での日常的な動作にはあまり問題はありませんでした。仕事を在宅で少しでも再開したいこともあり、デスクワークの活動量をペーシングの対象にしました。
「1-2週間ごとに10-20%ずつ増やしていくのが一般的な目安で、数日から数ヶ月かけて反応を見ながら移行していきます。症状の程度や生活上の必要性に応じて日々変化させるのではなく、一貫したスケジュールを保つよう努めます。」
ここでのスケジュールは、活動量の時間配分のことで、具体的には活動時間と休息時間をどのように組み合わせるかになります。決めたスケジュールを毎日様子をみて変えるのてはなく、一貫したスケジュールでしばらく行い、定期的に見直し、少しずつ活動量を増やす考えです。これをいざ始めてみると、気がはやってしまい、すぐに増やしたくなることが多くありました。
「体調の良い日に無理をすると、症状や徴候が悪化する可能性があるため、無理をしないことが大切です。時間をかけて活動レベルを上げていきます。」
この注意を守れず、体調が上向いた日に活動量を上げてしまい、その日の夜や翌日以降に反動が現れ、横になる時間が増えることも多くありました。
「1. まず活動の頻度を上げることに重点を置きます
2. 次に、活動の持続時間を増やすことに取り組みます
3. 一日中、低強度の活動で疲労を感じることなく、確実に活動できるようになったら、中程度の強度の活動、そして最終的には高強度の活動を追加することができるようになります。」
この記述の特に1番目が、自分には大変役に立ちました。活動の頻度とは、活動時間と休息時間のセットを何回繰り返すか、になります。1回の活動時間は常に一定にし、それ以上活動する際には休憩時間をはさみ次のセットを繰り返す形です。決められた活動時間を伸ばしてしまうと即座にブレインフォグが現れたり、後々の反動が発生することが多くありました。
今現在も頻度を増やす段階で、2番目にある活動の持続時間を増やすに至っていません。調子がよいと思って、つい活動を長く続けてしまうと、その時は良くても翌日や翌々日に必ず反動が来ました。これは今も同じで、気持ちを抑えながら上手に活動と休息のバランスを取ることが、ペーシングの難しさだと思います。
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参考資料とリンク
1) Long COVIDに対する Whole Health Systemアプローチ 患者連携ケアチーム(PACT)ガイド,米国退役軍人省 2022年8月1日(勤医協札幌病院による翻訳)
https://drive.google.com/file/d/1x-lpsVWr5UzZJsx4zWirbGVX9YlmKrmw/view?usp=drivesdk