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出島組織のマネジメント - 「未来」にどのような仕方で向き合うか?

「出島組織」による事業開発の取り組みは数多く見られる。
しかし、大きな事業の創出に成功するケースは稀なようだ。
そこには何か根本的な課題があるのだろうか?

この問題に対する一つの切り口としての、 出島組織における「未来への向き合い方」に関するラフスケッチ。

出島組織を立ち上げたなら、まずは「未来」の捉え方をはっきりと変える必要がある。

「未来」の特性

ビジネスとは常に「未来」にかかわる営みである。しかし未来とは何か?
ここでは、未来を「到来する未来」と「創られる未来」の混在として捉えてみる。

一口に未来と言っても、様々な確度の未来がある。

まず、過去と現在から予測可能な未来。 分かりやすい例を挙げるならば、日本の今後10年の人口動態。これはいわば「到来する未来」と呼べる。

一方で、例えば「今後10年の日本においてどんな映画作品が誕生するか?」という問いについて、予測はほとんど意味を持たないだろう。こちらは、まだ決まっていない未来と考えてもよいか。「創られる未来」と呼んでみる。

すると、未来とはこうした成分が入り混じった混合物のようにイメージできる。
「到来する未来」が未来の一部を埋めているものの、 その他の部分は「創られる未来」のために残されたスペースのようになっている。
スカスカの骨格のような感じで、全てが埋まっているわけではないということがポイントである。
(どのくらいスカスカなのだろう?)

※ 以上はアカデミックな議論など色々ある問題だと思うが、実践上、思い切って措いておく。

未来への向き合い方

そんな風に未来を捉えなおしてみることで、はっきりしてくることは何か?
出島組織は既存事業組織とは異なる未来観のもとで思考・行動する必要がある。

新規事業の開発は「創られる未来」に、より深く関係していると言ってよいと思う。
「到来する未来」を手掛かりにはしながらも、事業開発の根幹は「創られる未来を創る」ことだろう。

この目線であらためて考えてみたいのが、
既存事業組織におけるさまざまな日常的仕事が、
「到来する未来」を前提としたものになってはいないか、という点である。

最も典型的には、「事業計画」をつくること。
到来する未来を意思決定において扱うとき、それは「予測と計画」というフォーマットをとる。
例えば市場規模推移の予測や、それに相関する事業規模の予測、そしてそこに至るまでの計画。
意思決定の大きな根拠が「未来予測」に置かれている。

これは一つの方法であり、一つの方法にすぎないともいえる。
しかしビジネスの世界において、その限界を意識されることなく、
当たり前の「お作法」のように捉えられていないだろうか?

出島組織においては、こうした既存事業組織の仕事の様式をうまくアンラーニングした上で、
「創られる未来」を前提とした新しい動き方を、意識的に再構築することが必要なはずである。
それが実際にできているだろうか?

こうした根本的なところに、ひとつ大きな問題が存在しているかもしれない。
実際、過剰分析・過剰計画というような事態は、よく見聞きするところである。

なお、新しい動き方とは、例えば以下のようなコンセプトに関わると想定している。

  • アクセス可能な手段を起点とした行動論理(エフェクチュエーション)

  • 行動を規定する計画ではなく、行動を意味づけるビジョンを持つこと

  • 上記を踏まえた、可能性と意味に基づくチームワーク様式の形成

この辺りについてはあらためて考えたい。

まとめ

  • 未来には確度の差異があるため、「到来する未来」と「創られる未来」の混在のように捉えてみることができる

  • 出島組織は「到来する未来」に合わせた思考・行動の様式を、既存事業組織から受け継いでしまっているかもしれない

ラフスケッチとしての文章ではありますが、
出島組織のマネジメントに関わる方にとって、何かのヒントとなれば幸いです。

本記事の執筆者は株式会社コーポレイトディレクションの新谷です。
経営コンサルタントとして、組織的創造性を中心的なテーマに、企業支援、事業開発支援等の活動を行っています。
お問い合わせ先:araya@cdi-japan.co.jp

最後までお読みいただきありがとうございました。

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