1日経つと3割しか覚えていない
脳のメカニズムを理解しない限り、記憶力や注意力、コミュニケーション力、判断力を鍛えても効果は望めません。
人は多かれ少なかれ、「上司の指示を忘れる」「書類をどこに置いたか忘れる」「人の名前を忘れる」などのメモリーミスを犯すことがあります。
もちろんミスをしようとする人はいませんが、それは記憶に対する「期待」と「現実」のギャップから生まれます。
「しっかり覚えた」「忘れないだろう」という思いに反し、脳が思いのほか早く、あっさり忘れてしまうことが原因です。
事実、記憶に関する研究の草分けである「エビングハウスの忘却曲線」を確認してみると、20分後には42%を忘れ、1時間後には56%、1日には74%を忘れるという結果になっているのだそうです。
この実験は、「意味をなさないアルファベットの組み合わせ」を実験材料として行われたものなので、私たちが日ごろ接する"意味のある情報や知識"の場合はもう少し穏やかな結果になるかもしれません。
しかしそれでも、「覚えた」と思った直後に、その多くを急速に忘れてしまうという性質が脳にあることは間違いないわけです。
しかし記憶の研究が進むなか、「覚えた直後に忘れる」原因がわかってきたのだといいます。
「ワーキングメモリ」という記憶が、メモリーミスを起こす原因なのです。
ワーキングメモリは「脳のメモ帳」にたとえられ、「作動記憶」「作業記憶」などと訳されます。
情報を長期にわたって貯蔵する「長期記憶」とは異なり、なにかの目的のため「一時的に」貯蔵される領域であることが特徴です。
コンピュータでいえば、「長期記憶」に当たるものがHDD(ハードディスク)で、ワーキングメモリがRAM(メモリ)。
HDDはデータを長期保存する場所ですが、RAMはソフトやアプリが稼働するにあたり、データを一時的に蓄えたりする「作業領域」。
ソフトの動作が遅くなったりフリーズしたりするときは、RAMがいっぱいになっているケースが大半ですが、人の脳でRAMと同じような働きをするのがワーキングメモリです。
ワーキングメモリのメリットは、すぐに、しかも正確に情報をできる点にあります。
ところが容量がとても小さいため、メモリーミスを引き起こしやすいのが難点です。
新しい情報が入ってくると、古い情報がはじき出されてその瞬間に忘れてしまうわけです。
しかもワーキングメモリはその容量を増やせず、貯蔵できる事象はせいぜい7つ前後(7±2)といわれています。
そこで、トレーニングで増やせないワーキングメモリの容量を増やす努力をするのではなく、「ワーキングメモリを使わない工夫」をすることこそが大切です。
「ワーキングメモリへの負荷を減らす」ことが、メモリーミスを減らすための大きなポイントになるというわけです。
参考書籍:『仕事のミスが絶対なくなる頭の使い方』(宇都出雅巳著、クロスメディア・パブリッシング)
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