「カイゼン」との両輪をなすもの。「カイゼン」を定着させるもの
端的にいえば、「心がけ」を「心がけ」で終わらせず、科学的に進めることを考えたのが「自工程完結」です。
「よい仕事しかできない」「よいものしかつくれない」という条件はなんなのかということを徹底的に、科学的に実現しようとする考え方です。
「カイゼン」「QCサークル」「トヨタ生産方式」など、トヨタに世界的に知られるさまざまな用語があることはご存知のとおりです。
トヨタの品質と生産性をカバーしているのが「トヨタ生産方式」であり、「カイゼン」は、そのなかで行われるエンドレスの活動。
「QCサークル」は、「カイゼン」を促進する活動という位置づけです。
そして「自工程完結」は、部分ではなく全体を見て、「よい仕事をするためには、どうすればいいのか」を科学的に洗い出す手段。
つまりは、「カイゼン」との両輪をなすもの。「自工程完結」という笠をかぶせたうえで「カイゼン」を行っていくと、「カイゼン」は後戻りすることなく定着していくそうです。
ある大きなミスがあったときのこと。
その対策として、問題発生のプロセスを特定し、誰がどのような業務を行い、どのようなチェックが行われ、どこでミスが起きたのかを明らかにしたそうです。
ミスが起こったことをきっかけに、この業務を「自工程完結」の考え方を取り入れて見なおしてみたわけです。
不安をなくし、自身を持って仕事を進めるためにも、業務を標準化し、カイゼンを進め、仕事の質を高めていきます。
まずはじめたのは「現状把握」。
担当者がどんなところにストレスを感じているのかを、個々人がそれぞれの仕事の工程ごとに書き出していき、個々人で次の3点を評価していきます。
・目的達成度
・やりにくい作業や面倒な作業はないか
・工程ごとの必要なものは明確か(各手順を実施するために必要なものは明確か)
これを洗い出した20のプロセスごとに、
◎:まったく問題なし○:ほぼ問題なし△:ちょっと不安あり
の3つで評価していき、課題があるプロセスを可視化します。
するとその結果としてわかったのは、20の業務プロセスのうち、どこで「やりにくい作業や面倒な作業」があるのか、「工程ごとの必要なものは明確か」ということ。
そこで、なぜ「気遣い作業」(やりたくない、面倒くさい、不安などの感情を生む「神経を使うような作業」)になっているのか、要因の解析を行ったといいます。
その結果、担当者がどんな「気遣い作業」をしていたのかが明らかに。そこで精神的負担を解消すべく、「作業手順書(伝承シート)」が整備されることになりました。
日々の業務においてはこのシートを確認しながら作業し、なにか気づいたことはメモに残すようにしたわけです。
そしてチームで毎週、確認会を実施、情報共有、対応の検討のうえ、「作業手順書」が改定されていくというサイクルが繰り返されているのだそうです。
「◎:まったく問題なし」「○:ほぼ問題なし」「△:ちょっと不安あり」で評価された業務プロセスの多くが改善され、担当者は自信を持って意思決定しながら仕事を進められるようになったといいます。
この取り組みのポイントは、コツコツ、じっくり取り組んだこと。それが、担当者に安心感を与えたというわけです。
そしてもうひとつのポイントは、それまでなかった前工程とのコミュニケーションが生まれたこと。お互いの業務を知ることで、協力関係外生まれるようになったのです。
入社二年目でこの取り組みを始めてリーダーとなった担当者は、「自工程完結」がうまくいった理由をこう語っていました。
歩みを止めないことだ、と。結果が出るまでには、それなりに時間がかかります。
走っている最中はつらくなることもある。
だからこそ、歩みを止めないことが大切になると思います。
そして、それまでは「やらされ仕事で、毎日、自分がなにをしたかもわからない」状態だったという彼は、「自工程完結」が取り入れられてからは、「ここが成長した」と自信を持っていえるようになりました。
参考書籍:『現場からオフィスまで、全社で展開する トヨタの自工程完結―――リーダーになる人の仕事の進め方』(佐々木眞一著、ダイヤモンド社)
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