内発的動機づけ、内発的報酬
求人媒体で「Wantedly」というサイトがあります。立ち上げ時から知人が使って以前はよく見ていたんですが、気づいたらだいぶ急成長して大きくなっているようでした。ここの求人は給与条件が書いておらず、仕事の面白さや変わった人の集まりなどがPRポイントになっています。業種に偏りはあるのですが、「内発的報酬」により多くスポットが当てられているのが特徴です。給与やポジションなどは「外発的報酬」(誰かから与えてもらうもの)です。それに対して「内発的報酬」は欲求や嗜好など、自分の内面にあるものを満たす報酬です。簡単に言えば、誰かに評価されたいから頑張るのではなく、自分がやりたいから、好きだから、できるようになりたいから、やってみよう、ということです。これは1980年代にいろいろ出てきた目標志向性の研究ともマッチしています。自らが熟達するための目標が、組織で働く上でも健全に機能するということですね。
ちなみに私は本業の他にシューフィッターという資格を持っていて、個人のお客様にシューフィッティングというサービスをしています。足と靴を合わせることがうまくできると、リハビリ中のお客様の歩行距離が1日で倍になったり、ゴルフのドライバーの飛距離がいきなり20ヤード伸びたり、目に見える変化があります。この仕事の単価は普段の研修事業の10分の1以下で、行政の委託だとボランティアになることもありますが、細々とやっているのはたぶん好きだからです。これが内発的報酬です。
企業経営者に内発的動機の話をすると、「じゃあ給料上げなくていいんですね?」と言われることもあるのですが、それは全くの間違いで、内発的報酬は「給料の心配をしなくて良い」ということが前提条件として大事なんですよね。本人がお金なんて気にしない、というのは良いのですが、払う側が気にしないのは全くおかしな話です。それではせっかくパフォーマンスを高めている人の足を引っ張ってしまうではないですか。お金の心配をせず好きな仕事に打ち込めるようにして欲しいものです。
繰り返しますが、動機づけは「内発的」な方が長く続くし成果も出やすいので。社員やメンバーのパフォーマンスを上げてほしいという場合にはこの要素を入れる必要があるんです。ポジティブな「成長欲求」に答えるためです。しかし一方で、外発的動機づけを無視してしまうとそれは不満の種になり、ネガティブな「欠乏欲求」を助長してしまいます。せっかくやりがいのある仕事があってもあまり給料が安すぎたら続きません。
私は人事評価の設計の仕事をいただくこともありますが、得てして大きな企業は「内発的動機づけ」を軽視しがちで、ベンチャーなどは「外発的動機づけ」を軽視しがちです。ここを常々もっとうまくやって欲しいと思っています。