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植木鉢に鉢底石を入れるな ~何の意味も無い~
本でもネットでもテレビでも、園芸の仕方を調べたら絶対「植木鉢の底に鉢底石を入れましょう」って説明されてる。
曰く、排水性と通気性を改善するだとかそんな理由だ。
はっきり言ってこれは100%完全に間違いなので、徹底的に要らない理由を述べていく。おまえらも今から植木鉢で園芸がしたいなら絶対に鉢底石なんて入れるな。
①鉢底石を敷いても排水性(水はけ)は一切変わらない
ちょっと考えてみろ。
洗濯が終わった後の濡れた洗濯物を、全面に穴が空いてるタイプの洗濯カゴの中に…
そのまま入れて放置する
洗濯カゴの底にビー玉を適当に敷き詰めて、その上に洗濯物を入れて放置する
どっちの方が乾くのが早いと思う?
答えは「どっちも全然乾かない」。
ここで濡れた洗濯物を土に、洗濯カゴを植木鉢に、ビー玉を鉢底石に置き換えると、同じことが言える。
鉢底石があろうが無かろうが土は簡単には乾かない。
理屈を説明してやる。ここからは物理の話だ。
そもそも排水性(水はけ)とは何だ?土に水をかけたときに、どれぐらい水が下に流れ落ちるかか?
この話を理解するために、おまえはまず「土とは何か」を理解するひつようがある。
「土」は大きさも種類もバラバラな粒子の集まり
土というのは単純な構造ではない。
大きな礫もあればごく小さい砂粒もあり、鉱物などの無機物もあれば動植物の遺骸などの有機物もあり、それがバラバラなところもあれば化学的にくっついてるところもあり、微生物や虫もいる。
そうしたものの集まりがここで言う『土』だ。
土を構成する粒子の大きさも在り方もバラバラなので、土の中というのは物質がミチミチに詰まってるところもあれば、スカスカなところもある。それはかなりランダムだ。
なので、ミチミチなところ(土粒子の密度が高く、粒子同士の隙間が少ししかないところ)には水が溜まりやすい。
逆にスカスカなところ(土粒子の密度が低く、粒子同士の隙間が広めなところ)は水が素通りしやすく、そこには空気が通ることになる。
土は表面張力で水を保持している
ミチミチだと水が溜まりやすいことについては、もうちょっと説明する必要があるな。
おまえは「表面張力」や「毛細管現象」をしっているか?なんとなくはわかるだろう。
ツルツルのビー玉に水をかけても水はほとんど下に流れ落ちるだけだが、ぐしゃぐしゃに丸めた雑巾に水をかけるとめちゃくちゃ水を吸い、しかも丸一日ぐらい放置しても全然乾かない。
なぜそうなるのか?
雑巾にかけられた水は表面張力によって雑巾の繊維の隙間にくっついて離れないからだ。毛細管現象によって水は重力にも打ち勝って雑巾の繊維全てに行き渡り、離れないからだ。
土の中でも、同じことが起きている。密度が高いところではぐしゃぐしゃに丸めた雑巾や濡れた洗濯物と同じように、水をしっかり保持して離さない。
ちなみに、あまりにも密度が高すぎて本当にほんの少ししか隙間が無いところは、水すら通さなくなる。土で言えば粘土とかがそうだ。
粘土は目にも見えない超小さい粒子の集まりで、水すら通さないので、粘土質の土の上には水溜まりができやすい。園芸的には良くない土。
ただ、土は粒子の密度が場所によってバラバラだ。ある場所では水をよく保持し、またあるところでは水を保持せず空気をよく通す、といった具合に水と空気の在り方にもムラが生じる。
その割合がなんかこう、いい感じのバランスになっているのが、世間で「良い土」と言われるものだ。わかるか?
「保水性と排水性と通気性の良い土が理想です」みたいなフレーズ聞いたこと無いか?どこにでも書いてるからな。
特に保水性と排水性ってまるっきり逆やし矛盾しとるやんけと当初おれは思ったが、
これは「土が乾きすぎず、さりとてべちゃべちゃに水を吸いすぎず、保水できるところと空気を通すところがいい感じにバランスよく全体にある」という状態のことを言っているらしい。
で、鉢底石は水はけに何の寄与をするんだ?
ここまでの説明で、土は一度水を吸うと簡単には手放さないということがおまえにもわかったはずだ。
でだ。
その土を、鉢底石の上に被せていったとき、土の保水性能は…何か変わると思うか?
変わらない。何も変わらない。
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土粒子の密度に比べたら、鉢底石を敷き詰めた層というのは思いっきりスカスカだ。
少しややこしい話になるが、粒子の密度が全く違う2つの層の境目において、水は層から層へは全然移動しないことが科学的に完全に照明されている。
実際に土と鉢底石の境目において、水は表面張力で土にくっついたまま離れないので、鉢底石の層に重力で落ちて行ったりはしない。
なお、植木鉢にたっぷり水をあげたら鉢の底の穴から水が流れ出ていくが、もしかしてこの流れ出ていきやすさのことを排水性(水はけ)と世間では言っているのか?
これは土の保水性能の限界を超えた水が重力で下に落ちているのであって、保水しやすい土ならなかなか落ちてこないし、保水しない土ならすぐ流れ出る。
あと単純に水の量が多ければいっぱい溢れるし、少ないと流れ出てこないかもしれない。
やはりここに鉢底石の有無は全く何の関係もない。
絞っておらずぼたぼた水が滴り落ちている雑巾を、穴の空いた洗濯カゴの中に丸めて突っ込むのと、ビー玉を敷き詰めた洗濯カゴの中に丸めて突っ込むの、何の変わりもありゃしない。
敷き詰めたビー玉の上に絞ってない雑巾を置くととなぜか雑巾の水が凄い勢いで下に落ちていく…なんてことにはなりそうもないだろ?
②鉢底石を敷いても通気性は一切変わらない
①を読んだおまえならもう説明されずともわかってきていると思うが、
土の通気性(空気の通りやすさ)というのは、土の粒子の密度がなんかいい感じにバラけててバランスいい感じになっている、詰まりすぎていない、という状態によってもたらされる。
当然鉢底石は何の関係もない。
よく考えてみろ。
植木鉢ではない普通の庭の土壌に、底があるか?底に空気穴が空いてたりするか?
もちろんそんなものは無い。無いが、庭の土の中には普通に空気がある。
良い土であればちゃんと土粒子の隙間に空気が行き渡っているということだ。
一応、植木鉢特有の問題として、植木鉢が水と空気を全く通さない材質だと通気性が悪くなる場合がある。
土が保水している水が多すぎるときに、鉢の中という閉鎖環境では水の行き場がどこにも無く、植物の吸水と土表面からの自然な蒸発でしか水が減らない。
それで土がずっとびちゃびちゃな状態が続くと結果的に空気の行き渡る範囲が減る…ということはありえる。
これは原因がいくつかあって、
プラスチック鉢など水と空気を通さない鉢の材質が悪い。素焼き鉢、布製の鉢、スリット鉢、ヤシマットのハンギング鉢などを使えば良い。
土の保水性が高すぎるのが悪い。適切な性能の土を使えば良い。
植物が根を張っている範囲に対して植木鉢がデカすぎるのが悪い。特に根が届いてない土が底の方にあると底だけ常にびちゃびちゃみたいなことになって良くない。適切なサイズの植木鉢を使えば良い。
こんな感じで対策できる。鉢底石はどこにも登場しない。
鉢についてはここに詳しく書いた↓
鉢底石が有効かもしれないケース
上の3.を見てピンときたやつがもしいたらおまえは相当にかしこい。
根が底まで届いてないと底の方が全然乾かなくなる…じゃあそのとき、底に鉢底石を敷いて、根が土の層の一番底まで届くようにすれば、びちゃびちゃの底の層が生まれにくくなるのではないか…?
そうだ。それはそうだ。鉢底石は植木鉢の嵩を減らす効果がある。
尤も、底の嵩上げがしたいだけであれば別に金網とかでもいいし、
そもそも小さい植木鉢を用意すればいいだけの話でもあるが……
鉢の見栄え的な理由などで、植えたい株に対して大きすぎる植木鉢をどうしても使いたいときに、底を嵩上げしてあえて土容量を減らす…という用途では役に立つと思われる。
手軽に安く買えるし、入れる量で高さ調整を自由にできるのはメリットと言ってもいいだろう。
逆に言えば、株の大きさに対して適切なサイズの植木鉢に鉢底石を敷いてしまうと、土容量が減ってしまい、株の健全な生育を阻害する。いいことがない。
鉢底石の効果をまとめる
土の保水性や排水性を改善する効果など無い
土の通気性を改善する効果など無い
植木鉢を嵩上げし、土容量を減らす効果がある
動画も作りました
鉢底石の量で水はけや乾く速度がどう変わるか、簡単な実験をしました。
参考文献
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