【インサイト】続・博士たちの異常な愛情 核抑止をめぐる米露のつばぜり合い
この数週間、核兵器をめぐる話題が米露双方からしきりに聞かれるようになりました。ウクライナでの核エスカレーション、将来の米露軍備管理、そして中国の核戦力増強を踏まえた米国による核軍拡の可能性などについて考えてみたいと思います。
「ビビってるんじゃねえよ」 サンクトペテルブルグ経済フォーラムでのプーチン発言
まず取り上げたいのはロシアの動きです。
6月7日、サンクトペテルブルグ国際経済フォーラム(PMEF)の最終セッションに登壇しました。司会を務めたのはセルゲイ・カラガノフ。この名前に覚えがある方もおられると思いますが、ちょうど1年前に「核兵器こそが救世主だ」などと述べて積極核使用を訴えた外交防衛評議会(SVOP)の名誉議長です。
その後、プーチンは一応カラガーノフの主張をやんわりと否定していますが、こういう人物に未だに自分の出る国際会議の司会を任せているわけですから、その事実が「ソフトな核の脅し」みたいな役割を果たしているのでしょう。
そして今年のPMEFでは、プーチンとカラガーノフの間でこんなやりとりがありました(以下、Qがカラガーノフ、Aがプーチン。抄訳)。
一見してわかる通り、かなり激しいやりとりです(実際にはもっと辛辣な言葉が使われている)。全体的にはカラガーノフが「ビビってんじゃねえぞ大統領」と煽り、プーチンは終始「ビビってるんじゃねえよ、こっちは責任重大だし通常戦力でも勝てるって言ってんだろ」と応酬するという構図に見えます。ただ、プーチンはその中でも巧妙に核の脅しをかけており、核の積極使用ドクトリンを採用することも排除しないとか、欧州には早期警戒能力がないではないかとか、核戦争になったら米国は本当に介入してくるかどうか疑わしいと匂わせたりしています。最後の点については、前号で紹介したウズベキスタンでの発言をもっとあからさまにしたものと言えるでしょう。
「核ドクトリン」にはなんと書いてあるのか