西早稲田・高田馬場 | おかえり、って言ってもらえる日々の味わい。
思い返せばいつも、そこに必ず知ってる顔の誰かがいて、行けばあいさつしてもらえるから、わたしにとっての「家」のようなものだったんだ。
だれとも血縁もない他人だけど、みんなきょうだいみたいだったし、同じ話題・知らないこと・興味を持ちよって、誰かと一緒に居られるから、西早稲田のお店に足しげく通ってた。
だから、「おかえり」って、言ってもらうと、すっと安心できたのだ。
元々、コミュニティを同じくする友人は、長らくバンドの道を歩んでいた。
セカンドキャリアとしてカフェ経営を始める、と言うと彼の周りには人が集まり、場所を決め、ロゴができ、メニューもスタッフも決まって、店ができあがった。
店主の思い入れのある、CARESSという名前。
それまでにわたしは馴染みのなかった西早稲田、という東京の街。
高田馬場駅と副都心線 西早稲田駅が最寄りで、どちらの駅からもお店を何度も目指していくうちに、道の両端に食のお店が充実していて、右に中国料理あれば、左はラーメン屋が軒を連ね、チェーン店やコンビニがあるかと思えば、歩けばザリガニ料理屋に当たるなんていう、雑多なところが親しみやすくていい街だな、と通うほどに、しみじみと感じいるものがあった。
どのお店にも、早大生のためのメニューや割引があったりして、ほほえましい。若者を飢えさせんとする、おとなの心意気を感じる。
カフェへの道中に、ぽっと羊肉料理のお店があったりして、ここが案外うまかったりする。
(麺屋こころの塩だれにニンニクたっぷりのまぜそばも好きだ。)
道は案外、難しくなくサクサクと歩いてゆけた。
わたしは2021年、ビューティーコンテストに参加していて、たびたび上京していた。
コンテスト参加中は、ワークショップのあるごとに、誰かの顔を見ればほっとするからと通い、小平のスタジオレッスンに行ったあとには、9cmヒールの脚の疲れを休ませてもらった。
「chiccaさん、東京に住んでるんじゃないの?」と、言われるほど頻繁に来ていた。行けば誰かが笑ってくれる場所は、プレッシャーからひととき放たれる時間だった。
その頃、わたしは自分の力をうまく発揮できないことや、やるべきことに集中できないことに悩んでいて、ガパオライスの目玉焼きをぐりぐり潰しては、咀嚼し、飲み込み、胃に溜めていった。
そういった悩みの発する感情的もやもやを、ラテアートの絵を崩すように流しこんでいたのだと思う。
そして、胃袋もほっとして、コーヒーカップを持つ指先にまで、じんわりと元気がにじんできたら、渋谷のホテルにひとり帰るのがお決まりのコース。
友達と連れだって行かなくても、スタッフも顔見知りが揃っていたので、ただ本当に落ち着けたのだ。
ホテルに帰ると、溜まった感情が添い寝してきた。寝て落ちるまでに払いのける。
誰かを迎える場所を作る。そして、続けていく。
その行為は、尊いといつも思う。
ハレの日もケの日も、そこにある。
わたしのように、元から知り合っている者だけでなく、店の前を通るひと全てにいつも開けた場所であってほしいなと今も願っている。
メニューもあの頃から変わり、今はボリューム満点のローストポーク丼や角煮丼で、しっかりと胃袋をつかんでいるので、次は盛大におなかを空かせて行かなくちゃ。
遅くなったけど、開店2周年おめでとう!
chicca
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