08.【実務で使える!】4S理論/シュロスバーグ
本日ご紹介するのは、シュロスバーグの4S理論です。
ナンシー・シュロスバーグは、キャリア理論家の中でもまだまだ少数派の女性の理論家ですね。
シュロスバーグは、変化の激しい社会を生き抜くにあたって、自分に訪れる転機を理解し、適切に対処するコツを知ることが重要と考え、4S理論などを提唱しました。
転機に関する理論は、キャリアコンサルタントの筆記試験においても頻出の分野ですが、中でもシュロスバーグの4S理論は、実技試験や実務の場面においても活用しやすい考え方かと思います。
目次
▼転機を定義する
▼転機を評価する
▼転機を乗り越えるためのS(4S理論)
▼まとめ
▼「転機」を定義する
転機に関する理論は数多くありますが、理論によって転機(transition)という言葉の使われ方が若干異なるので、まず整理をしておきます。
かなりざっくり分類すると、転機の意味には2種類あるかと思います。
①発達段階の中での転機
私達は人生において、共通した発達段階を経るという発達論的観点から、
「今いる発達段階」→「次の発達段階」へ移る際の移行期を転機と捉えます。
つまり、ライフサイクルという連続性の中で、転機を捉えようとする考え方です。
レビンソンは、人生を四季(春夏秋冬)に例えた発達理論を提唱していますが、ここでいう「季節と季節の間」の期間も転機といえます。
②個人の人生における、その人独自の転機
一方、こちらは転機をよりパーソナルなものとして捉えます。
進学、結婚、出産、転職などの転機を、それぞれの個人におけるその人独自の出来事と考えており、シュロスバーグの理論もこちらの視点に立脚したものです。
▼転機を評価する
ここから、実際に起きた転機のタイプを識別していきます。
シュロスバーグによると、転機は
・予測していて起こった出来事
・予測していたが起こらなかった出来事
・予測していなかったが起こった出来事
に分類されます。
個別の転機がどのタイプに分類されるのかを知ることで、その転機が持つ意味や背景、クライアントにとっての転機の重大性を理解することができます。
▼転機を乗り越えるためのS(4S理論)
転機が起こる原因や内容、その人の置かれている状況はそれぞれですが、4つのSが転機を乗り越えるために必要な能力に影響を及ぼしている、とシュロスバーグは考えました。
4つのSを確認していくことで、クライアントが活用可能な資源と、脆弱な資源を客観的に評価できます。
そこから、クライアントの脆弱な資源を補えるようなゴール設定をすることで、具体的な解決方策に展開することが可能です。
Situation(状況)
・コントロール(転機に対して、自分でコントロールできる部分はどの程度あるか)
・期間(一時的なものか長期的なものか)
・過去の経験(過去にも同じような転機を経験したことがあるか)
・ストレスの程度
・転機の捉え方(転機をポジティブ/ネガティブに捉えているか)
Self(自己)
・ものの見方
・人生観、価値観
・ストレス耐性
Support(支援)
・望んでいるサポートを受けられているか
・広い範囲で支援を受けられているか
・今受けている支援を、クライアントは十分/不足していると感じているか
一例として、就活中の若年層で言えば
・家族、友人
・大学のキャリアセンター
・OB・OG(希望する企業に就職した先輩から一時的情報をゲットできる可能性もあります)
・新卒応援ハローワーク(各県に設置されており、学生及び卒業後3年以内の既卒者を無料で支援してくれます)
などの支援が考えられますが、クライアントが気づいていない資源がある場合もあります。
このような場面で十分な情報提供ができるよう、キャリアコンサルタントは常に労働市場に対してアンテナをはっておく必要がありますね。
Strategy(戦略)
・実行可能な戦略をとる(状況を修正するよう働きかける、自分にとって転機が持つ意味を変える、ストレス対処法を作る、など)
▼まとめ
ここまで見てきたように、4S理論は比較的シンプルで分かりやすい理論なので、実務の場面においても比較的取り入れやすいです。
Situation、Self、Supportについて、開かれた質問・閉ざされた質問を使いながら明確化→そこで浮かび上がってきた課題に対して、Strategyを提案する
といった具合です。
もちろん、キャリコンの実技試験等においても使える理論かと思いますので、今後受験予定の方におかれては、機会があれば練習で意識してみることをオススメいたします。