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水って流れ落ちてる瞬間が一番カッコイイ[滝レポ]

滝を見に行きました。
久方ぶりの休日で、浴室の隅にこびりついた黒色の有象無象を取り除こうと四苦八苦していたころ。髪の毛とか粘り気とかぬめりを落とす薬剤を撒いて浸透するのを待っていたころに友人から「ドライブしてえ」と連絡が届く。ドライブ、するかぁ、と思いながら返事をして掃除途中だった浴室をシャワーで流した。そこでシャワーを浴びていたのだけれど、髪の毛を溶かすくらい強い薬剤なのだから、たとい少し洗い流したとて少し残っている。今でも足の裏が若干ヒリヒリとします。あんな危険なものを薬局で売っていいのか。
やよい軒でだし茶漬けを食って腹ごしらえした俺たちは行く当てを決めることにした。「滝みてえな」と友人がボソっと言ったので滝を見に行くことになる。近頃の雨で増水した立派な滝を見に行きたくなったのだ。有力箇所は二か所あったのだけれど、一方は七月五日に熊が目撃されている超危険スポット。滝があれば、熊がいる。自然の道理ではあるのだけれどちょっと直近すぎる。毎日夜な夜な熊に出会ってしまった時の趣味レーションを欠かさない俺だけれど、出会わないなら出会わないに越したことはない。特訓の成果を実地に試したいとは微塵も思わない。
もう一方の方は一時間もドライブすれば着くところだ。最近熊の目撃情報は色んな所で出ているらしいけれど、熊が怖くっちゃア滝は見れない。遺言を考えながら俺たちは車を走らせた。ヨルシカの幻燈の投稿されてない曲が良かった。
くねくねとした山道を登っていくとこの先2.6km先通行止めの表示。多量の雨で道路が陥没したとか何とか。せっかくここまで来たのに、まあ自然の風景は楽しめたからと若干安堵しながら言い訳をしていると、滝へは1.7kmも進めば着くらしい。仕方がないので腹を括って滝へ向かうことにする。
何か看板らしいものが見えて車を止める。駐車できるスペースがあったのでそこに車を止めて肺一杯に山の瑞々しい空気を吸い込みながら外へ赴く。雨と土の匂いが濃い。すぐ脇に下っていけるようなところがあったのだけれど、その傾斜から流石にここじゃないだろと言ってしばらく辺りを散策した。しかし、そこ以外に滝へ通ずる場所はなさそうだ。マジか、と呟きながらその過酷な道を下っていく。これ、帰るとき登れんの? と首をかしげたくなるような急傾斜。落ちたら普通に死ぬ。

ちょっと過酷すぎる

ここから少し写真が多くなる。その先にたどり着いた川、そこがゴールだと思っていたのにまだ進まないといけないらしい。普段なら幾つかルート選択の自由が効きそうな飛び石ももう増水のせいでほとんど通れなくなっている。これ見た目よりも幅があってこの先に進まないといけないことに本当に絶望した。引き返そうとも思った。命を無駄にしたくない。ぼく夏だったら後半にならないと行けない場所です。強いミヤマとかいます。

足を滑らせたら死

なんやかんやあってこの中間ポイントを抜けて進んでいくとそれ以上に大変な場所はなくて安心した。慣れてきたのかもしれない。ただ一度足を踏み外して川の中に左足を突っ込んだ俺の足首にはヒルがついていた。普段なら気持ち悪くて触りたくない程だけれど、野生のパワーが俺を駆り立て潰すほどの勢いで握りしめて草むらに放ってやった。俺は強いぞ。
ボロボロになりながら着いた滝はそれはもう見事な物でした。ここからは有料記事に、なりません。

TAKI

自然は雄大でした。もっと近づきます。

高さ三十メートル、幅一点五メートルの大滝です。音と風とミストが凄かった。冷静に考えて、水がこんなにたくさん落ちてきてるのヤバイ。それで服が煽られるほどの強風が吹いているのが素晴らしい。大きいものを見ると人の心は豊かになる。水が一番カッコイイ瞬間は、流れ落ちている時です。絶対に。丸太とか落ちてきたら死ぬんかな、と思ってました。

エンドコンテンツ〈滝の裏〉

行きはよいよい、帰りは怖い、なんて言いますが、今回に限っては行きの方が苦しかった。どこまで続くか分からない源流探索のような険しい道とヒル、蚊、いつ何時顔を表すか分からない森の主熊。もう帰りになったら気が大きくなって、早く帰ろう、とけもの道に慣れた身体が先を急がせます。日々の養生不足から足はプルプルと震えて川を越えるのが大変だったけれどなんとか車まで辿り着いた。ヒルがついていないか節々を確認する。
泥だらけになりながら座っていると、その先で工事をしていたお勤め人が降りてきて楽し気な目をこちらに向けていた。「楽しそうだなァ」という風だったけれど俺たちは全然それどころじゃない。当事者じゃなければ気楽なものであるけれど、俺だって時折チャリに乗って汗だくの中高生を見てそんな表情をしているのでしょう。
腹が減ったので寿司を食って帰りました。もうアウトドアはしばらく懲り懲りです。では、ノシ。

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