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車輪でボールを追いかけて 1

かのこさんのサイクルサッカー日記

【2019年 9月】

サイクルサッカー。
その競技の名前はずっと前から知っていたし、動画を見たこともあった。
どこかの体育館に設置された狭いコートの中を、2対2、計4台の自転車が行ったり来たりを繰り返す。前輪を持ち上げてボールを弾き、自転車の上で両手を広げたキーパーがボールを受け止める。全ての動作は自転車の上で行われ、彼らが床に足をつくことはない。動画の中で彼らはクルクルと旋回するようにして自らの陣地に戻って行った。
運動神経が切れていると言われる程度に激鈍の私にとっては遠い世界の競技のはずだった。

よく考えなくても、サイクルサッカーなんて大抵の方にとって遠い世界の競技だろうと思う。
大体、どこでやっているのか、わからない。
実際に目の当たりにすることもほぼ無い。
大体が他の自転車競技や趣味の機材について調べていたときに写真を目にする程度……もしくは何かのイベントで、その名前を知る程度だ。私がその動画を見たのも同じような経緯だった。
10年も前だったように記憶している。
「面白いの見つけた。」と、自転車でのツーリングを趣味とする友人に見せられた写真。
その写真の中で変った形の自転車に跨り笑う男性。自転車の上でハンドルには触らずに両足はペダルに掛けたままボールを抱えて仁王立ちする姿は一瞬を切り取ったものではない。リラックスして笑う表情から、当たり前のように彼がその姿で静止しているのがわかる。
それなりのペースで走っているのなら、自転車の上で両手を離すのはそう難しくない。大体は片手放しくらいは経験があるかと思う。
足を付かずに静止して、両手を離して、しかもサッカーを??
いや、絶対ムリでしょ。
「バランス感覚がヘンタイ級だな。」
そう言って、薄い笑みを返して、それっきり思い出すことも無かった。


球技は苦手だ。
自転車も見るのは好きだが本格的に競技をやろうとは思わない。便利で、楽しい道具の一つだ。
ずっと、そう思っていた。
今も、私は球技が苦手だ。自転車は便利で楽しい道具を抜け出すことがなかった。
これは、運動音痴アラフォー主婦が、どういうわけかサイクルサッカーを始めてしまった、ただそれだけの記録である。

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かのこ
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