望ましい行動に注目しよう

みなさんこんにちは
和歌山市で放課後等デイサービスの運営サポートとメンタルヘルスケアを行なっている臨床心理士・公認心理師の大浦政幸です。わたしたち株式会社Mind Compassは、ノーマライゼーションの実現を目指して活動しています。

さて、今回のお話は利用者の方々の行動の中で、どの部分に注目していくかというお話をしたいと思います。利用者の方と療育をしていくと、どうしても目が行く行動となかなか目が届かない行動があるかと思います。集団での活動になると、気になる行動に注目してしまうということも多くなってくるでしょう。そして、その反対に望ましい行動に対しては、「よしよし、活動してくれているな」と思いそのままスルーしてしまっていることがあるかもしれません。そこで、今回はどうして望ましい行動に注目していくのか、気になる行動にはどう対処していくのかを考えていきたいと思います。

最初に知っておきたいことは、人間が行動するのはどういう仕組みで起こっているか、ということです。行動を考えるとき、その行動の前の状況、いわゆる原因を中心に考えることが多いと思います。どうしてその行動をしたのか、行動する前にどういったことが怒っていたのか、例えば「ほしいものが目の前にあったのかな」とか「大きな音がしたからなのかな」とかなどです。しかし、実はこの前の状況だけで行動が決定しているわけではありません。特に繰り返し起こる行動は、行動をした後に何が起こっているかが、とても重要になります。
たとえば、何かを口にした時にとてもからかった場合、次も食べてみようとはなかなかしにくいですよね。反対に、とても自分好みの味であればもう一度食べてみようとするはずです。このように行動した結果、メリットがあるのか、デメリットがあるのかによって、行動が増えたり減ったりするのです。

このような行動の原理があることを知ったうえで、もう一度どの部分に注目するかを考えていきたいと思います。
気になる行動に対して注目したとき、そこではなにが起こっているのでしょう。
気になる行動をする前の状況というのは様々だと思います。そもそも気になる行動も様々でしょうから、ここで「これだ!」とは言いにくいので、みなさまでいつもの状況を思い描いていただければと思いますが、それでは話を進めにくいのでここでは気になる行動を「大きな声をあげる」にしておきましょう。
さて、「大きな声をあげる」前にはどんな状況だったでしょうか。

支援員の方が前に出てみんなに向かって何かを話している
話している内容がよくわからない
質問したくて手を挙げたけど気づいてくれない
みんな支援員の方を見ている

などが考えられます。こういった状況で「大きな声をあげる」と何が起こったでしょうか。

支援員の方に注目される
みんなも自分を見てくれる
話が止まる
何があったかを聞いてくれる
横に別の支援員の方が来てくれる

こんなことが起こるかもしれませんね。
そうすると、この利用者の方にとっては、とても嬉しいこと、とてもメリットがあるということです。メリットがたくさんありますから、また似たような状況になった時に「大きな声をあげる」ことをするようになります。こうして知らず知らずのうちに、周囲の状況がこの利用者の方の「大きな声をあげる」行動を増やしていったのです。

では、反対に望ましい行動に注目した場合はどうでしょうか。
これも上に挙げた例と同じことが起こるはずです。そして、望ましい行動がどんどん増えていくでしょう。だから、望ましい行動に注目したほうがいいのです。
そうはいっても、なかなか望ましい行動に注目して、気になる行動には注目しないのは難しいかもしれません。そんなときも、その利用者の方にとってメリットになっているのはなんだろうか、と考えてみましょう。そして、できるだけそのメリットを起こさないように、そっと注目していけばいいのです。
先ほど挙げた「大きな声をあげる」では前で話している支援員の方がそっと口に指を当てるだけでまた話し始めてもいいかもしれません。「話の聞き方カード」をそっと提示するのもいいかもしれません。できるだけメリットを少なくしておき、望ましい行動をとった時に大きな反応をして「いいことがあるよ!」と伝えてあげればいいのです。

今回は、望ましい行動に注目しよう、というお話でした。言うは易く行うは難しですが、少しずつでも実践できるとよいですね。

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