「ありがとう」を伝えてほしいときに
みなさんこんにちは
和歌山市で放課後等デイサービスの運営サポートとメンタルヘルスケアを行なっている臨床心理士・公認心理師の大浦政幸です。わたしたち株式会社Mind Compassは、ノーマライゼーションの実現を目指して活動しています。
今回は、発信の少ない利用者さんにどうやって言葉で発信してもらうのかというお話をしたいと思います。
放課後等デイサービスにこられる利用者の方々は、様々な障害があったり、特性があったりします。そのため、ときには言葉でのやりとりが難しく、指差しや目線、カードでのやりとりになることがあります。利用者さんの得意不得意に合わせてコミュニケーションを取ることが一番大切だと思います。
しかし、言葉は伝えられるけど、物を受け取る時に「貸して下さい」や「ありがとう(ございます)」と伝えられず、無言で受け取ってしまう場面もあるのではないでしょうか。
こういった状況のとき、みなさんならどう対応しますか。
特に気にすることなく、そのままという方もいるかもしれませんし、「ありがとう」って言おうね、と伝える方もいるかもしれません。何か言葉を発してくれるまで待つ方もいるかもしれませんね。
ここで大切なのは、その利用者の方が言葉を発することについて、どのような目的を持っているか、になります。
物を渡したときに、「ありがとう」などの会話ができることが目的になっている場合、無言で受け取って去っていくのは見逃せませんよね。反対に、物を認識して人から受け取ることが目的になっている場合は、それでもいいかもしれません。また、「ありがとう」ときちんとお礼をいうのか、「ん」などどんな言葉でも伝えられればいいのか、そういう細かな違いも、目的によって差が出てきます。
目的が「ありがとう」といって物を受け取ってもらう、だった場合、「ありがとう」と言ってくれるまでそれを渡すことはやめておいた方がいいでしょう。では、どうやって「ありがとう」と発信してもらえばいいでしょうか。
一つは、物を手渡すときに「ありがとう」というまで、渡すけどこちらも話さない、という状況を作ることは可能ですね。
そうすると、利用者の方は「あれ?どうして離してくれないんだろう?」と疑問に思って、「あ!ありがとうだ!」と自分で気づいてくれるかもしれません。
もしかすると、支援者の方が「あ」と冒頭の一文字を伝えるとそれがきっかけになって「ありがとう」と言えるかもしれません。もしくは、「なんていうんだったっけ?」と伝えていってもらうこともあるかもしれませんね。
こうやって、伝えてほしい言葉を出してもらうために、気づきのサインを出すことが大切です。サインがなくても自発的に伝えられるようになることが最終目標になると思いますが、そのゴールに行きつくためには、様々な小さな気づきと目標達成が含まれています。
「ありがとうございます」と自発的に発言できるようになることを最終目標にして、そこに至るまでにスモールステップで小さな目標を立てていきましょう。最初は物に気づく段階があるかもしれません。受け取ることができる、「ん」など言葉を発する、きっかけに気づいて「ありがとう」ということができる、などその利用者の方に応じてきめ細やかな小さな目標を立てていきます。それを支援者間で共有し、同じように対応を取っていくと、より効果的でしょう。
今回は「ありがとう」と言ってもらうためには、どうしたらいいのかをお話してきました。大切なのは、その目的とどういった目標を設定して、実行していくか、だと思います。小さな小さな目標をたくさん立てながら、それをクリアできるようになっていけばいいですね。