「休眠口座」解約顛末記

2012年3月16日の日記に加筆して、「休眠口座」の解約の流れを書きました。
参考になればいいのですが。


ちょっと前に「休眠口座」の報道がありましたね。
「復興財源に使うんですよ」とかの理由付けで、百家争鳴、喧々囂々、侃々諤々の事態になりました。
政府が個人の懐に手を突っ込むのは、いかがなものかと…。
そこで思い出したのです、私にも「休眠口座」があったはずだと。

古い通帳などは処分せずに取ってあるので、簡単に見つかりました。
残高は数十万円になっていましたが、それは記帳をしなかっただけで、キャッシュカードで現金を下ろしてたから、そこまでの残高はありません。
記憶では、確か1万円ちょっと。
銀行は富士銀行です。
ところがそのうちにプラスチックのカードがひび割れて、ATMに挿し込こんだら、そのままカードだけ機械に没収されました。
まあいいや、1万円くらいだからと、そのまま放置していたのです。
その時から、かれこれ20年は経っているでしょうか。

その後、都市銀行は離合集散を繰り返し、富士銀行は現在、何銀行になっているのか分かりません。
自宅周辺には都市銀行が三行あって、その中でおそらく「りそな銀行」ではないかと見当をつけました。
ところが周囲の連中に訊いてみると、どうやら富士銀行は現在の「みずほ銀行」であることが判明。
そこで通帳と印鑑を持って、都心に出たついでに「みずほ銀行」のA支店に寄ってみました。

案内のお姉さんにその旨を伝えると、
「これはずいぶん古い通帳ですね」
と感心されました。
それはともかく、古くたって、現在も口座はあると、自信を持っておっしゃる。
だけど、処理は手作業になるから、30分くらい待って欲しいとのこと。
そんな時間はないので、どうしようかと思案していると、
「開設した支店へ行けば、割と簡単に済むはずですよ」
とのアドバイス。
通帳の裏表紙を見ると、その支店名がありました。
被災地の復興に使われるなら、そのまま知らん顔でスルーしてもいいのですが、どうもその方向にはいかないらしい。
ならば、開設したのはB支店で遠いけれど、時間をやり繰りして、そのうちに訪ねてみようと思いました。
そのままA支店を出て、その日は終わったのでした。

後日、B支店へ電話すると感じの良いお姉さんが出て、通帳と印鑑さえあれば、手続きは簡単に済むとのこと。
ところがここで問題があるので、そのことを説明しました。
転居によってパリからロンドンへと移動したために、当時と住所は違うし、実はこれが一番の問題だと予想するのですが、事情があって、姓も石川五右衛門から鼠小僧五右衛門に変わっているのです。
でもお姉さんが言うには、通帳と印鑑があって、それに免許証など、本人であることが分かれば大丈夫だと、嬉しいお言葉を頂戴しました。
「そんなに簡単なんですか」
「下のお名前は変わっていないわけですし、生年月日が一致すればご本人であると分かりますから」
なるほど。
でも、開設するときに生年月日まで教えたかしらん?
だけどそう言うからには、先方も私の生年月日を押さえているのでしょう。
そのうちに伺います、と電話を切りました。

住民税の確定申告は昨日まで。
去年はずいぶん所得が低かったんだなあ、あ、寄附金の控除もあるぞ、などと面倒な計算や書類とにらめっこしながら、前夜はそれに掛かり切りでした。
途中で揺れたので、一瞬めまいかとも思いましたが、どうやら地震らしい。
テレビをつけると、日本の若い衆が中東のどこかの若い衆と蹴鞠をしていました。
そうか、これはオリンピック行きが決まるかも知れない勝負なのかと、ペンと電卓を持つ手を止め、0対0だから、勝負の行方はまだ分からないなと、画面に見入りました。
でもすぐに画面が切り替わり、地震報道になりました。
銚子では震度5強と言ってます。
最近の地震はどんどん南下しているようで、東京などの都会に暮らす人は不安な思いでいることでしょう。
やがて画面が蹴鞠に戻ると、いつの間にか、日本の若い衆たちが1点入れているではないですか。
それでも翌日が申告の提出期限なので、また書類に没頭しました。
申告額は低くたって、そのぶん住民税や健康保険料が安くなるので、それほど悪いことでもないかなと、自分を慰めて作業を終わらせました。

朝一番(といっても9時ですが)にロンドン町役場へ申告書類を提出に行きました。
この「朝一番」というのがミソで、地方公務員の方々がヒマな時は、その場であれやこれやと訊かれるのが煩わしいのです。
だから最終日でごった返すこの時が、提出のベストタイミングなのです。
振り返ると、行列ができています。
受け付ける地方公務員さんたちも後がつかえてるから、急いで機械的に受理をするだけなので、何のお咎めや詰問も受けずに、無事、提出を済ませました。
後で何か言われれば、それはその時のことです。

2階から1階に下りて、住民課の窓口に向かいます。
こちらも今日の午前中は時間があるので、万が一の用心のために書類を整えて「休眠口座」を何とかしようとの作戦です。
欲しいのは、前のパリの住所と、石川から鼠小僧に姓が変わった記載のあるもので、たぶん住民票で事足りるだろうとの予想です。
場合によっては戸籍謄本の方が確実かな、でも本籍地へ行くのは面倒だな、などと考えながら、窓口のおじさんと対峙しました。
手っ取り早く、「休眠口座のことで、これこれしかじか」と、出して貰いたい項目を簡潔に伝えます。
ところがおじさん、
「本籍地はどこですか」
などと、とんちんかんなことを質問します。
「M78星雲ですけど、銀行にそこまでの記載は必要ないと思うんですけど」
「ああ、そうですね」
「住民票で大丈夫じゃないでしょうか」
「なるほど」
やはりここら辺が、地方公務員の地方公務員たる所以なのでしょう。

本人確認のために、ゴールドの免許証を見せます。
おじさんはそのゴールドの免許証を片手にパソコン画面を操作し、しばらく思案を始めました。
待つこと1分23秒。
「2枚になりますが、住民票で両方出ますね」
だから言ったでしょ。
(ーー゛)

出ました住民票。
1枚目には前住所の記載があり、頼みもしてないのに、ご丁寧に本籍まで載ってます。
2枚目は改製除票で、しっかりと石川五右衛門から鼠小僧五右衛門に変更された記載があります。
2枚でも1枚と同じ200円なのはラッキーというべきでしょう。
これが無駄になっても構わないのですが、準備万端、さあ、車で30分の距離にある「みずほ銀行 B支店」へ向かいます。

B支店は大型スーパーの一画にありました。
ずいぶん懐かしい場所です。
でも銀行の駐車場がないので、無断でスーパーの駐車場に車を入れました。
行内に入り、さて、番号札を取るべきか、それとも誰かに直接訊くべきか、ちょっと考えます。
すると警備員らしき制服のおじさんが寄って来て、
「どのようなご用件でしょうか」
と訊きます。
「休眠口座のことで…」
すぐに用件を理解したようで、案内係のお姉さんが後を引き継ぐようです。

「休眠口座のことで…」
アホみたいに同じ言葉を繰り返します。
「はい、こちらで承ります」
通帳を見せました。
「これは一番古い通帳ですね」
A支店と同じことを言われました。
とにかく、まずはこのB支店に私の口座がまだ存在しているか確認して貰いたいのです。
「少々お待ち下さい」
お姉さんはどこかへ消えました。

たとえ残高が1万円ちょっとでも、何しろ20年前後も放置していたのだから、口座が今も存在していれば、当然、利息もついているはず。
その利息で都心のタワーマンションの1室でも買っちゃおうかな、などと考えていた数分後、お姉さんが戻って来ました。
「新しい通帳をお作りしました」
え? そうじゃないんだよなあ、口座が残ってたら解約したいんだよなあ。
だって、自宅近くには「みずほ銀行」なんて無いもん、通帳があっても「みずほ銀行」なんて利用しないもん。
「解約したいんですけど…」
はっきり言いました。

それからが面倒で、
「では、こちらの用紙にご記入をお願いします」
お姉さんが丁寧に教えてくれるままに書きました、印鑑も捺して…。
もちろん鼠小僧ではなく、口座名義の石川五右衛門です。
お姉さんは番号札の紙を差し出し、
「お掛けになってお待ち下さい」
と再度消えました。
新しい通帳を開くと、利息は46円。
都心のタワーマンションよ、さらば。
(ToT)/~~~

待つことしばし。
さっきのお姉さん、何かの用紙を手にして再々登場。
「クレジットカードも廃止しなければいけないのですが…」
「構いませんよ」
そんなものを作った記憶はないけど、そう言うのなら作っていたのでしょう。
でも買い物などは、いつもシブシブ現金払いだったし、一度も使ったことはありません。
「こちらに、現住所とお名前をご記入いただけますか」
ちょっと、ちょっとちょっと。
両方とも当時と違ってるんですけど。
面倒な予感…。

備えあれば憂いなし、やっぱ住民票を用意して来てヨカッタ。
ここで住所も姓も変わってることを説明し、ゴールドの免許証と共に見せました。
するとお姉さん、少し思案の上、また消滅イリュージョン。
代わってお局様の登場と相成りました。
でもお局様は、さすがに場数を踏んで来たつわもので、無事に私が本物の私であることを確認すると、
「少しお時間を頂戴できますか」
「ハイ」
となり、私はまた着席したのでありました。
(石川の印鑑の他に、鼠小僧の印鑑も必要でした、念のために持っててヨカッタ)
でもここからが長かった。
行内に足を踏み入れてから約1時間20分。
やっと解約が済み、ピン札と小銭を手に「みずほ銀行」を脱出したのでした。

停めさせて貰ったスーパーで若干の買い物をし、帰りがけに回転寿司で昼食を済ませ、ガソリンを給油してロンドンに帰還。
1万円はあっという間に消えたのでありました。
でもガソリン代の高騰にびっくり。
多少の円安傾向はあるにせよ、ホルムズ海峡が封鎖されたわけでもないのに、ここまで値上がりしているとは…。

おしまい。

付記
通帳や印鑑を紛失しても、住所や本人確認が出来れば、時間はかかりますが対処してくれるはずです。
消えた年金を復活させるよりは簡単です。
まずは口座を開設した支店へ連絡を。
支店が閉鎖されていた場合は、全国どこのみずほ銀行(他行も同様)に問い合わせても、統合先を教えてくれます。

再付記
長々と失礼しました。
現在のみずほ銀行はシステムトラブルの不祥事続きで、どの程度の対応をしてくれるのか不明ですが、元々は自分が預けたお金、しっかり取り戻しましょう。

同時に、姓を変更すると、こんな面倒な手続きも発生するということです。

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