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色覚異常でもデザイナーになる 1

私は少数色覚(2型色覚異常:緑色が弱い)のプロダクトデザイナーです。電化製品の製品デザインをメインの仕事にしてます。もうデザイナー歴としては10年を越えています。

あまり言わないようにしていますが、私がだれかに「自分はデザイナーだけど少数色覚です」と話しをすると、たまにこんなことを言われます。

「それはあなたが持って生まれた個性なんだよ!
 あのゴッホも色盲だったらしいし、
 それは一つの才能だと私は思うよ!」

こういうニュアンスのことを言われます。

こういうことを言う人に悪気はありません。何やら励まそうとしていただいているのだな、と理解しています。ありがたいことです。

しかしその内容について、いつも思うことがあります。

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クソくらえ。

『個性的』とか『才能』なんてどうでもえぇんじゃ、デザインを仕事としてやっていけるかどうかかどうかが重要なんじゃ。

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生活がかかってんじゃい。

って思ってます。

何か困難に対峙している他人の話を聞くと、感情的なフォローをいれようとする人は結構います。

しかし、少なくともわたしの場合、自分の目標達成のためにそれらの発言が役に立ったことはありませんでした。

少数色覚者が健常者とと同等以上のパフォーマンスを発揮するためには工夫が必要です。しかし、ポイントを抑えればデザイナーとしてやっていくことは十分可能だと思います(※赤緑系色覚異常の場合)。

ただ、そんな情報は世の中にほとんどありません。

わたしの記事を見てくれている人の中には、やはり同じように少数色覚の人で、デザイナーの人、もしくはデザイナーになろうとしている人もいるのではないかと思います。

そこで、少数色覚であるわたしがデザイナーとして生きていくためにしてきた工夫を記事にしていきたいと思います。

それらの記事が少しでも役に立てば嬉しいです。

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自分が不得意な色を徹底的に把握する

自分がエラーを起こしやすい色の組み合わせを可能な限り把握することが、全ての対策の始まりです。

もしプロのデザイナーとしてやっていくのであれば、色彩構成、つまり色の組み合わせを検討する業務から逃げることはできません。特に色が重要な情報を持つ場合は間違いは許されません。

(※自分は「グラフィックデザイナーよりプロダクトデザイナーのほうが色を使う機会は少ないだろw」ぐらいに考えていましたが、浅はかでした。製品の色というのはある意味グラフィックデザインよりも難しい面がありました。このあたりはまた別の記事を書きたいと思います。)

少数色覚の人は健常者とは違う色の見え方をしていることに起因する間違いをしてしまうことがあります。それがデザイナーとしてやっていくための障壁となるわけです。

しかし、ここで一つ大事な認識をしていただきたいことがあります。
違う見え方をしていますが、「ランダムに色を正しく認識できない」というわけではないということです。

以前の記事でもご説明しましたが、人は錐体という色を見る3つのセンサーで赤緑青それぞれを認識しています。少数色覚の人の多くは、遺伝的にこの中で赤か緑どちらかの働きが健常者に比べて弱い状態となります。

「弱い」と表現しましたが、それは体調によって異なるようなものではありません。ずっと一定です。

つまり、その色の見え方には常に法則性があるということです。

法則性があるのであれば、必ず特性を把握することができます。
まずは自分の特性を注意深く観察すべきです。

よく分析してみると、意外と『困る範囲』は狭い可能性もあります
ある一定の組み合わせに気をつけていれば、ある程度のエラーが防げることもあるかもしれません。

自分の苦手な色の領域を洗い出す

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手法は人それぞれですが、私の場合は絵の具を混色したり、お絵かきソフトで様々な色の組み合わせを作って見比べて識別ができるかどうかを繰り返し確認しました
カラーチップを並べてみるのもいいかもしれません。

「ギリギリ見分けられるけど、ちょっと時間がかかる」という境目があったりすることに気づいたりしました。

その差異がどこにあるのかを、注意深く観察し、覚えておきます。もし、次の機会にその小さな差異を見つけられれば、誤回答率は下がります。これは単純に色を観察する精度を上げるやりかたです。

配色の知識を増やし続ける

これは効果的です。

デザイナーは無作為に色を選んでいるわけではなく、環境や時代、ターゲットに合わせて選んでいます。

つまり、同じシーンであれば同じような色彩構成が選ばれる傾向にあるはずですから、その組み合わせを覚えていきました。これは少数色覚かそうではないかに関わらず、デザイナーとしては効果的な観察方法だと思います。

自分は街中で様々な色の組み合わせを観察するようにしています。このとき、前項で把握した、自分の苦手な領域の色ももちろんあります。

自分の作ったものは自分が完全にコントロールしているので何色か聞かれて答えることはできますが、街中の色は何色と呼べばいいのかわからないものが数多くあります。

そういうときは、多数色覚のひとに「これって何色って言う?」と確認します。今でも私は身近にいる、信頼できる人に聞いています。

例えば、日本の家の外観にありがちな、淡い色って難易度が高くないですか?自分の場合はうすい緑色なのか、うすい灰色なのかを見分けるのがかなり難しいです。

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ただ、数多く色々な建物の色を把握していけば、「この地域ではこういう色が多いな」と傾向は掴むことができます。そうなると、誤回答率が下がっていきます。ついでに、「こういうときはこの色を使えば良さそう」というデザイナーとしての知識の蓄積にもなります。

デザイナーを目指す少数色覚の人が周りにいる方は、是非この識別の作業を手伝ってあげてください。

アドバイスや感想は言わなくていいです、というか多分邪魔なので言わないほうがいいです。

傾向を掴むためには、数多くのパターンを観察する必要があります。一つ一つの色がわかるかわからないか、という視点で見ていないので、いちいちリアクションされていたのではキリがありません。

淡々と「これはどちらかというと何色だと自分は思う」という認識だけを伝えてあげてください。

また、その色と隣り合う色に使われているのはどんな色が多いのかも把握しておくのも効果的です。もしその色がわからなくても、隣り合う色で推察できる可能性が増えるからです。

聞く相手がいないときは、スマホで写真を撮っておいて、あとでカラーピッカーで調べたりしています。このあたりはまた別の記事を書きたいと思っています。

身の回りのデザインで使われる配色は、ある程度の決まったものが多いはずです。多くの場合が学習で見通せることができ、一般的なデザイン業務をこなす上での最低限の誤回答率にまで下げることができると考えています。

まとめ

初めて自分のしてきたことをシェアしてみましたが、いかがだったでしょうか?ぜひ他の少数色覚デザイナーの話も聞いてみたいと思います。

「大変そうだな」と思うかもしれませんが、そもそもデザインで食べていこうとすると、少数色覚だろうが多数色覚だろうが、一生知識やスキルをアップデートする宿命にあります。

だったら、デザイナーとしての観察力を鍛えるいい機会だと捉えたほうがポジティブです。

デザイナーは目で見た色が何色なのか言い当てる職業ではありません。

重要なのは、色が健常者と同じように見えるかどうかではなく、健常者にも同じ印象を与える色彩構成ができるかどうかです。

多数色覚の人よりも不利なことは確かですが、ある程度は学習でカバーできます。言ってしまえば、カラーコーディネートの本を一冊まる暗記してしまえば、ほとんどのデザイナーよりも色の組み合わせには詳しい人にはなれるでしょう。

諦めるのはまだ早いです。

この記事が、少数色覚でデザイナーを志す人の役に立てば幸いです。

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ほうじ | 少数色覚デザイナー
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