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仮)金融商品基礎講座 #1

(とりあえず公開していきますが、全体を作成しながら適宜修正を加えていきます。)

1.金利とは?

 金融について一から勉強を始めるのであれば、まずは「金利」について理解する必要があります。単語としての「金利」を聞いたことがない人はいないと思いますが、改めて「金利とは何か?」と問われたらどう答えますか?

 ご存じのとおり、金利は年率〇%というように百分率で表記されます。金利が年率5%だった場合、100万円を1年間借りると

 100万円 x 5% x 1年 = 5万円

に相当する金利を支払う必要があることは説明するまでもないでしょう。ここで、借りた金額(100万円)のことを「元本」、元本に対して金利を乗じて算出した金額(5万円)のことを「利子(または利息)」といいます。

 言い方を換えると、1年間という期限付きではあるものの、利子(5万円)を支払えば元本(100万円)を「今」手にすることができる、ということになります。

 お金の「借り手」から見れば、金利が下がれば、借りる際の利子負担が減ることから、借りたい意欲が高まる一方で、逆に金利が上がれば借りたいという意欲は下がるため、金利はまさに「お金の値段」を表しているといえるでしょう。

 「借り手」の反対側にいるのは、「貸し手」です。お金を持っている「貸し手」はお金を貸し出すだけでなく、金融商品への投資でも利子等を稼ぐことができますが、お金の値段が高い、つまり金利が高いほど多くの利子が稼げるため、投資へ意欲が高まると考えられます。

 世の中には、お金がないので借りたい人(需要)と、持っているお金を貸したい人(供給)が常におり、最終的に需要と供給のバランスが取れる金利水準こそが「市場金利」ということになります。

 金利については「借り手」の立場から話がスタートしましたが、以降では、「貸し手」または投資家として利子を受け取る側に立って話を展開していきます。

 例えば、金利が年率r%のときに元本Pを1年間運用した場合、1年後の投資成果は

 P(元本) + P * r(利子) = P(1+r)・・・①

で表すことができます。つまり、金利rで運用すると、元本Pは1年後に(1+r)倍に成長することを意味します。①式は、1計算期間後の投資成果を表す式として今後も頻繁に登場しますので、頭に入れて次に進みましょう。

2.単利と複利

 アメリカの金融教育では、金融におけるもっとも重要な概念は「Interest on Interest」であると教えています。一般的には、interestという単語は「興味、関心」という意味で理解している方が多いと思いますが、金融用語としてのinterestの対訳は「利子」です。そうなると、「Interest on Interest」は「利子に対する利子」ですから、利子を再投資して得られる利子、つまり「複利」のことを意味します。

 金利(r)が年率5%のとき、元本(P)100万円を5年間運用(≒貸付)した場合の投資成果について考えてみましょう。1年間に受け取る利子は

 P * r = 100万円 * 5% = 5万円

であり、5年分の金利を受け取るのであれば

 5万円 * 5 = 25万円

これに元本100万円を加えた125万円でしょうか? この式は5年分の受取利子を単純に合計した「単利」の考えに基づいたもので、「利子に対する利子」が考慮されていないため、金融の世界では正しい計算方法ではありません。

 単利計算は実際の感覚(少額の利子や配当をいちいち再投資しない)に近い結果かもしれませんが、稼げるはずの利子を稼がないのは損と考え、合理的な行動を前提とする金融の世界では「複利」での計算を基本とします。

 では、上例を複利で計算するとどうなるのか確認してみましょう。金利がrのとき、元本Pの1年後の投資成果は①式より

 1年後の投資成果: P (1+r)

ですが、2年後の投資成果は、1年後の投資成果を「2年目の元本」とするため、PにP(1+r)を代入し

 2年後の投資成果: P(1+r)*(1+r)=P(1+r)^2

となります。つまり、複利の計算は、1計算期間(ここでは1年)ごとに(1+r)倍した投資成果を求めればよいので、n年後の投資成果は、

 n年後の投資成果: P(1+r)^n

で表すことができます。ここで、P=100万円、r=5%を代入すると

 100万円(1+5%)^5 = 127.628万円

となります。単利で運用した結果は125万円でしたから、複利で運用したことで5年間で2.628万円の差が生じたことが分かります。

 このように複利運用は、利子対する利子が積み重なって単利運用を上回る成果を得られるわけですが、その差は、金利が高いほど、また投資期間が長くなるほど、大きくなります。

 下のグラフは、金利が年率5%のときの単利と複利の運用成果を比較したもので、投資期間が長くなるほど単利との差が広がっている様子がお分かりいただけるかと思います。グラフの元データも添付していますので、金利を変更するとどうなるかはご自身で確認してみてください。

年率5%での投資成果 単利 vs. 複利

 このように、運用期間中のキャッシュフロー(受け取った利子など)を再投資するか否かは最終的な投資成果を大きく左右します。金融の計算においては、期中のキャッシュフローは常に再投資するという前提で考えるということを理解しておいてください。

3.その他の前提条件

 複利で計算をするというルール以外にも、金利の話を進めていく上で、いくつかの前提条件があります。文章の冗長化を避けるため、先に主なものを挙げておきます。

前提条件① 貸したお金は必ず回収できる
 利払いと元本の返済は予定通りに履行されることを前提とします。専門的な表現を使うと、特に指定しない限りは、信用リスク、つまり貸し倒れリスクは考慮しません。信用リスクを伴うケースは別途扱います。

前提条件② 税金はない
 複雑な計算を避けるため、利子や値上がり益に対して通常課せられる税金等は考慮しません。また、利子の支払い(利払い)は、計算期間の最終日に行われます。
 
前提条件③ 利払いは年1回
 金利を表示する際、正確には、年率〇%(年〇回利払い)としなければ、実際に利子をいつ受け取ることができるのかが明らかではありません。年1回利払いであれば、投資をしてから1年後の応答日に利子を受け取るのに対し、年2回利払いは、1計算期間が半年となるため、投資から半年後と1年後の応当日に利払いを受けることができます。本稿では、特に指定しない限り、利払いは年1回を前提として計算します。


#2につづく


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