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やさぐれているときこそ、ゆっくりススメって教えてくれた話
現在は3か月に1回、わりと大きい病院に通院しており、その時の話。
(最近バス停位置が変わって、無駄な動線がなくなりありがたい)
いつも予約時間の1時間前に検尿・採血をして
先生と話すタイミングで結果発表されます。
なので検尿・採血完了してから1時間は絶対待つことになります。
いつも、待っているときは腎臓内科エリアからは少し遠いけれど
景色がいい待合室で待っていることが多いです。
今回も気分転換しようと、その待合室へ。
いろいろなことが重なり、廃人になっていたので
イライラしていました。たぶん、良いオーラはなかったんじゃないかと思います。
そんな中突如、ひとりの老婦人に話しかけられました。
「コーヒーが買えないの…」
確かに隣にある自動販売機を使っているようだったけれど
買えないのか。
「あ、でもあなた忙しいと思うから大丈夫です、お水あるし…」
無料のお水は出てくるけど、コーヒーは買えないらしい。
まぁ本人がそう言っているなら、と笑顔で会釈。
老婦人もかるく会釈し、隣に座り、お水を飲んでいました。
けれど、ずーっと自動販売機を見ている。
コーヒー飲みたいんだろうな。
「もしよかったら、も一回コーヒー買ってみます?」
「いいんですか?忙しいんじゃないですか?」
「いえ、呼ばれるまでは暇なんです」
「じゃあ、お願いしちゃおうかしら!」
おばあちゃんの笑顔ってなんであんなにかわいいのだろうか。
なんだかんだで、祖母を思い出す。
♡♡♡
「100円じゃないの?ランプつかなくて、買えなかったの」
原因はすぐにわかった。
110円か120円だったのだが、100円だと思っていたらしい。
「コーヒーならあと10円ですね、10円玉、ありますか?」
小銭入れに10円玉が1枚だけ、入っていた。
10円玉を入れてみた。ランプがたくさんついた。
「これで、ランプついているところなら何でも買えるのね!」
かわいい。
「コーヒーもあったかいのと冷たいのとありますからね、どっちにします?」
「冷房きいているし、あたたかいのがいいわ」
ボタンを押してもらう。
あと30秒と表示。
「ああ、これあと30秒でコーヒーが出てくるのね!」
「ごめんなさいね、こういうの疎くて。お忙しいでしょうに」
「これ(呼出機)鳴るまで暇だから、大丈夫ですよ」
無事、コーヒーが出てきた。10分くらいだったろうか。
♡♡♡
「あなた電車は大丈夫?昨日JRで水浸しになって電車止まったって言ってたから怖くなっちゃって」
コーヒーを飲みながら老婦人は、いろんなことを話してくれた。
わたしは普段、話すスピードが早いと自覚している。
老婦人のスピードは多分普段の0.5倍速くらいだったような気がする。
タイミング違いすぎてイライラしそうなものだが、不思議と落ち着いた。
この世界観で、生きていくのもいいかもしれない。
そんなことを思っていた。
「あなた若いのにこんな大きい病院にどうしているの」
「3年前に長期入院してたんですよ、薬は今も飲んでいるので定期的に通っているんです」
「ああ、そうなの。今はとても元気そうで、よかったわ。
それでね・・・・・」
老婦人の住まい、過去の話をなんだかんだと聞いていた。
ずっと、心地よくて、唯一伝えたかったこともまぁいいかと
ふわふわとしていたら、わたしの呼出音が鳴った。
「こちらで、失礼します」
「忙しいのに、ありがとうね」
イライラが、忙しそうに見えたのかな、それならよかった。
唯一伝えてみたいな、と思ったこと。
「あなたにとっては、自動販売機とかはあまり使わないでしょう?」と言われたので答えようとしたら次の話題が来たので伝えられずじまい。
「そんなことないんです。長期入院してた時、コロナ渦真っ盛りだったので病棟から出ることができませんでした。そんな時たったひとつの楽しみが自動販売機でカップコーヒーを飲むことだったんです。
食事制限も当時はあったので、ただひとつ許されたコーヒーでした。
あの時の気持ちを思い出させてくれて、ありがとうございました」