見出し画像

IPOのP/L一覧 23.09



ライズ・コンサルティング・グループ  9168


本部管理・「コアメンバー+他+外部活用」のチーム形式が特色のコンサル
🖊 VCの打ち返し警戒が強そうだが、成長構造が明快で割安感も強い

吸収124億(海外20%)

<構造>
・売上はプレイヤー数*稼働率*単価
・採用にフォーカスしている
・高いマージン→高い給与→その給与水準及びリファラル/即決採用により仲介者を省略可能とすることで採用費を圧縮
・本部による管理+専門領域外人員を注ぎ込む形式で高稼働率を企図
→高稼働率が高いマージンの源泉

<業績>
・自己暖簾は小さくないが、ディスカウントされるほどの規模ではない
・今期計画は採用増に伴うコスト先行で利益率が低下。前期同様の利益率で評価すればEPSは50。この場合、850円のPERは17.0

<他>
・サンライズキャピタルの残が1,000万株近くあって、90日でLU解除
(同社で同じく90日解除であったベイカレントは解除日に向けて大幅に下落しており、規模からも打返し警戒は強く出るのではないか。ベイカレントの場合は解除後1年かけて売り切り、そこから評価が上方向に様変わりしていった)

インテグラル 5842


経営権を握る種のPEファンド運営
🖊 プリンシパル投資の利益確定時に還元を期待しうる

吸収207億(海外44%)

<構造>
・ファンド事業と自社による投資に切り分けて評価
・前者の管理報酬は安定的だが残高の成長率は高くない
(22.12は前年比マイナス)
・自社による投資は23.6時点でFV316億、原価76億としている

<業績>
・実績PER40倍と高く感じるが、上記の含み益実現時は実績PER29倍

<他>
・LUは5年と長い
・投資利益を確定する際、大胆に配当に回す可能性がある
(GCAサヴィアンは記念配や100%還元を行った実績あり)

揚羽 9330


採用、または企業ブランディングのコンテンツ制作
🖊 高く評価する根拠には乏しいが、テーマを評価すれば割高でもない

吸収7億

<構造>
・採用支援と企業ブランディング(従業員定着を目的)
・22.9は後者が35%増と伸張。後者のほうが利幅が大きく、マージン向上はこれによるもの
・23.9計画(3Qまで着地)では後者が20%増

<業績>
・増収率は20%程度を2年続けているが、それ以前は低成長
・コストは概ね人件費
・人手不足を背景に来期も同様の成長であるならばEPS84

ファーストアカウンティング 5588


OCR&照合作業サービスを大企業基幹システム向けにクラウド提供
🖊 コスト増加が引き続き限定的であれば成長に鑑みて割高感無し

吸収9億

<構造>
・売上は会計システム利用料
・売上の9割は月額課金で、契約期間は平均2.5年と長期契約が多い
・顧客企業の基幹システムに組み込むOCRサービスであり、照合作業まで行える
・この点で大企業(22.12において83社)を対象とするサービス
・従来は中国のBPOで処理していた企業群においてカントリーリスク・円安を背景に国内回帰の動きが見られるとしている
・11月に売上比率12%であるラクスとの契約が切れる
デジタルインボイスのサービスプロバイダー認定を受けており、まだ売上規模が小さいことから相応のインパクトが期待される
(大企業ユーザーでも、インボイス対応ツールは認められれば2年間のクラウド利用料が補助される)

<業績>
・増収率は70%、今期計画55%と非常に高い
・原価は労務費中心で、増収に伴い粗利率向上中
・販管費は広告費が僅かであることも寄与して増収に比し限定的な増加であり、このため販管費率は大幅に低下中
来期増収額を前2期(計画含む)の3→4から5、粗利率を62%→64.6%→66%販管費増加額を今期計画の1に対し1.25とすると、EPSは63となる(23.12計画は22)
・AI関連は受託開発系がほとんどであり、類似するダブルスタンダードなども含めてこれらは一部取引先への依存度が高い。本件にはそのような依存が見られず、広範な企業に月額提供している点で相応に高い評価が可能ではないか

<他>
・1.5倍=1,980円で解除されるVC持分が実質150万株・30億円分ほど残存
・吸収の3倍と大きな要素であるが、絶対水準としては克服可能

笹徳印刷 3958


紙パッケージや印刷物などの製造販売
🖊 安定企業だが、営業益ベースでは全く伸びておらず割安感は無い

吸収12億

<構造>
・売上はほぼ横ばい、よく言えば安定
・利益剰余金は50億弱と十分な水準であり長年安定した経営を行っていることは伺える

<業績>
・営業外利益における投資利益や保険解約益の影響が大きいため、営業利益*0.7で計算するEPSは今期予想で42=650円PER15.4

<他>
・配当性向は30%メドとしている
・42*0.3=14円=650円利回りは2.1%
・今期配当予想は18円、12月中間配当あり

ジェイ・イー・ティー 6228


前工程で使用する半導体洗浄装置
🖊 同業最大手スクリーンと同程度のバリュエーション

吸収75億(海外あり)

<構造>
・親会社は韓国サムスン系のZEUS
・主力はバッチ式洗浄装置=カスタマイズ可能
・バッチ式は半導体の微細化・高積層化により見直されている
・21年度のシェアは11%
・中国向け、韓国向けが半々

<業績>
・足下で逆張り的な韓国メーカーのメモリー積極投資の恩恵を受ける。同社を経由して中国メーカーという商流も存在
・実質的に中国向けのウェートが高いが、これらは規制対象となる先端分野ではないとしている。彼の地の半導体投資は22年に大きく縮減されたが23年に入り着実に回復を続けている

受注・受注残の推移(リードタイムは短い)

・2Q進捗率は低いが、韓国向けが下期にずれ込んでいるとのこと
・原価率は安定。部材高騰に対し海外を含む外注活用で対応
・販売費率は低下。代理店手数料が今下期は少ない見込
・公開価格の予想PERは11.9

<類似>
・洗浄装置トップのスクリーンも今期好調計画であり、PER11.6(9/8)
・同社も1Q進捗率が低く、2Q予想を小幅に下方修正しているが下期強気は期初から変わらず

<他>
・配当性向20%メド

オートサーバー 5589


業者向け中古車流通サイト。オークション代行、中古車売買仲介
🖊 減益がきつい見た目だが、今期計画は保守的である可能性

吸収61億(海外あり)

<構造>
・出品・落札・成約において手数料を受領
・オークション会場出品中車両・中古車販売店展示車両(業販可能)が半々
・最大手USSが運営するオークションでの取引代行・仲介が半分
・会費は無い

<業績>
・21.12までは堅調に拡大、22.12は20,21で新車不足の恩恵で伸びた反動
・取引台数ベースでは大きな反動
・売上としては収益認識会計基準適用の影響を除くと微減
・今期計画は「新車供給不足から来る中古車供給不足」を理由に特に上期を弱く考えていたとのこと。上期着地はまったく前年比で減っていないが、期初計画通りに据え置いているとの説明
→もしビッグモーター等の一部中古車販売業者が資金繰りを背景に中古車を大量出品するようであれば(かつ潜在ニーズに問題がなければ)、会社計画は尚更上振れる可能性も
・原価の多くは支払手数料で原価率は固定的
・減収予想のなか人件費は増加計画のため今期利益率は低下
・のれん償却は定額で年2.3億
(のれん・無形資産÷自己資本:0.4以下=財務リスク考慮必要性はない)
・のれん償却前のEPSは前期ベースで198=公開価格PER13.5

<類似>
・類似としてUSS、プロト、ブロードリーフ、シスロケ、オークネット、ファブリカが挙げられている
・USSの今期予想PERは19倍
・プロトは雑誌ベースの比率が高く、利益率が大きく劣後している。このためかPERは1ケタ
・ブロードリーフ、シスロケはシステム提供業者であり周辺事業者の設備投資に関わるところ
・ファブリカは中古車販売業者サポート事業であり、ビッグモーター影響が直撃している

<他>
・配当性向30%、23.12の55円は記念配込

オカムラ食品工業 2938


主に海外拠点で水産品を養殖+加工して国内中心に販売
🖊 販価低下が小さければ上振れ可能性、海外卸売は特需も

吸収20億

<構造>
・23.6まではコロナ以降の急激な販価上昇の恩恵が強かった
(販価上昇フェーズにあると粗利率が向上する。販価>加工部門の在庫原価となること、養殖部門の飼料代を十分に転嫁できることによる)
・寄与は大きくないが海外卸売事業として中国以外のアジアにおける日系スーパー・レストランへ自社・他社品の輸出も行う
・同部門は処理水以降の中国への輸出減少を見越した代替需要が追い風に
・水産・加工他社に比して利益率が高い

<業績>
・24.6は加工部門における期初在庫原価が高いこと+転嫁未達や販価下落を見込むため粗利率が低水準化するとの計画
※8/24にニッスイの24.3養殖部門利益が上振れて前年比12%増となる見込と報じられている
・販管費は人件費がメインで販管費率は固定的
・以上を踏まえて今期計画EPSは159、公開価格PERは10.5と低位
・水産他社のPERも概ね同程度

<他>
・24.6の配当計画は34円(公開価格で2.0%、配当性向20%程度)
・他社の利回りを参照していくとしている
(水産他社は概ね2.5%ほどで配当性向20%前後のため、現状では上振れ可能性は低い)

小型株、いまはとりわけグロース株の評価を業績面から行い、見た目のPERではわからない「成長性に鑑みて割安な銘柄」の発掘を目指しています。IPOセカンダリーなど。