ソシオネクスト (98%Exit)
(追記)
本文に記したEPS386円×アップサイドPER20倍である7,600円に達したためExit、初値3,835円
(追記)
①本文に記したEPS386円×アップサイドPER20倍である7,600円に達すればExit、②価格水準に達しない場合、ロックアップ解除の1ヶ月前にあたる2月末でExit
10/12に上場するソシオネクストについて見てみます。
カスタムSoC(System on chip)を手掛けるファブレスメーカーです。
この事業領域は外販の市場規模が21年で100億ドル程度と非常に小さく、トップシェアはBroadcomで47%、他は林立しています。
「どんどん成長する」型の市場では無いと言えます。
同社の売上は設立した2015年から2021年3月期までほとんど伸びておらず、22年3月期・23年3月期(計画)になって急に大きく伸びています。
この推移から受ける第一印象は「半導体好況の恩恵を受けただけでは?」というところですが、そうではなく、従来は「旧型・汎用品向け・非先端分野・国内企業向け」の比率が高く先端分野への注力が為されていなかったところを「2020年3月期から変革」した成果の結実、という側面が強いです。
具体的には、
20年3月期に先端分野の商談獲得がスケールアップ
→21年3月期にかけて設計開発
→22年3月期・23年3月期に製品売上に至る、というステップを辿っています。
設計開発の売上を分解したデータでは、
「旧型・汎用品向け・非先端分野・国内企業向け」
→「微細化・先端分野向け・米国向け」へのシフトは足下でも更に進行中です。
足下、半導体市況ははっきりと在庫調整のフェーズにあります。
この影響が懸念されるところですが、同社のビジネスは「特定用途向け(主にデータセンター、ネットワーク、AR・VR、車)」に顧客のオーダーを受けてカスタマイズして設計し、完了後に「買取責任を伴う量産受注」を行い、出荷に伴って売上計上しています。
22年3月期の段階で「設計完了前に量産受注を前倒しで受けることが多かった」こと、「その部分の売上計上は1年程度かそれ以上あとになる」としていることから『半導体市況の影響が出るとしても、23年3月期はその発現には至らず、計画達成確度は高い』と考えられます。
リードである設計開発売上について見てみると、
21年3月期:229.8億円
22年3月期:281.1億円
23年3月期:310.0億円(計画)
となっており、24年3月期に向けたリードも十分と見て取れます。
ただし、設計開発をしても半導体市況などを背景として量産受注に至らない、あるいは数量が下方修正される可能性はあるため、来期については現時点で踏み込んで予想せず、第2、第3四半期の業績、特に商談獲得金額や設計開発売上のトレンドを見て考えた方が良いと思います。
コストは、売上増に伴って固定費率が低下する一方、TSMCを始めとするファウンドリに委託する生産コストの上昇から原価率は上昇(粗利率は低下)しています。
半導体市況の軟化から粗利率低下は和らぐ可能性もありますが、現状では売上が落ち込んだ場合は利益率が急低下してしまう構造です。
EPSは、23年3月期計画で386.1です。
想定為替レートは上期130円、下期120円としています。
(ただし、円安は生産委託コストの上昇も意味すること、そもそも小型株と違い機関投資家主導の相場形成となるサイズであることから、この点はサポート材料と認識すべきではないと思います)
配当性向は40%を掲げています。今期は160円、「3月期末一括」での配当予定です。
妥当PER水準を考える上で海外の同業を見てみます。
10/6時点の予想PERはトップシェアであるBroadcomが12.96、ソシオと同程度のシェアであるMarvell Technologyが20.91です。
過去の中庸的なPERはBroadcomが15ほど、Marvell Technologyが15-20ほどです。
事業構成に占めるカスタムSoCの比率からはMarvell Technologyのほうが参考になると思います。
同社の株価推移は半導体株として特異的で、半導体市況との連動性は高くない一方、スケールに乏しくトレンドが続きにくいように見えます。
予想PERは15-20が妥当だとすると、来期の業績は横ばいとしてまずはPER15の5,800円をイメージするというところかと思います。
それよりアップサイドに株価が展開していくには、「上場後の決算における、商談獲得金額や設計開発売上のトレンド好調」が要件になると思います。
株式需給としては、従業員に幅広く配分されているストックオプションを除くと富士通、日本政策投資銀行、パナソニックの3社が全ての株式を保有しています。売出で1,829万株を放出し、売出後の保有株数は1,536万株になります。
ロックアップは23年4月9日までで、解除後は段階的に売却して行くとしています。
先の話にはなりますが、23年3月に入ると配当取りの買い・売り渋りとロックアップ解除警戒の売りが拮抗するような構図になりやすい時期となります。
一方、プライム市場に直接上場するため、上場翌月末の前営業日である11/29にはTOPIX組み入れに伴うパッシブ運用資金の買い需要が機械的に発生します。凡そ公開株数の8%程度、146万株ほどの需要と推測します。
小型株、いまはとりわけグロース株の評価を業績面から行い、見た目のPERではわからない「成長性に鑑みて割安な銘柄」の発掘を目指しています。IPOセカンダリーなど。