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FPパートナー (95%Exit)

(追記)
1月発表今期計画の営業利益44億×0.7を最終益としたEPS×本文に記したアップサイドPER20倍にあたる5,360円に達したためExit、初値2,750円

(追記)
1月発表今期計画の営業利益は44億。×0.7を最終益としたEPSは268。本文に記した個人予想EPSは260-290、フェアPERは15倍。アップサイドPER20倍にあたる5,360円に達すればExit

9/22に上場するFPパートナーについて見てみます。

同社は生保中心の乗り合い代理店で、実質的な立ち上がりから10年ほどで売上高200億、社員1,800名といったスケールに成長しています。立ち上がりから大きかったわけでも、M&Aなどで成長したわけでもなく、継続的な成長によるものです。また、特段のバックボーンを有するわけでも無く、公募前の株式は実質的に100%創業社長と役員が所有しています。

なぜ継続的にスケールアップできたのか?

同社は稼いだキャッシュを徹底的に「営業しやすい仕組みの構築」に投資し、それが結実した構図に見えます。「仕組みの構築」とは具体的には以下の取り組みです。

▼認知度
・グレードの高いタレントを用いたブランディングCM
・訴求性の高いウェブサイト
・ブランド名(現在は「マネードクター」)
▼直接の集客
・「集客は会社、営業は販売、の分業」を掲げている
・auと子会社を運営して共同募集を行うなど、提携チャネルからの集客
・自社サイトからの集客(伸びているが水準はまだ低い)
▼拠点の拡大
・全都道府県に拠点を確保

収入水準が高い層も多い一方、新規顧客を開拓し続けることは困難なテーマであり、一般に定着率が低い業界です。
上述の仕組みは猛烈なスピードで社員を獲得できた大きな根拠になっているのではないかと思います。

こうした社員数拡大の仕組みに加えて、法改正により代理店の損益分岐点が高くなって廃業代理店が増加したことも寄与したようです。

今は投資をしてもキャッシュが残る段階となっていますが、2020年も含めて契約残高の成長は20%ペースを維持しています。

今期計画の営業利益率は13.8%です。2期前は3.9%、前期は8.3%でした。
これは固定比率の低下に加え、原価率の低下も寄与しています。
原価はほとんどが報酬、残りが見込客情報取得費で、出来高払いとはいえ固定給もあることから1人当たり売上が伸びると原価率が低下する仕組みになっています。また、会社が集客する部分は共同募集も多いため効率は低いと考えられます。
ここ2年の入社/退社の人数は年間概ね450人/200人です。
原価率は74%⇒70%⇒今期計画66%で、報酬÷売上は67%⇒63%⇒今期計画59%です。

23.11の業績はリニアに20%増収として、引き続き原価率が低下する場合で営業利益率17%・EPS290円をイメージ、一方原価率低下がストップする場合は固定比率低下だけが寄与して営業利益率15%・EPS260円をイメージします。

保険代理店のバリュエーションとしては、アドバンスクリエイト、ブロードマインド、また以前上場していたNFCあたりを参考にすると、過去概ね15倍前後で評価されている印象です。
ただ、いずれの株価も変化に乏しく、下方硬直性は高いものの業績好調時にもそれに見合うだけ上昇するわけでもない、といった印象です。

また「ほけんの窓口」は伊藤忠が14年から買い進めていますが、投資額は非公表です。新聞報道などから類推すると直近では概ね予想PER10-11での投資と推測しますが、不正確です。いずれにしても非上場ですしシナジーを追求してプレミアムを付与しているような案件ではないため、上場株として見た場合にはもっと高いPERだろうと思います。

最後に、株式需給などです。

同社は資金調達を行ってこなかったこともあり、公募前の発行済みはピッタリ1,000万株で、全て実質的に創業社長と役員が所有しています。

上場後、OA分を含めた固定株比率は71%になります。
プライム昇格要件は65%ですので、70万株ほど未達です。
ロックアップが外れる3月下旬以降に順次売却して流動性を高めるとしています。
プライム昇格要件ということでは、収益基準で「最近2年間の利益合計が25億円以上」というものがありますが、これも現在は16億円と未達です。
今期計画は20億円ですので、本決算発表となる1月には達成される見込みです。
3月下旬以降に売出あるいは分売を行えば、そこでプライム昇格要件が満たされるということになります。
プライム昇格となればTOPIX組み入れ需要が発生します。この影響は日頃売買が少ない銘柄ほど影響が大きく出やすいと考えられます。
また、今年4月のプライム上場基準厳格化以降、昇格はメルカリ1件、申請はエイピア1件です。昨年は年間12件、一昨年は年間30件もありましたが、現在は格段に「希少性」が高まっていると言えます。

事業上の死角としては、制度変更や顧客トラブル可能性のほか、NISA拡充内容によっては変額保険の売れ行きへの影響が考えられます。変額保険は同社の売上にとって重要である可能性が高く、変額保険メインであるアクサを最も販売しています。
同社は2020年の売上が伸びなかったのですが、これはコロナで対面できず契約が伸び悩んだのではなく、保険会社からの支援金が伸びなかったからです。
支援金は保険会社との契約であり背景は開示されていませんが、2020年はアクサ(変額保険メイン)の売上比率が高くないように見えます。これはコロナによる提携先経由の見込客数不振も影響したのかもしれません。
NISA拡充によって同じことが起こる可能性もあります。
ただし、NISAの新制度はいずれにしても2024年のこととなります。

小型株、いまはとりわけグロース株の評価を業績面から行い、見た目のPERではわからない「成長性に鑑みて割安な銘柄」の発掘を目指しています。IPOセカンダリーなど。