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雪の柑橘、貴方へ目玉

僕は蛙の後ろ脚を喰った。それは鉄の味がして、ああこんなもんかと思ったんだ。それだけだった。お前は食べ方を教えてくれただけで、味も調理の仕方も教えてくださらなかった。

人それぞれですから、私は好きなように生きるのです。

不快な顔をしたあなたが般若になるころ、夢の列車は虚無へ走った。特等席に着いたあなたは酷くやつれたような顔をしていた。僕の後ろに座った老婆が噂話をしていたが、誰も聞いていなかったし、僕は昼間に食べた菫の硝子の味を思い出してふけっていました。

夜の雪が降るころの思い出は、むかしの隠れ家で僕抜きの家族がお肉をほおばる姿を見ていることでした。実験室から逃げ出したはだしの足はあかぎれていて、それよりもその光景の方が心臓を爛れさせました。

遠くの方でしろい野犬が吠えています。飼いならされると瞳はアオイロに変わるのですが、社会へなじむには窮屈そうでした。

ちらちらとずうと雪が降っており止むことを見たことはありません。肉の解体処理場にはたくさんの人間がおりました。鉄のコンクリートにかき集められた子供が6-8で束になっております。白い白衣の殿方が冷たい目をしながら僕を見つめていました。女の研究着のほうは手袋を忘れたことでわめいていたらしく、別の殿方に押さえつけられておりました。

なんでか僕が逃げることができたのは、イエスとノーの使い分けが丁寧であまり叫ぶことをしなかったからだそうです。

それはそれは大切にされておりましたが、重苦しさに生えた羽根の使い方さえ分からないまま、次第に青い目になる僕を反射された僕が見守っておりました。

首に括りつけられたリードも手錠も足かせも、しろいお兄さんたちの気まぐれで緩められ。痣の場所だって、髪についた薬品の落とし方もいちいち伺うしかなかったのです。

お話の言葉遊びは、5で青。右で上へ、そうしてお話、次は黄色。

眩暈がしたなら眠り場所はここのお布団。綺麗に整えられた、価値観の綿菓子が、苦手だと言えずじまいのチョコレートも。泣いて詫びてもアイスだけは温かいものが最後まで出てこなかった。

77月の10日目にたった1回だけ星が流れる夜がありました。町から街灯が消え惑星もその時だけ次元に隠れてしまう不思議な時間が。

そんな輝かしい夜に誰かのご厚意で僕だけお庭に出たのです。5-6人のお医者様と白い人がいました。一瞬の欺きとほんの少しの好奇心がいけなかったのでしょうか。

竜の甘言に耳を貸して、見たこともない鱗や匂いが僕のこころを掻き立ててしまったのです。

目を見開いた彼らの顔が忘れられません。僕は馬鹿ですから、言ってくれないと分からなかったのです。

滅菌されていない世界の息苦しさと、リードの意味がほんの少し分かってきた僕は大人になれたでしょうか?

けれど僕らのおいしゃさま、あなたが僕を見つめる目と爬虫類のあの真っ黒なお目眼が

どことなく似ており、懐かしさを感じるのです。

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紅雨
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