深夜のテンションでhitomiの『LOVE CONCENT』をむさ苦しくレビューするの巻
どうも。絶賛鬱病からの不眠症に罹患している卯月綺華(カツペソ)です。
TBSの名作ドラマが大量に無料配信されるというニュースを見てhitomiパイセンの『GO MY WAY』という曲を思い出しました。
『GO MY WAY』は『弁護士のくず』というTBSの木曜ドラマの主題歌として使われた楽曲です。ロック期のhitomiパイセンとしては割と後期の分類に入るかもしれません。
そして、その楽曲が収録されているアルバムは『LOVE CONCENT』というアルバムです。ちなみに渡辺善太郎プロデュース最終作。
というわけで本題です。
今まで私はhitomiの名盤3部作にまつわる怪文書をnoteに書いてきました。
しかし、平成14年度の紅白歌合戦で『SAMURAI DRIVE』を歌った直後に活動休止。(一応公式では子宮筋腫摘出ということになっていますが私は自分のベスト盤がCCCDで出されたことに抵抗を覚えたんじゃないかと思っています)
そして1年間の休養を経て平成16年に『ヒカリ』をリリースして活動再開。この時にプロデューサーが渡辺善太郎から根岸孝旨に変わりましたがやはり善太郎サウンドを求めていた旧来のファンからは不評。結局CCCDも相まって糞盤と名高いアルバム『TRAVELER』をリリースして根岸孝旨プロデュースは終了してしまいます。(一応先行シングルの『心の旅人』は渡辺善太郎が編曲に関わっていましたが)
hitomiを襲った不運はアルバムの不評だけではありません。エイベックスお家騒動です。
平成16年といえばちょうどエイベックスの稼ぎ頭である浜崎あゆみがワガママを言って年末音楽番組をボイコットしたのは有名な話。そのワガママはやがてマックス松浦と依田巽のブレイキングダウンになり、アーティスト間の分断を招く結果となってしまいました。そうやって考えたらお家騒動の時期に活動休止していたDo As Infinityは神回避だったと思う。
そんなお家騒動を経て平成17年6月にhitomiは従来のロック路線を捨ててダンスナンバーである『Japanese Girl』をリリース。この際に彼女はプライベートレーベルとして「LOVE LIFE RECORDS」というレーベルを立ち上げています。今だから言えますが恐らくエイベックスはhitomiという存在を囲い込みたかったのでしょう。
当然ながら、私も『Japanese~』における路線転換には困惑したものです。でもそれが「エイベックスのやり方なんだろう」と思って友人のS.N氏(中学校の同級生)と共にそっと見守っていたのは事実です。
その後、「やっぱりロックやりたい」ということで平成18年5月にロックナンバーである『GO MY WAY』をリリース。これが結果としてhitomiの最後の輝きとなりました。(当然ドラマ主題歌というのも大きかったが)
アルバムリリースにあたってプロデューサーとして渡辺善太郎を復帰させ、『GO MY WAY』と『アイノコトバ』を核として創り上げたお家騒動後のhitomiの総決算、それこそが『LOVE CONCENT』だと思っています。
入手日:2021年8月1日
入手場所:ブックオフプラスなんば戎橋店
入手価格:550円
解説
2006年9月27日発売。(ちなみに発売日は京極夏彦の『邪魅の雫』のノベルス版と1日違いで友人のS.N氏とどっちを買うかで悩んだ)
全13曲で、事実上渡辺善太郎が関わった最後のアルバムとなっています。
いわゆる「エイベックスお家騒動後」の楽曲を丸ごと濃縮して13曲のうちタイアップ曲が全部で6曲。しかしシングル曲以外の楽曲にピンとこないのが玉にキズです。(辛うじて『change yourself』と『Day-O』は隠れた名曲としてファンの間でも人気が高いのですが)
Spotify
01 Loveholic
作曲:渡辺善太郎
編曲:渡辺善太郎
インスト曲。タイトルを直訳すると「恋愛中毒」。
hitomiの恋愛観をこれでもかとモノローグに詰め込んでいます。本当に愛って何でしょうね?
02 アラビアン・ドリーミング
※くどいようですが基本的に作詞はhitomi本人が行っているので一部を除き割愛させていただきます。
作曲・編曲:AVANT GARDE(マジレスするとhitomiのソロプロジェクト)
hitomiのモノローグからエキゾチックな楽曲への流れは多分善太郎さんじゃないと出来ないと思う。
それはそうと歌詞を深読みすると「アラブの王様がとある娘に恋をしたけどその娘が身投げをしてしまうので意識を取り戻すための儀式を行う」というヘビーな曲だったり。
03 アイノコトバ
作曲:mo'doo-
編曲:渡辺善太郎
タイアップ:日本テレビ系列『スポーツうるぐす』2006年9月度テーマ曲
いかにもスポーツニュースのテーマ曲と言った感じのアップテンポな楽曲。しかしある意味先行シングルの方が有名かもしれない。(カップリングにシアターブルックの名曲『ありったけの愛』のカバーが収録されているため)
彼女の恋愛に対する決意を歌として表明している。とはいえ歌詞の一人称が「僕」なので男性目線から見た曲なのは確か。
04 change yourself
作曲:hitomi
編曲:渡辺善太郎
タイトル通り「自分を変えていこう!」というメッセージを込めた楽曲。彼女が自らギターをかき鳴らして作り上げた。(編曲はもちろん善太郎さん)
ダンスナンバーの楽曲が多い本アルバムでは珍しくロック調の楽曲になっている。ちなみにドラムはカースケさん。
05 恋愛飛行
作曲:北野正人/hitomi
編曲:渡辺善太郎
タイトルこそ「恋愛飛行」だがどちらかと言えば「男女の逃避行」っぽい曲。(多分「飛行」と「逃避行」をかけたダブルミーニング)
印象的なバックコーラスは彼女がライブツアーでお世話になっている真城めぐみさん。歌詞の通り通り雨の中で聞きたくなること請け合い。
06 Love Angel
作曲:AVANT GARDE
編曲:渡辺善太郎
タイアップ:ユニリーバ・ジャパン「モッズヘア」TVCMソング
天使の羽が生えた彼女のジャケ写が印象的な楽曲。妙にエキゾチックなイントロも印象的。
ちなみにこの楽曲が使われているモッズヘアのCMで彼女はいろんな髪型にチャレンジしているが、とにかく「アフロのhitomi」は色んな意味で必見。S.N氏曰く「ロンハー見てたらhitomiが理科の実験に失敗してた」とのこと。(火曜9時時代のロンドンハーツのスポンサーがユニリーバだったのでCMが流れまくっていた)
07 GO MY WAY
作曲:本間昭光
編曲:渡辺善太郎
タイアップ:TBS系木曜ドラマ『弁護士のくず』オープニングテーマ
ストリングスとホーンセクションの相性が抜群に良い快作。ドラマ主題歌というのも相まって疾走感あふれるロックナンバーとなっている。MVでの髪型チェンジ(ロングヘア→ショートヘア)も印象的。
エイベックスが配布していたフリーペーパーでのインタビュー曰く「LOVE ANGELの歌詞を書いていた頃に色々と自分が考えていることとエイベックスが考えていることの間に矛盾点があって『やっぱり私はロックがやりたい』と思って善太郎さんと相談した」とのこと。
ちなみに『huma-rhythm』に収録されていた『果てしない悲しみ』は本間昭光作曲だが編曲も彼が手掛けているため本間昭光×渡辺善太郎という組み合わせは割とレア。それでもってロック路線後期のhitomiの楽曲の中では随一の名曲である。
08 CRA"G"Y☆MAMA
作曲:AVANT GARDE
編曲:渡辺善太郎
タイアップ:USEN「GYAO!」TVCMソング
あまりにも過激な歌詞なのでNHKのポップジャムで初めて曲を聞いた時はドン引きした記憶がある。
タイアップの欄でも述べている通りGYAO!がサービスインした当初のCMソングということでサイトでMVが見られたのは有名な話。GYAO!での失敗がU-NEXTにつながっていると思うと無駄じゃなかったと思う。
09 Day-O
作曲:渡辺善太郎
編曲:渡辺善太郎
タイアップ:ジャックスカード TVCMソング
当たり前の話だが本アルバムにおいて一番善太郎さんの色が出ている楽曲。ボサノバ調のギターとフルートが心地よい。
ジャックスカードということでうたばんでCMが流れていたのは言わずもがな。CMに出てくる愛犬は彼女が当時飼っていたブルドッグである。(名前はブッパくん)
10 LOST emotion in DARKNESS
作曲:hitomi
編曲:渡辺善太郎
『GO MY WAY』のカップリング曲。そして『Japanese Girl』~『アイノコトバ』の間に発売されたシングルのカップリング曲で唯一アルバムに収録された楽曲でもある。マジレスすると『Love Angel』の『"Escape"』と『CRA"G"Y☆MAMA』の『タイムオーバー』は本アルバムには未収録。カバー曲である『Japanese Girl』の『Venus』(ショッキング・ブルーのカバー)と『アイノコトバ』の『ありったけの愛』(シアターブルックのカバー)は権利上の関係でハブられた。
情熱的なギターとシンセが目を引く楽曲であり、これも彼女がギターをかき鳴らして作り上げた。
11 Japanese Girl
作曲:AVANT GARDE
編曲:渡辺善太郎
タイアップ:music.jp TVCMソング
エイベックスお家騒動を経て「新生hitomi」を打ち出すためにリリースされたダンスナンバーなのだが……正直言ってポップジャムでフルサイズを聞いた時にこの楽曲を受け入れられなかったのは事実である。
タイトルを直訳すれば「日本の女の子」ということになるのだが、ある意味『CANDY GIRL』に対するアンサーソングとも受け取れるかもしれない。
歌詞にある「キミのLOVE LIFE STYLE」というフレーズが印象的。
12 LOVE CONCENT
作曲:AVANT GARDE
編曲:渡辺善太郎
hitomi名物「アルバムのタイトルをそのまま曲名にしました」はここでも健在。(ちなみに本アルバムのリードトラックはコレではなく『アイノコトバ』)
タイトル通り男女のつながりを「コンセント」に例えた曲である。って考えると意味深。
13 so you
作曲:hitomi
編曲:渡辺善太郎
ピアノとストリングスが印象的なスローバラード。まさしくアルバムのシメにふさわしい。
『LOVE CONCENT』と同様に歌詞を深読みすると結構意味深だがそこは御愛嬌だろうか。
終わりに
いわゆる「渡辺善太郎期」のhitomiは
・thermo plastic(1999年)
・LOVE LIFE(2000年)
・huma-rhythm(2002年)
・LOVE CONCENT(2006年)
という4枚のアルバムで分けられます。(7thアルバムである根岸孝旨プロデュースの『TRAVELER』はノーカン)
散々述べてきましたが渡辺善太郎は本作を最後にhitomiの元を離れていきものがかりのプロデュースへとシフトします。この時点で善太郎さんは賞味期限が切れたhitomiという存在を見限っていたのでしょう。(当然エイベックスお家騒動も少なからず影響していそうだが)
でも、善太郎さんがhitomiに対してもたらしたモノは計り知れないモノだと思っています。というか善太郎さんがいなければ小室哲哉の元を離れてそのままフェードアウトしていたでしょう。
そして、なんやかんやあった末に『LOVE 2000』のアンサーソングである配信シングル『LOVE 2020』は善太郎さんが編曲を手掛けました。そしてこれがhitomiにとって最後の渡辺善太郎プロデュース楽曲となってしまいました。(渡辺善太郎は令和3年7月に亡くなっている)
改めてになりますが、渡辺善太郎さんの御冥福をお祈りいたします。彼がいたからhitomiはロックシンガーとしてやっていけたんだと思います。
Special Thanks : 音楽の授業でhitomiの話に付き合ってくれた中学校の同級生S.N氏