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児童ポルノ禁止法の未来2
表現の目的による分類と規制の必要性は割とシンプルだった
では、表現の程度、違法とされる児童ポルノの定義は?と言う話
大前提として、規制とは、問題ない作品を作っている人がごく一部の犯罪者のせいで巻き込まれ、規制されないためのものでもあることを言っておきたい
スポーツ選手のユニフォームが際どいものにならないようにすることも、露出狂を捕まえることも、公共の場では公許良俗に反しない服装をする、と言う一文でカバー出来る
※基本的に、調べながらつらつら思考の軌跡のままに書いて最後に自分なりにまとめるためのものなので長いです。シリーズで書いて結論は最後の記事になることもあります。関連リンクを貼っていくので、そちらのリンク集かなにかと思ってください。
■児童ポルノの定義
→現行法
≪当該条文より引用≫
"この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの"
⇒改正予想
実在・非実在の区別を無くし、代わりに年齢や性的かどうかの基準を厳密にする
目的からゾーニングやレイティングは不適当だが、既存作品の公開にあたってマスクや注意書きの義務化はありかもしれない
記載順を前後するけど、ゾーニングやレイティングは何歳なら読んで良いのか、と言う事だけど、成人ものと違って児童が対象である限り誰でも不可なので、これは不適当
既に発行されたものは処分が適当とされているけど、マスクしたり改変したりすれば出版出来るかも
実在・非実在については「児童の」と言う文言が特定個人を指すものとして、該当する個人、被害者が居ない創作物を除外する解釈になっているらしい
罰則の方には被害者の有無は当然関係するんだけど、犯罪抑止や青少年の健全な育成の方は別の考え方が必要となる
ここの認識について、反対派は抑止効果に対する考え方が酷い人が多い
起きてからでは取り返しが付かない被害が生じる事について、かなり鈍感だと感じる
同法成立時、改正時の附則や会議録を見ると、ちょっと過剰であってもやってみて、数年経っておかしかったら見直すべし、と言う形にされていて、国会レベルでは抑止効果を大切にしているのは確かなので、倫理観の無い人は無視出来るのだと思うけど
そして世界的に、国連、G7、EU等の考え方は、「漫画を見てやった」と言う、フィクションとノンフィクションの区別を付けない犯罪者が現実に居る以上、分ける事に意味はないと言うものが多いように見える
自分に置き換えても、挿し絵のない小説に脳内でイメージの近い俳優をあてる事は容易く、ポルノ漫画にポルノ写真の子供をあてて、身近な子供や声優の声を設定することは可能だと思う
海外での法整備の際には多数論文が出ているが、その中にもあった
■The Relevance of Fantasy in Serial Sexual Crime Investigations (April 2001)
◼️The Canadian Supreme Court
カナダ最高裁での判決
また、子供の頃に接した変質者にも、「◯◯みたい、可愛い、可愛い…」とか言われたので変な実感がある…(なんだかは知らない。当然、子供が児童ポルノやらなんやらに詳しい訳はないし、今も興味はない)
なので、実在・非実在の区分を取り払うためのデータや論文を用意するのは問題なく、むしろ、それをやり過ぎないためのデータや想定が必要なのではないかと思う
アメリカのミラー基準などがあるが、やはり性的に見えるかどうかや芸術性についての判断であり、判断するのは特定のコミュニティではなくアンケート的に平均的視点を割り出す方法だ
行き過ぎる懸念もあるが、時代に合わせた基準に変動するメリットもある
あと芸術と認めるかどうか、アンケートなら単に芸術的ですか?って事になるけど
細かく見ていくと既に別の記事に書いた、
「主題に対してその表現必要?」ってアート系の恐怖のガン詰めの事で、「水◯黄門のドラマって勧善懲悪がテーマだけど、お銀さんの入浴シーン必要?なんで?この尺なら他の要素入れた方が内容深くならない?時代考証あってる?なんでこのセットなの?必要だとしてその角度で写す必要ある?放送時間ここで大丈夫?確認者と最終責任者だれ?」って事である、つらい…
ここは、反対派賛成派ともにアートが身近でない人には、軽視されまくってると感じる
多分、AがBになる認識の人が結構居ると思う
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目的による分類の1、自分で作成して頒布しない以外は全て規制対象と言った場合、「ほぼ全て禁止じゃないか、プ◯キュアも禁止だ、ウォー◯ーボーイズも禁止だ、アイドルの写真集も禁止だ、ふざけるな!」と言い出すんだけど、全然違うのだ
こっちこそ切れたい
実在・非実在の左右より、上下の描写の加減とかのが繊細で大事な事だし、しかしむしろ、そんなの作品全体からしたら些細な事ですらあるので
作者からしても、実在しないから人に与える影響は少ない、所詮は作り物である、って言われるのは微妙だと思う
比率から言ったらこんな感じ
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性的描写をざっくり削って、全体のクオリティが上がるならそれを選ぶ
性的なものをアイキャッチに使うのは、人権問題やフェミニズムを置いておいても安直で、表現手法として時代遅れでスキル不足を暴露するものと言う評価になりがちなので、普通はとても慎重に取り組んでいる
アート舐めんな、簡単に名乗れると思うなよ、である
巻き込まれて子供の写真や映像を素材に使う時に要らなかった配慮をしなきゃならなくなるこっちこそ、本当に切れたい
子供の安全のためなら仕方がないと思うけど…
脱線したけど、実際にはCがDになるような話をしているし、もっと細かくデリケートな話になるはず
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規制の内容としては、下記のようなイメージ
漫画かアニメかイラストかによって、具体的な対応は変わって来るので、レベル感のみ。
■違法:即アウトな範疇。ストーリーの主題が小児性愛や虐待を肯定的に描く場合などには作品作成自体を避ける。
■自主規制(強):主題に小児性愛は関係ないが、性的な要素が強い表現がある場合に、その部分や演出をカットするなど。アイキャッチ的に無駄にお色気を盛り込まない、原作にある要素でも取り入れない判断をする。
■自主規制(弱):主題に小児性愛は関係なく、性的な要素もないが、不要な露出を避ける必要があるなど、服を変えたり、角度を避けて描写する配慮をする。アイドルの撮影で下着が見えない衣装にしたり、下から映さないのと同じ。
性的か、性的でないかはどう見分けるか
これが難しい
最初の記事に書いたように、使用済みオムツを盗む人も居れば、膝丈スカートに眉をひそめる人もおり、宗教的には髪が見えてもダメな国もあるからだ
ただ、難しいようでいて難しくない
ポルノとして破棄するべきかを聞いたら、明らかなポルノであってもポルノじゃないと言い張る人は居るだろうが、「エロいw」ってアップしたら良いねする人が居るだろうから
お金を払ったかどうかは、さらに強いエビデンスになる
北風と太陽スタイルである
そして、そういう反応を集めて客観的な裁定者になるのはAIのもっとも得意とするところだと思う
このAIの判断が、裁判で直接エビデンスとして採用される日は先だと思うが、異性や嗜好の異なる人には分からないセクシーさを、AIがしゃかしゃか分類するようになると思うとちょっと面白い
前の記事にも貼ったが、こんな感じで分類されている
今は完璧には出来ないので目視でやるしかないけど、この手の犯罪で1枚だけを判断する事は稀で、大体何十枚、何百枚を所持している場合に摘発されるので、そんな微妙な判断で冤罪になることはないとも思う(実際に捕まった例を見ると500点とか1000点だった…)
製作側としては、既存作品は別にして、新たに作る場合、成人ものと違って匂わせでも良くない訳だから、作る時点で配慮しないと作り直しになるので、自動的に自主規制として判例を元に運用されるのかな
■新たな課題
(もともとあったけど)
⇒インターネット関連
インターネットやデータへの干渉の権限と、事業者の義務化の整理が大仕事
トランプ大統領のアカウント凍結でも話題になったけど、ネットでの表現の自由は、事業者が自主規制や利用規約として制限できるのか、そこも国が法規制で管理するのか問題
そして、国が法規制でやらせるなら、発生するコスト問題とか、国をまたぐのが当然の中で整合性取れるのか問題
細かい運用以前にとてもややこしそうなので、別の記事にしたい…
■総括
以上、未来図としては、グローバル化に伴い、AI等の活用と世界的な基準統一は避けられないため、それらと人権の擦り合わせが出来たところが着地点と予想
子供の安全のためなら多少エビデンスが不確かでも予防的措置を取り、やってみた上でデータを取って、改善していく事が大人としての責任であり義務だと思うし、国際的にもその方針のように見える
オーストラリアのように、児童保護関連の規制にかなり厳しい基準を設けた上で、暴力表現に関してだが数年経って緩和した国もある
アメリカも児童ポルノの定義や判断方法を見直した国の一つ
こうやって改善を重ねながら最終的には、「プロ意識による自主規制」まで到達すれば、と言うところなのかも
最後に、これは児童ポルノ禁止法に関してのみの話
他にもたくさんの法律があるので、それらとの調整が必要であり、関係者は全てに注意、配慮と倫理観持たなくてはならない