50年経って、再び熱田神宮。
年末最後の日だというのに、我々夫婦は日帰り旅を決行した。近いから行きやすかろうということで、特に下調べもせずに「名古屋」旅だ。
前々から、東山動物園の男前ゴリラのシャバーニを一度見たいと思っていた。いつか行こう、行ってみようと言っていたのだが、年末年始の休みが暇だー暇だーと言う旦那さんの希望もあって、じゃあ名古屋に行ってみる?となったのだった。
近鉄電車の「ひのとり」という特別列車に乗って行けるという。早速ネット予約した。実際に窓口に行くと、乗車券は別途またお金を払って買わなければいけないという。ネットで予約できたのは特別料金分のみ、ということだったらしい。よく分からん仕組みだ。だが、とくかく「ひのとり」レギュラーを行きは予約している。いざ乗車。
座席の倒した時の背中や腰のフィット具合といい、足が置けるフットレストもあり、ドリップコーヒーも買えるコーナーもあって、きれいな車内で乗って大正解だった。2時間くらい乗ったのだが、新幹線よりゆっくり車窓が流れ、途中の街並みや駅も観察できるし、ゆったり旅した気分が味わえて良き。
着いてまず向かったのは、旦那さんが行きたいと言うので熱田神宮へ。正月のための出店がずらーっと参道に並び、歴史ある神社の風情というよりかは派手な看板の屋台だらけでインパクトが強過ぎた。だけど、それだけ参拝客が来るのだろうし、出店の人たちはかき入れ時なんだろう。
樹々が空を覆って通る参道の木の鳥居が渋い。有名な大楠もある。さすがの歴史の長さを感じる。途中、成り立ちや歴史の説明した看板をじっくり夫婦で見ながら移動していると、とんとん、と私の左腕をたたかれた感じがして振り向く。
ニット帽の笑顔のおじいちゃんが立っていた。頼んでもいないのだが、熱田神宮の説明を看板を指さしながら話し始める。私たちが余程興味深く歴史の看板を読んでいるのだろう、と思われたのか、こちらが次見ようと思っていた説明の看板を飛ばして、こっちこっちと誘導される。おじいちゃん、顔を見ると鼻水が垂れているし前歯が抜けている。クイズみたいに、これはどうだか分かる?とか、昔の参道はこっちの道だったとか、地元の方しか知らないだろうことを説明してくれる。
お、おう・・・と若干戸惑いながらも、せっかく親切に??説明してくれているのだからと邪見にもできず、おじいちゃんの熱田神宮裏話、自慢したいのかしら、そういう話を聞きながら進んだ。じゃあそろそろ、と信長の土塀を見ようと進むと、まだおじいちゃんが付いてくる。私はすっと離れて土塀を見に行ったけど、旦那さんがまた捕まってしまい、何か説明を受けていた(笑)。他の観光客の人たちが土塀を見ていると、おじいちゃんがその人たちにも話しかけ、信長の映画で来ていた木村拓哉が触った箇所はここだ、と自慢する。別にファンでもないが、へぇーー!と感心したようなリアクションをしてしまった。
なんだろう、そういう時に邪見な扱いができないのだった。おじいちゃんはきっと、そうやって観光客に話しかけ、相手が感心したり驚いたりするリアクションが楽しいんだろうなぁと思うから。私たちのペースは崩されたけど、おかげで、熱田神宮の印象がより強まったのだった。
あとは年末なので、名古屋城の天守閣も閉まっているし、動物園もダメ。名古屋港水族館はやっているとのことで行ってみた。入っていきなりシャチ、イルカ、ベルーガの水槽が大迫力で楽しかった。グルメもと欲張り、きしめんも味噌カツも天むすも食べれた。次は行けなかった場所に行きたい、という心残りがある旅が良い。
父親の転勤で大阪に引っ越したけど、子供の頃2歳まで名古屋に住んでいた。改めて名古屋に旅に行くという発想がなかったので、今回日帰りだけど行けて良かった。
年が明けて実家に行ったとき、熱田神宮に行った話をしたら、なんと私の初めてのお宮参りが熱田神宮だったことが判明した。まだ20代の若い両親が、祖父母から贈られた着物を母が赤ん坊越しに羽織った姿で、ばっちり熱田神宮の鳥居の前で写っている、大判の製本された写真があった。当時、たまたまお宮参りに行ったとき、熱田神宮の写真部のカメラマンが居て、撮りましょうかと声をかけられたらしい。
その写真は見たことがあったけど、まさか熱田神宮で撮ったということは覚えていなかった。なんと、数え50歳になる年に0歳だった私が伴侶を連れて、知らずに再参拝したのだった。50年経って訪れることになるなんて、感慨深い。その時の産まれたばかりの赤ん坊が、今、こうやっておばちゃんになって、いろんな経験をして生きてきて健康な姿で、また同じ場所に来れる。すごく稀な幸せなことかも知れない。
ちなみに夫婦でひいたおみくじは、旦那さんは吉、私は大吉だった。2025年はきっと幸先が良い違いない。