【細胞】”アンチコドン”ってご存じですか?#7
【挨拶】
こんにちは、catです。今回は細胞の#7としまして、#5.5で挙げた二つの重要な問題の ②DNAの暗号はどのように使われる? について説明していこうと思います。結構複雑な話ですが、出来る限り簡潔に説明するので、ぜひ最後までご覧ください。
【DNAとRNA】
何万個もある遺伝子の中から一個を発現する第一段階は、その塩基配列をRNAにコピーすることです。この時、DNAの塩基配列と相補的なRNAがつくられます。たとえばーTGCGGTーというDNAの塩基配列があったとします。この時、合成されるRNAの塩基配列はーACGCCAーとなります。また、DNAの塩基にはTが存在しますが、RNAの塩基にはありません。その代わりにウラシル(U)という塩基が使われます。なので、DNAの塩基配列がーAAAーであったとき、合成されるRNAの塩基配列はーUUUーとなります。
また、DNAに用いられる糖はデオキシリボースです。それに対してRNAではリボースという糖が用いられています。この二つの違いは単純で、「デオキシ(酸素が外れた)」かそうでないかです。以下にこれら二つの糖の構造を載せます。
上の画像が「リボース」、下の画像が「デオキシリボース」です。リボースの方に赤色で示した酸素(O)が、デオキシリボースの方にはありませんよね。その違いが「デオキシ(酸素が外れた)」です。
まとめるとこうです。
・RNAには塩基Tの代わりにUが使われている。
・RNAの糖は、DNAの糖から酸素が一つ外れたもの。
【DNAからRNAへ】
タンパク質の合成がされる際、セントラルドグマに従い、DNAからRNA、RNAからタンパク質、といった順に合成されます。まずは第一段階、DNAからRNAへの流れを説明していきます。
DNAは普段、二重らせん構造をとっていますが、合成が必要な時にはこれがほどけ、塩基同士の結合もいったん離れます。この片方の鎖を鋳型(お手本?)として相補的なRNAが合成されます。仮にDNAの塩基配列がーATCGAーだったとしましょう。合成されるRNAはーUAGCUーとなります。ここで合成されたRNAを伝令RNA前駆体(mRNA前駆体 m : messenger)
合成されたmRNA前駆体は、その名の通り前駆体なのでそのまま用いられるわけではありません。DNAをそのままコピーしただけの配列には、要らない部分(イントロン)と必要な部分(エキソン)があります。合成されたーUAGCUーの内、例えば右端のUがイントロンの場合、それは配列から除去され、-UAGC-となり、これが完成したmRNAです。この除去される工程をスプライシングと呼びます。
【RNAからタンパク質へ】
さて、完成したmRNAはいよいよ核から出て、タンパク質合成の場である細胞小器官、リボソームへ行きます。到着すると、暗号の解読が開始します。
#6で解説したように、三つの塩基が組でコドンと呼ばれ、一つのアミノ酸を指定します。mRNAのコドンと相補的なコドン(アンチコドン)をもった運搬RNA(tRNA t:transfer)には、暗号に応じたアミノ酸が付属しています。例えばmRNAにーUUUーというコドンがあればーAAAーというtRNAが結合し、そのtRNAはトリプトファンというアミノ酸を運んできます。つまりコドンは、自身と相補的なコドン(アンチコドン)をもつtRNAとペアになることによって、アミノ酸を指定しているのです。
このようにして次々とtRNAとペアになり、アミノ酸を連ねていきます。最終的に終止コドンが読まれると、アミノ酸を指定しないため合成反応はそこで終わり、タンパク質が完成します。厳密にはまだタンパク質が活性を持つような形に折りたたまれるなどの工程がありますが、今回は割愛します。
【おわり】
はい。今回の解説はこれで終了となります。#6と#7と通じて、少しでも遺伝にまつわるDNAの役割がご理解いただけていれば嬉しい限りです。
それではまたお会いしましょう。
ここまでご覧いただきありがとうございます。
このシリーズで参考にしている書籍は「Essential細胞生物学 第四版」というものです。大学の講義で教科書に使われることもあります。文章は海外の物の翻訳なので、読みにくさを感じることもありますが、見やすい図や写真が載っているので、ぜひご覧になることをお勧めします。楽天にて販売しています。そこそこの値段がしますが……。覗いてみるだけでもぜひ。
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Twitter:@Catkamome
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