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「9番目の私立」に紫の大輪は咲くか/高校野球ハイライト番外篇•滋賀短期大学附属
滋賀の私立と言えば近江に比叡山、シガガク。ヒコソウに綾羽、リツモリ、光泉、兄弟社。
…あと滋賀短。
かなり極端で、失礼な表現をしている自覚はある。ただ硬式野球に限定すると、どうしても知名度と実績が見劣りする。
そんな「9番目の私立」滋賀短期大学附属が、センバツの有力候補になることを誰が予想しただろうか。
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学校法人は純美禮(すみれ)学園。前身は女子校で、今もバスケ部やバドミントン部などは強豪の座に位置する。
ただ2008年の共学化後に誕生した野球部は県のベスト4が最高成績で、準決勝の壁を越えられずにいた。
そもそも私立と言っても環境に恵まれているわけではない。
学校でボールを使った練習はできず、普段は大津市内のグラウンドを渡り歩く。県外から来る選手もいるが、内部進学が前提ではない。
だからこそ進路指導主事の経験もある保木淳監督は、できる限り大学を回って進路の幅を広げてきた。
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「うちは弱小、最下位の私立。声を掛けるには進学実績と熱意しかない。選手が夢を持って高校野球を全うし、保護者にも行かせて良かったと思われるチームにしたい。それが自分を拾ってくれた学校への恩返しにもなる」
15年をかけて少しずつ強化が進み、ここ数年は上藤大輝や小橋川拓などプロを視野に入れる選手も出現。
それでも全国を狙う位置には辿り着けず、他の私立を追い抜くほどの存在感も示せなかった。
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そんなチームが去年秋、近畿の話題を独占する。
県大会の準決勝で綾羽を破ると、初出場した近畿大会初戦では履正社相手に4-1で大金星。櫻本拓夢が120キロほどのストレートをコントロール良く投げ分け、強力打線を手玉に取った。
相手の焦りに乗じて逆転した雨中の一戦を保木監督が改めて振り返る。
「9月の練習試合で履正社のBチームに2敗している。プライドがなかったから様々なことを徹底できた。全部が良い方向に噛み合った結果。試合後には『10回に1回』と話したが、実際の勝率はそれ以下だと思う」
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なぜ勢いがついたか、なぜ勝てるようになったか。なかなか能力値だけで説明できない。ただひとつ言えるのは、選手たちが群生するスミレのように束になり、厳しい状況を乗り越えたということ。
センバツは確実とまでは言えないが、保木監督は「甲子園が全てじゃない」と冷静に構える。
「能力がなくても勝てることが広まれば、あらゆる学校のモチベーションになる。『WIN-WIN』や『三方よし』という言葉が好き。自分たちが刺激になって皆が笑顔になれば良い」
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出場校の決定は1月24日。野山の雪解けより早く、「9番目の私立」は紫の大輪を咲かせるのだろうか。