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【アーカイブ2020】無観客の『当事者』~滋賀大会・夏跡の便り①野洲/長浜北

7月18日の皇子山球場。福森徹球場長は「寂しいね」とつぶやいた。球場にいるのは選手や関係者のみ。史上初、無観客での夏。開会式も始球式もない中で開幕ゲームが始まった。

大会前、選手への取材を自粛した。言葉を交わした選手も今年に入って3人だけ。登録メンバー20人は試合直前に発表されるため、各チームの方向性もわからない。何を見るべきか、伝えるべきか。そもそも大会を開くべきだったか。開会前の様々な声は私の耳にも届いていた。

押し寄せた不安を取り除いたのは、「当事者」として夏に臨んだ選手たちだった。野洲の泉竜成に長浜北の山内翔夢。去年も取材した両エースが白熱の投手戦を見せる。滋賀の夏として初のタイブレークに持ち込んだ一戦こそが、大会の価値を私たちに示してくれた。

振り返ると開幕前日は大雨だった。それでも当たり前のように、皇子山球場は美しかった。最高のグラウンドコンディションが最高の試合を生む。大会を待ち望んでいたもうひとりの「当事者」からは、言葉とは裏腹に寂しさを感じなかった。【2020年7月23日掲載】

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