強豪復活の灯をともせ~高校野球ハイライト延長戦9日目・北大津
「いま振り返っても泣きそうになるねん」。3月のメモにこの言葉が残っているあたり、思いの強さがうかがえる。2018年の秋に就任した寺嶋祐介監督にとって、この3年は「北大津は終わった」と言われた悔しさと戦い続けた日々だった。
練習試合で人数が足りないと自ら出場し、元・独立リーガーの守備力を間近で見せた。4番でエースの上坂真人には、精神的に大人になることを何度も説いた。選手の体を大きくするため、自宅で食事合宿を実施したこともある。妻の希さん協力のもと1日10合を食べさせ、ショートの岸田力斗からは「地獄の合宿」と言われた。選手の優しい兄であり、厳しい父でもあった。
去年は甲子園が中止になって選手が大泣きする姿を、今年は甲子園を目指して選手が大きく成長する姿を見た。「やっぱり高校野球ってすごい。甲子園ってすごい」。上坂が最後まで投げ切り、岸田が難しいゴロをさばき続けた近江との試合後、選手以上に目を腫らす監督の姿があった。
「甲子園に突き進んだ日々は最高だった。最強の北大津を作ってほしい」。上坂に託された夢を追いかける毎日がまた始まる。「上坂という存在が、甲子園を目標とする灯をつけてくれた。何を言われても俺らは甲子園を目指すよ」。強豪復活の灯を、今度は炎にしてみせる。
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