元虎投手、甲子園を目指す~高校野球ハイライト延長戦7日目・光泉カトリック
光泉カトリックの伊藤文隆監督は阪神タイガースの投手だった。通算54勝を上げ、1985年の日本一にも貢献。指導者としては2009年にクラブチームを全国優勝に導き、県内では元巨人の西村高司さん(長浜)以来となる元NPB選手の監督就任を果たした。
出身は愛知の大同工業。最後の夏はエースとして孤軍奮闘するも、準決勝で現在の中京大中京に敗れた。「甲子園のマウンドはプロでこそ立ったが、どうしても高校で…」。単身赴任や就任当時の66歳という年齢、名前も知らなかった学校での監督就任の背景には、50年前に残した聖地への憧れがあった。
就任初日には「実力の世界」と伝え、野手陣は2年生主体で戦った。チームが壊れなかったのは、自らの役割を「監督と選手のボンド」と表現した清水大成主将の存在があってこそ。「素直な子どもが本当に多い」と話すときは、厳しい言葉とは違う優しい表情だった。
2月にコロナ休校も経験した難しい環境の中、初めての夏は2回戦敗退。清水主将は後輩へ、「高い技術が学べる。目標を確かなものにしてほしい」と思いを託した。「野球人口が減っている。大学や社会人までプレーしたいと思える環境を作る」。伊藤監督と光泉が歩む飛躍への道のりは始まったばかりだ。