[澤田和夫] 聖書で祈る:ご聖体の祝日
澤田和夫神父の『聖書で祈る』より、「ご聖体の祝日」。
この文をもって一連の紹介のおわりとしたい。
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ヨハネ聖福音書を静かに読むこととしましょう。ヨハネ第6章はご聖体の秘跡についてのところです。イエズスさまはまず、
「永遠の生命へと至らせる食べ物のために働きなさい」(27)
とおっしゃいます。食べるためにだけ毎日働くのではたりないのです。
それでは、神のわざに加わるような働き方をするには、どうすればよいのかという問いに対しては、
「神がおつかわしになったかたを信ずること。」(29)
まず信仰を求めていらっしゃいます。
「わたしを信ずるものは、のどがかわくことはない。」(35)
「子を見て信じる人が永遠の生命をもつということ。」(40)
「これはほんとうに、ほんとうのこと、信ずる人は永遠の生命をもつ。」(47)
海べの波が、寄せては引き、寄せてはまた引くようなしかたで、くりかえし信仰を説いていらっしゃいます。信仰するということ、神からの光と力とに答えてゆく信仰、そういう内面の活動それ自体が、すでに永遠の生命のはじまりなのです。「信ずる人は、永遠の生命を”もつ”」
この生命をやしなうパンは?といえば、
「わたしこそ、生命のパン。」(35、48)
こうおっしゃって「信仰」を説き、しかもイエズスさまご自身の信仰を説いたのち、いよいよ「聖体の秘跡」の信仰へとみちびいてくださいます。
「わたしこそ天からくだった生きたパン。このパンを食べる人は、いつまでも生きる。」
「わたしの肉は、ほんとうに食べ物で、わたしの血は、ほんとうに飲み物です。わたしの肉を食べ、わたしの血を飲む人は、わたしのうちに住まい、わたしもその人のうちに住まうのです。
生きておいでになる御父からつかわされたわたしが、御父によって生きているように、わたしを食べる人も、わたしによって生きるのです。
これこそ、天からくだったパン、わたしたちの先祖が食べたパンとはちがいます。パンを食べても死にました。このパンを食べる人は永遠に生きるのです。」(56−59)
ガリラヤ湖畔でのこの教えは、いよいよ最後の晩さんのときの聖体の制定をもって実現をみたのでした。(ルカ22・19−20)
そのイエズス・キリストさまの十字架の死と復活から約三十年たったあとのこと。聖パウロはコリントの人々にご聖体のことも説いています。そのときのようすをわたしたちはコリントの人々への第一の書11章(23−29)によって知ることができます。
「きょうだいのみなさん。わたしがみなさんにお知らせしたことは、主からさずかったことです。主イエズスは、わたされる夜にあたってパンを手にとり、感謝なさってから、ちぎって、そしておっしゃいました。
『これは、あなたがたのための、わたしのからだです。わたしの記念としてこうなさい。』
食事を終えてから同じように、さかずきを手にとっておっしゃいました。
『このさかずきは、わたしの血で固められるあたらしい約束です。こうして飲むたびごとに、わたしの記念としてなさい。』
事実、みなさんがこのパンを食べ、このさかずきを飲むたびごとに主のご死去を告げるのです。それは主が来たりたもうときまでです。そこで、ふさわしくないしかたでこのパンを食べ、主のさかずきを飲む人は、主の御からだと、御血とをおかす人です。そこで、ひとりひとり、みずからをためしてからこのパンを食べ、このさかずきを飲むようになさい。御からだをわきまえずに、食べたり飲んだりする人は、みずから審判を飲食するものです。」
このご聖体が二千年このかた、キリスト信者の力となってきました。家庭のしあわせの中心。修道院をささえる力。病人が病気と戦っていくときのささえ。司祭のためのあらたな勇猛心の泉。キリスト信者民衆の団結の中心。
人間はだますこともある。うそをつくこともある。裏切ることもある。だが、神さま、あなたは真実、忠実そのもの。「アメン」とはなによりも神のまことを信じるということにちがいない。
そこで、ご聖体に対して、「キリストの御からだ」ですよといわれて、「アメン」と答えてからご聖体をいただきます。ふるく第四世紀からの伝統にしたがって、なんとすばらしいことでしょう。
聖体は二千年まえの過去を指してキリストの「ご死去を告げる」とともに、「主が来たりたもうとき」の未来に目をむけさせる。過去、現在、未来を結ぶキリストの「記念」である。
それはただの「思い出」ではない。復活に輝くキリストの現実をわれわれのものにし、われわれをこのキリストの輝きにだきこんでくださる復活秘義。「主はみなさんとともに」といいつつ救いの歴史を表現し、実現する典礼の中心です。
イエズスさま、あなたの光と力、あなたの救いで、「あの人を」救ってください。「あの人をも」。そしてこのわたし。われわれ。全世界を!
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(沢田和夫著『聖書で祈る』P.36-41 ユニヴァーサル文庫)
本書は昭和41年(1966)初版発行の絶版本であるが、
澤田神父には他にも多数著書がある。
福音(まことの喜び)を求める向きには、それらも重ねておすすめしたい。
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