舟と父親とを残して
マタイによる福音
イエスは、ガリラヤ湖のほとりを歩いておられたとき、二人の兄弟、ペトロと呼ばれるシモンとその兄弟アンデレが、湖で網を打っているのを御覧になった。彼らは漁師だった。
イエスは、「わたしについて来なさい。人間をとる漁師にしよう」と言われた。
二人はすぐに網を捨てて従った。
そこから進んで、別の二人の兄弟、ゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネが、父親のゼベダイと一緒に、舟の中で網の手入れをしているのを御覧になると、彼らをお呼びになった。
この二人もすぐに、舟と父親とを残してイエスに従った。
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この時イエス、約30歳。
ペトロとアンデレ兄弟。
ヤコブとヨハネ兄弟。
イエスただ一人から、イエス、ペトロ、アンデレの三人組へ。
そして、イエス三人組に、ヤコブとヨハネが加わり、イエス、ペトロ、アンデレ、ヤコブ、ヨハネの五人組へ。
彼らはだいたい同世代の間柄であったのだろうか。
そこに父ゼベダイは加わらない。
新しいことを始めるためには、人は若くなければならない。
若い世代には特有の行動力、連帯力がある。
社会に飼い慣らされる以前の、純粋な志(こころざし)がある。
教師(ラビ)はそれに炎を灯し、爆発させて、「二度生まれ」を引き起こす。
そしてその爆発は、噴火後の溶岩模様のように、後世の歴史に美しい跡(あと)を遺(のこ)す。
『すべて偉大なるものは青春において作られる。その後の人生は注釈に過ぎない。』(ゲーテ)