キー部1%でよっぴさんに伺った、AZ-COREとは何者なのかという話~BLE Micro Proとの比較を添えて~
キー部 1% - connpassシリーズ第2弾。今回はAZ-COREについて。
この製品については、なんか既存キーボードを無線化できるっぽいというくらいには知っていたのだが、何がどうなってそうなるのか、ファームウェアとかどうなるのか、どうもよくわからない。むずかしそう。
んで、パレットシステムのブースでよっぴさんが営業マンと化していたので、営業されてきた。
(お時間を割いていただきありがとうございます)
(僕も協力しますよ!)
なにこれ? これと何があれば無線キーボードできるの?
結論から入ると、必要なものは4つある。
これ(¥ 9,000)
ファームウェアを書き込むライター(オプション品、¥ 1,000)
panda_micro(ケーブル込みの完成品で¥ 1,200)
Pro Microで動くお好みのキーボード
Pro Microを二枚使う分割キーボードの場合、panda_microも二枚必要だが、本体より圧倒的に安いので、BLE Micro Proと違って、分割キーボードの方がお得感はある。
配線の模式図は下記を参照。
仕組みとしては、まずキーボードにぶっ刺さっているPro Microをpanda_microに交換する。ここまではBLE Micro Proと同じだ。
しかし、BLE Micro Proと異なり、panda_microは単体でパソコンと通信することができない。というか、「パソコンと通信するデバイス」と「キーボード」をつなぐのが、panda_microの役割ということだ。
パソコンとの通信を担当するのが、AZ-COREということになる。AZ-COREはバッテリーとBluetooth機能を有しており、パソコンに無線接続することができる。
AZ-COREとpanda_microの接続は、TRRSケーブルで有線だ。分割キーボードの場合、左右の接続も有線ということになり、完全無線化はできない。
え、(BLE Micro Proに比べて)雑魚じゃん
と思うかもしれない。まあ単純に、BLE Micro Proが入手できないので(Type-C版も気付いた時には食い尽くされてた……)代わりに購入するというのもアリだと思う。
しかし、AZ-COREシステムには、BLE Micro Proにはない特色がいくつかあるので、比較しながら以下に述べていこう。
バッテリー内蔵
まずはこれだ。AZ-COREがバッテリーを持つため、キーボード側に電源を設ける必要がない。
BLE Micro Proのよくわからん点として、これに対応してるキーボードってなんなの?というのがある。
基本的にはPro Microを使うキーボードならなんでも無線化できるっちゃできるのだが、BLE Micro Proの場合、キーボードに電源ユニットを持たせる必要がある。
当たり前だが、電源ユニットの設置スペースを確保してある自作キーボードキットは多くない。Pro Microが露出している(またはカバープレートのみで保護されている)タイプであれば、上に重ねちゃえばいいのだが、めりこんでるタイプの場合はそうもいかない。
要するに、僕が理解する限りでは、BLE Micro Proでキーボードを無線化するには、電源ユニットを保持できなければならないわけだ。
しかし、AZ-COREにそういった制限はない。TRRSケーブルが通る穴さえあればいい。
その分デバイスそのものが増えるわけだから、当然邪魔くさいっちゃ邪魔くさいだろうが、電池式との比較で考えると、予備の電池を持ち歩かなくて済むともいえる。
となると、気になるのは、バッテリーの容量だ。
小型化した結果、連続稼働時間はAZ-COREのみで9時間。キーボードを接続すれば当然キーボードの食いぶちもあるので、さらに減少する。
モバイル機器のバッテリー容量におけるボーダーラインは、「一日無充電で乗り切れるか」だろう。「本体のみで9時間」は、用途によっては不安が残る数字だ。
自動スリープ設定はできるそうなので、短めにすれば節約にはなるが、ガンガンタイピングし続けた場合は、果たしてどのくらいもつものか。
LEDを光らせるのは、ちょっと厳しいような気がする。(そもそも出先で光らせるなという話だが)
こんなもん使う変態はモバイルバッテリーくらい持っているかもしれないが、ただでさえキーボード以外のものがくっついているのに、モバイルバッテリーまで持ち出すのは、有線と比べてどんだけスマートなのか、という話になってくる。
ただまあ、「足りなくなったらパソコンからもらう」くらいの運用で済めば、充分許容範囲ではないだろうか。ケーブルの取り回しは大変かもだが。
ファームウェアの独自性
まず大前提として、ファームウェアの書き込み先はpanda_microでなくAZ-COREである。
つまり、panda_microだけいっぱい買って複数のキーボードに付けておき、1台のAZ-COREで気分によって使い分ける──といった使い方は、相当工夫しないと難しい。
BLE Micro Proのファームウェアは、無線化に関する機能を追加したQMKの派生(フォーク)である。従って、基本的にQMKにできることなら、CombosだろうがTap Danceだろうがなんでもできる(はず)。
一方、AZ-COREのファームウェアは、完全にQMKとは別物である。KMKとかRMKとか、多言語に移植されたQMKクローンよりも別物。
とはいえ、キーボードで欲しい機能はだいたい揃っている。写真を撮り忘れたので記憶で書くが、
レイヤー
マクロ
定型文
マウスエミュレーション
自動スリープ設定
なんか一個忘れてる気がするなあ。まあ、自作キーボード界隈の人の90%くらいはカバーできるのではないか。
ファームウェアの機能に関する注意点
伺った限りでは注意点は二つ。まず、現状ではロータリーエンコーダに対応していない。
なので、cocot46plusあたりでは使えない──って、そういえばトラックボールに対応しているのかどうかは聞きそびれたな。まあ多分してないと思う。
もう一つは、tap/holdの切り替えの仕組みがQMKと異なることだ。
まず、QMKにおけるtap/holdの仕様については以下の記事が詳しいので、ご覧いただきたい。
(以下余談。そもそもなぜこんな細かいところまで伺うことになったかというと、REMAP開発者コンビのLTの際、僕がtap/hold調整できるようにならんの?という質疑をした流れで、よっぴさんからQMKにおけるtap/hold切り替えの仕様について逆質問を受けていたからだ。僕はそこまでREMAPに頼ろうとするようなクソザコであり、相当アヤフヤな説明をしてしまったため、もしよっぴさんがご覧になっていたらぜひ上記記事をご参照ください)
QMKの用語になぞらえるなら、AZ-COREファームウェアにおけるtap/holdの仕様は、`TAPPING_TERM`の概念がない`PERMISSIVE_HOLD`、と表現すればよいだろうか。
例えば、あるキーにタップでa、ホールドでctrlが割り当てられているとして、
キーダウンでctrlを発行
キーアップでctrlをキャンセルしてaを発行
という、しごく単純なものだ。
これにより、問題とは言わないが、用途・環境によってはいくつかのトラブルが予想しうる。
まず、タップする際、ホールドに割り当てられたキー、この例で言えばctrlの単打が発生するはずだ。
となると、アプリケーションレベル(例えばKarabiner-Elements)でctrl単打に何らかの動作を割り当てていた場合、タップのたびにそれが暴発すると考えられる。
また、要するにホールドを常に最優先する設計であるから、「タップのつもりがホールドに化ける」ということが発生しやすくなると予想できる。
打ち方やスイッチのクセによっては、高速タイピングが阻害されるおそれがある。底打ちする場合や、押下圧が軽くトラベルが長いスイッチには向かないはずだ。
このあたりを細やかに調整したい場合は、BLE Micro Proの方が適しているだろう。
ファームウェアの書き込み、カスタマイズ
販売ページにも記載があるが、本製品のファームウェア書き込みには、ハードウェアとしてライターと、ソフトウェアとして専用ウェブページ(Remapみたいなの)を利用する。
この専用ページも見せていただいたが、なかなかよくできていた。デザインはシンプルながら、UIとしては至極わかりやすい。
また、ここに独自ファームウェアゆえの優位性が現れていて、専用ウェブページからレイヤーの追加と削除を行うことができる。(追加の際は、既存レイヤーからのコピーも)
これはREMAPではできないことだ。どうも、QMKが措定しているプロトコル上、外部プログラムからはレイヤー構造に干渉できないらしい。
つまり、そもそも機能そのものが少ないとはいえ、自前でファームウェアをビルドすることなく、GUIでの設定だけですべての機能を利用できるわけだ。
追加のハードウェアが必要なのは痛し痒しだが、これは相当気楽といえるだろう。
まとめ
BLE Micro Proと比較して、明確な優位点はこのあたりだろうか。
キーボード側の条件が緩く、(トラックボールやロータリーエンコーダを搭載しないキーだけボードなら)なんでも無線化できる
ファームウェアの取り回しが(ハードウェアが必要だが)簡単
買える
つまり、無線化興味あるけど、キーボード側の対応条件とかやり方とかようわからんという民はバイナウ。僕も1セット買いました。届いたらまた記事書くと思います。