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Kailh Choc v2系スイッチの互換性について

(Crystal推しです)

現在、メカニカルキーボード用のロープロファイルスイッチが流行し始めており、各社から新商品が多数市場投入されています。
中でも、長年にわたりロープロファイルスイッチのパイオニア的な位置づけであったKailhは非常に活発です。昨年のLofree Flow発売に伴うKailh x Lofree Shadowの一般販売以来、キーボードやゲームコントローラーのメーカーとのコラボ製品も積極的に展開しています。
しかし、そのために各製品の互換性を把握することが非常に難しくなっており、手持ちのキーボードやキーキャップと組み合わせて使えるのか、よくわからないのが現状です。
そのため、特にややこしいKailh Choc V2関係に絞って、最近リリースされた製品の互換性についてまとめます。

五月雨さんの上記記事に触発されました。


そもそもChoc V2スイッチとは

大まかなところは前回の記事を参照

改めてまとめると、

  • フットプリントは独自

  • ソケットはChoc V1と互換

  • キーキャップはCherry MXと ほぼ互換

ということです。
ソケットが互換なのにフットプリントが非互換なのは、中央足の太さの違いによります。

Kailh Lofree Low-profile POMスイッチとは

振興キーボードメーカーであるLofreeとのコラボ製品としてリリースされ、界隈に衝撃を与えたKailh x Lofree Shadow。
実は、このペットネームは一部のストアでしか使用されておらず、一例としてLofree JapanストアではLow-profile POM Switchesとの表記がなされています。
しかし現在では、Shadow互換の設計による製品が他にもリリースされるに至っており、区別が必要になっています。

そのため本稿では、Lofreeから販売されている製品をShadow、他メーカーから販売されている製品も含めた総称をKailh Low-profile POMスイッチとします。
そして、Choc V2とLow-profile POMを総称して、Choc V2 スイッチと呼ぶことにします。

Low-profile POMスイッチの設計上の特徴は、その名の通りトップハウジング・ボトムハウジング・ステムの全てが純POM製となっていることですが、寸法にも従来のChoc V2スイッチとは違いがあります。主な違いは、

  1. 底面から上部爪までの高さ

  2. 上部爪と下部爪の間(スナップフィット)の厚み

  3. キーキャップとの嵌合部分のきつさ

といったところ。

1,2により、Choc V2互換スイッチとLow-profile POM互換スイッチでは、トッププレート(スイッチプレート)の高さ・厚みを変えなければ、しっかりとフィットさせることができません。
Choc V2の1.6mm厚はCherry MXと同じなので、例えばCorne V4 Cherry/Chocolateのトッププレートは全く同じものです。
対して、Low-profile POMの1.2mmという厚みはかなり厄介です。というのも、遊舎工房のレーザーカット材料でも1.2mm厚のものはなく、他のアクリルレーザーカットサービスもほとんどが同様なので、そもそも作れません。
PCBで作るのがお手頃でしょうが、公開されているプレートデータがレーザーカット用だったりすると、板金になりますかね……

また3により、Low-profile POM用に設計されていないキーキャップでは、抜けにくい、ステムを押し広げてつっかえる、キーキャップが割れるなどの問題が起こり得ます。

スプリング・スイッチオープナーの互換性

メカニカルキーボードの荷重・反発力は、スプリングで決まります。荷重を調整するためにこのスプリングを交換する、あるいは潤滑剤を塗布する(いわゆるルブ)場合、スイッチを分解する必要があります。
スイッチを分解するための道具がスイッチオープナーと呼ばれるものです。一般に、Cherry MX用とKailh用が流通しており、両者が一体化している製品も多いです。

ここでちょっとややこしいのが、「Kailh用」のスイッチオープナーは、「Kailh製Cherry MX互換スイッチ用」だということ。爪の形状が異なるんですね。
じゃあCherry MX互換ちゃうやんけ。僕もそう思います。
Kailh Choc V1はどちらとも爪の形状が異なり、一般に流通しているスイッチオープナーは一切使えません。

では、Choc V2はどうかというと、「 ほぼ Kailh製Cherry MX互換スイッチ互換」です。
要するに、Kailh用スイッチオープナーで開けられないことはないのですが、難しいです。僕は何個も壊しました。これはChoc V2互換もLow-profile POM互換も同じ。
個人的には、ピンセットで開けるほうがいいと思います。

交換用スプリングとしては、SPRiT DesignsのAlps/Choc交換用スプリングが使用できます。Choc V1スイッチをバラして取り出すこともできますが、前述の通り対応するスイッチオープナーが流通していないため、あまりおすすめはできません。
遊舎工房にこないだ一瞬入りましたが既に売り切れ、SPRiT Designs公式ストアは送料がデタラメなため、購入するなら以下のストアがおすすめ。それでも、単価も送料もかなりエグいことになりますが……

Choc V2/Low-profile POMの互換性問題

以上を踏まえ、表にしてみます。

両者の明確な違いはトッププレートで、互換性なし。
キーキャップはLow-profile POMの方が受け入れが狭いです。

Choc V2系スイッチの分類

最後に、販売中のChoc V2系スイッチを、Choc V2互換とLow-profile POM互換に分けて紹介しましょう。

詳細なスペックはほぼウェブ上にないので、基本的にリンクは販売ページの紹介です。アリエクなどにもありますが、メーカーおよび国内販売サイトを優先的に紹介します。

仕分けだけすると、以下のとおりです。

  • Choc V2互換

    • Kailh Choc V2

    • Kailh Choc V2 サイレント

    • Kailh Deep Sea Silent mini

    • Haute42 Crystal

  • Low-profile POM互換

    • Lofree Shadow

    • Kailh ALL-POM low-profile

    • Haute42 Wind Engine

    • Kailh Four Seasons

Choc V2互換

比較的軸ブレが大きく、逆に言うとスレが少ない。官能的な気持ちよさは少ないが、疲れにくい。

Kailh Choc V2

製品紹介ページ

ストア

本家本元。リニア、タクタイル、クリッキーの三種展開。安価で入手性が高い。

Kailh Choc V2サイレント

謎多き製品。その経緯についてはグリーンキーズの記事が詳しい。

Kailhの製品コレクションにも記載されておらず、どうも実験的製品の気配が漂う。今後はDeep Sea Silent miniが生産されていくのではないか? 逆に言うと、今のうちに確保したほうがいいかも……

Kailh Deep Sea Silent mini

というわけで、Choc V2の静音仕様。工場潤滑(ファクトリールブ)済み。クリッキーはない。

Low-profile POMはステムがボトムハウジングをぶっ叩く構造上、底打ちが響く設計のケースだと爆音が鳴るのだが、実はそこさえ対策すればかなり静かになる。静音がいいならそちらを採用するのもアリかと思う。

Haute42 Crystal

イチオシスイッチ
ウェブ上にまとまった情報がなくて、ちゃんと理解できているか怪しいのだが……

Haute42(現COSMOX)のレバーレスアケコン用に開発されたコラボ製品。
ストアはアリエクの公式ストアか、Amazonの販売代理店(二社)。

最大の特徴は、全ポリカーボネート(PC)製であること。
ヌルヌル系のクリーミーな自己潤滑素材であるPOMに対し、ツルツル系の硬質な低摩擦素材であるPC。特に低荷重スプリングに入れ替えて使用する場合、PCのほうが実質的に「軽く」動くため。
その特徴を活かすためだろう、ファクトリールブもされておらず、非常にスコスコした打鍵感で、音もカコカコという感じ。
気持ちよさはChoc V2より無いかもしれないが、ラクさは最高。元々ストロークも短いので、とにかく小さい力で打てる。オススメです。

Low-profile POM互換

軸ブレが小さく、ヌルヌル動く。めちゃくちゃ気持ちいい。
しかし、元々スプリングが高荷重なものが多い上、低荷重に交換してもあまりスルスル動かず、疲れやすい。

全部ファクトリールブ済みだと思う

僕はあんまり推してない

Lofree Shadow

ブームの火付け役。圧倒的な気持ちよさ、底打ち対策さえすれば静音性も兼ね備える。
リニア(Ghost)・タクタイル(Phantom)・クリッキー(Wizard)の三種展開。

Kailh ALL-POM low-profile

スペックはLofree Shadowと全く同じ。好評を受け、自社販売用に製造されたものだと思われる。

Haute42 Wind Engine

Crystalと同じくHaute42とのコラボ製品だが、こちらはLow-profile POM互換。
Lofree Ghostの低荷重版というスペックで、アクチュエーションフォースは10g小さい40gとなっている。

Kailh Four Seasons

紹介記事

販売ページ

ほぼShadowとWind Engineのカラバリというスペックなのだが、クリッキーがスプリングの異なる二種で、いずれもWizardと荷重が異なる。

Spring=Wind Engine
Summer=高荷重版Wizard
Autumn=低荷重版Wizard
Winter=Phantom

しかし、クリッキーのSummer/Autumnは透明になっており、POMに見えない。PC系ならちょっと話変わってくるんだが、クリッキーなんだよなあ。リニアしか使わないんだよなあ……

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