初めて組むwings42用のキースイッチは何がいいのか
の補足。
前回の記事で述べたが、wings42は自作初心者にはかなりおすすめできるキーボードだ。
作りやすく、使いやすく、ありがちな不満点が設計段階で解消されている。
しかし、唯一「初心者向け」としては引っかかるのが、スイッチソケットが採用されていないことだ。
そのため、スイッチを交換するにはハンダ付けを剥がす必要があり、それなりに高度な技術または高価な工具が求められる。
よって、最初に選ぶスイッチは非常に重要といえるのだが、しかし、何を選ぶのが無難なのだろうか?
無難な選択肢などない
これも繰り返しになるが、スイッチほど実際に使わないとわからないものはない。
人によって好みがあるのはもちろん、キーボードによってもキーキャップによっても違う。
小指は軽くしたい、人差し指は重くしたい、ホームポジションとサムクラスタとそれ以外で変えたい、などなど、使ってみて初めて要望が出てくるものだ。
まあ、おおまかにはリニアで軽めが無難ではある。どうしても一つだけ選ぶなら、僕ならRed Proを推す。安いし。
(ちなみに、僕は全部Pinkにして、ちょっとだけ軽すぎたかなあ……と思っている)
とはいえ、42キー分となると2772円。やっぱり合いませんでした、ハンダ吸い取り機も買います、となるとなかなかのダメージだ。
なので、どうやったら最適なスイッチを選べるか、ということを書いていこうと思う。
試す
遊舎工房の店舗に行く
首都圏近郊にお住まいの方であれば、やはり一度遊舎工房を訪ねてみるのがおすすめだ。
多数のスイッチを触れるスイッチテスターもあるし、組み上げたキーボードも展示されている。展示品のキーボードにどのスイッチが使われているかは、スタッフさんに尋ねれば教えてくれるだろう。
ただ、品揃えそのものがdaily craft keyboardより少ないので、試せないものもある。
また、デスクに向き合った状態と立った状態では、全然感じ方が違う。特にキー荷重(押し下げるのに必要な力)については、普通より軽く感じる(実際にはもっと軽い方がいい)可能性が高い。
スイッチ詰め合わせセットを購入する
wings42を販売するdaily craft keyboardは、choc v1スイッチの品数でも国内最多を誇るショップだ。
そのスイッチ全種を1個ずつ封入したのが、このセットだ。これだけで、とりあえずプレートに乗っけてカチカチ押してみることはできる。
しかし、せめて固定した状態でないとフィーリングがわかりにくいだろう。
最終的に自分でハンダ付けするなら、ハンダ付け練習用基板、sandbox keyboard v2がおすすめだ。
一枚だと16種類は入りきらないが、wings42と違いソケットにも対応するので、抜き差しして試すこともできる。
どうしても、ハンダ付けせずにスイッチだけ試したいという場合……Keychron K1のホットスワップ対応モデル、という手がないではない。ホットスワップというのは、要するにソケットのことだ。
スイッチを試すだけとなると高いが、まあスイッチとかキーキャップとか部品も取れるし、工具を揃えるのとはそんなに変わらない。メルカリで売ることもできるだろうし。
適当なメカニカル/静電容量無接点キーボードを試す
近場に大きな電器店やパソコンショップがあるなら、自作キーボードはともかく、量産品のメカニカルキーボード(ゲーミング系含む)は置いてあるかもしれない。
あってもKailh chocではなくCherry MX系の分厚いスイッチのものだけだろうが、キー荷重とキー特性の参考にはなる。
ここでいうキー特性とは(ほぼ独自用語だが)リニア/タクタイル/クリッキーとかいうやつのことだ。
FILCO、アーキスあたりがあれば、一通りのキー特性は試せるかもしれない。
キー荷重については、そもそもメカニカルとは特性そのものが違うが、リアルフォースのバリエーションが多く、参考になる。
条件による選び方
キースイッチの選び方、みたいな記事は無数にあるのだが、どうしてもCherry MXが中心で、Choc系はオマケ程度の扱いが多い。
前述のKeychron K1の製品紹介ページで、選べるスイッチの特徴が簡単にまとめられているが、オプティカルスイッチは単品で購入できない。
よって、n番煎じ感はあるものの、ユースケース別に改めてまとめてみようと思う。
小さな力で打ちたい
キー特性はほぼリニア一択だが、場合によってはタクタイル・クリッキーもアリ。
daily craft keyboardでは、50gが標準的な荷重と紹介されているが、これはメンブレンやパンタグラフなどの普及スイッチに比べると、フィーリング的には「けっこう重い」と思った方がいいと思う。
ふつうのキーボードと同じくらいの感覚で打てるのは、35〜40gくらいではないだろうか。
タクタイルとクリッキーは「引っ掛かり」があるので、必要な力はリニアより大きくなる理屈だが、どこまで押せばいいのかわかりやすいというメリットもある。
ついついッターン!してしまうという方は、試してみるのも悪くない。その場合、タクタイルの方がよりマイルドで無難だ。
騒音を抑えたい
キー特性はほぼリニア系一択。クリッキーは論外。タクタイルは、少し音は出るが、それほど大きな違いはない。
基本的には、より軽い方が小さな力で押せる=小さな音になるが、底打ちを考えると話が変わってくる。
スイッチを押しきって底にぶつかると余計な音が出るので、その意味で軽すぎるスイッチは好ましくない。
さらに、跳ね返りの問題もある。深く押し込むとその分勢い良く戻ってくるわけで、できるだけ浅く打つのが望ましい。その意味で、タクタイルは選択肢に入るだろう。
25gくらいになると感覚的には無抵抗に近く、静音性を考えると35g以上が無難だと思われる。
指ヂカラに自信があるなら、リニア50gのredが価格も安くおすすめだ。
ホールドのみのキー
ホールドする場合は基本底まで押し込むので、キー特性はリニア一択。
そしてできるだけ軽い方がいい。よほど誤入力が気になるのでなければ、最軽量20gのpinkでいいのではないだろうか。
サムクラスタのキー
大抵はホールドが多くなると思うが、タップもする場合を考える。
フィンガー(親指以外の指)と比較すると、親指は力が強いはずだが、タイピングに関してはそうともいえない。自然に握る向きではなく、横向きに押すことになるからだ。
よって、その他のキーより軽くするのもアリだ。といっても、1段階くらいの差に留めておいた方が無難だろう。
また、絶妙な深さで止めることも難しいので、キー特性はリニアがおすすめだ。
小指のキー
フィンガーの中でも、小指は一際力が弱く、また短いため運指負担も大きい。
よって、やはり比較的軽いキーが適するが、フィンガーは「ひとまとめ感」が強いので、フィールが違うと混乱するかもしれない。
逆に、比較的押し間違えやすいからこそ重くする、という考え方もある。このあたりは、何を優先するかによる。
また、一番外側の列は、比較的使用頻度が低くなると思うし、すべきでもある。
その他のキーと同じでもいいのだが、ここだけキー特性を変えると、「ここは特別」感が出て、けっこういい。
メインがリニアならタクタイルかクリッキー、メインがタクタイルならクリッキーがおすすめだ。メインがクリッキーの場合、より主張の弱いキーに変えるのはあまりおすすめできない。
ホームポジションのキー
「指を乗せておく」ことになるので、他が非常に軽いキーの場合、少し重くしておくと誤入力を防げる可能性がある。一番押しやすく力も入るところなので、負担も問題になりにくい。
hjkl
あなたがvimmerであり、特にvimium系ブラウザ拡張を使用している場合、hjklはホールドが多いのではないだろうか。
その意味では、軽いリニアが比較的好ましいが、タップが少ないわけではなく、ホームポジションとも被るので、ここは考えどころだ。
また、Enter(Return)、Backspace、Space等もホールドしがちな人が多いと思う。
タップとホールドのどちらを優先するかは非常に難しい問題で、一概には言えない部分が多い。
ただまあ、タクタイルやクリッキーをホールドするのはちとやりづらいが、リニアをタップするのは別にやりづらくないので、やっぱり無難なのはリニアだろう。
リニアばっかじゃねえか! どうせならタクタイルとかクリッキーとか使ってみたい!
もちろんそれもアリだ。充分に試せず交換も難しいなら、リニアが無難なのは間違いないと思うが、タクタイルやクリッキーが悪いということではない。
実際、クリッキーは面白いし、フィードバックがはっきりしているのでわかりやすくもある。特に、より入力がシビアなゲーム用途だと評価が高い。
職場やカフェ、家族のいる家ではさすがに迷惑だと思うが、一人暮らしの自宅なら新鮮なタイピング体験を楽しめるだろう。
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