新世代のロープロファイルスイッチまとめ
ロープロファイルの時代だ。
磁気の時代というのはナシだ。
近年、クラウドファンディングによりニッチ的な製品の開発が進んでいる。
その中で、キーボード製品に合わせた専用スイッチが開発され、市場に投入されるようになっている。
その悉くがロープロファイル系スイッチであり、かつて打鍵感を選ぶ由もなかったロープロファイルスイッチも、急速に選択肢が充実しつつある。
もっとも、従来のスイッチ製品とは異なる販路ゆえ、把握していない自作キーボードユーザーも多いはずだ。そこで今回は、僕が知る限りの新世代ロープロファイルスイッチについて紹介する。
従来のロープロファイルスイッチ
その前に、ロープロファイルスイッチの「家系図」を把握するためにも、数年来提供されている定番製品について、簡単に確認しよう。
Kailh Choc V1 Switch
ロープロといえばこれ。薄くて安くて入手性も高く、自作キーボードにおける採用例も豊富だ。
使えるキーボードの多さと並び、最大のメリットは押下圧の選択肢の多さといえる。
特に低荷重派にとっては、20gの存在がありがたい。これは最も普及しているCherry MX互換スイッチでも提供されていない低荷重だ。
最大のリスクは、キーキャップの保持部がCherry MX非互換のいわゆる「コンセント状」で、選択肢が少ないことだろう。
そのため3Dプリントで作成している個人も多いが、形状ゆえに足が折れやすく、とにかくキーキャップに悩まされることが多い。
Kailh Choc V2 Switch
キーキャップをCherry MX互換とした、改良版というよりは兄弟機。
いくらか背は高くなっているが、キーキャップの選択肢が多く、既存の資産を活かしやすいことが最大のメリットだ。
(追記)キーキャップはCherry MXほぼ互換だが、全てのMX互換キーキャップが利用できるわけでない。
まず、単純に背が低いため、スカートの短いキーキャップでは打鍵時につっかえる場合があることには注意が必要だ。ミニスカあるいはワカメちゃん系のキーキャップを選ぼう。
反面、V1より遥かに採用例が少なく、設計者以外には手を出しづらい。
また、ソケットはV1と共通であり、基板を工夫すれば両対応も可能だ。
Gateron Low Profile Switch(KS-27)
基本的な設計思想はChoc V2と共通で、ロープロファイルでありながらキーキャップはCherry MX互換としたもの。
しかし採用例はChoc V2よりさらに少なく、国内ショップで現在販売されている基板の中には存在しないはず。
ソケットは存在するが、当然Kailhとは互換性がない。
その他
Cherry Low Profile Switch
やはりChoc V2的な感じ
独自フットプリント
一応売ってるが採用例は聞いたことない
ただしプレトラベルがロープロ系としては短い1.2mm、さらに短い1.0mmの銀軸も存在する
かつてはロープロスピードとして唯一の選択肢だった
ウルトラロープロファイル系
Kailh X SwitchとかCherry Ultra Low Profileとか
ノートパソコンのようなパンタグラフ式のスイッチユニット
キーキャップの選択肢が絶無
改造がほぼ不可能
打鍵感にこだわれないため変態には採用されないが、超薄いので別の変態に採用されることがある
新世代のロープロファイルスイッチ
次に、新生代の製品について紹介する。
従来のロープロファイルスイッチの一般的なイメージは、だいたいこんなところではなかろうか。
薄い
割にストロークは深い
打鍵感・打鍵音には期待できない
これに対し、新世代製品には次のような傾向がある。
打鍵感の向上
スピードスイッチ化
では、具体的な製品を挙げていこう。
Kailh x Lofree Full POM Low Profile Switch (Shadow)
Lofree FLOW専用スイッチとして登場した、衝撃の超新星。
Lofree FLOWの官能性にはケースの構造によるところも大きいが、スイッチだけ取っても常識を覆す圧倒的なフィールを誇る。
そのクリーミーな打鍵感は、ロープロファイルに限らなくても上位争いが可能なレベルといってよかろう。
設計はChoc V2ベースだが、リニア(Ghost)とクリッキー(Wizard)はプレトラベル1.2mm、タクタイル(Phantom)も1.6mmと、Choc V2にはなかったスピード設計になっている。
特段静音設計を謳ってはいないが、底打ち以外は非常に静かで、キーボードの設計次第でサイレントスイッチとしての運用も可能だろう。
キーケットを前に採用キットの開発が進んでおり、これからさらに普及が進むのは確実といえる。今最もアツいスイッチだ。
なお、フットプリントはChoc V2と共通のため、基板やソケットはそのまま使えるが、完全互換ではないことには注意が必要だ。
スイッチ底面からツメまでの高さは2.2mmと0.2mm増えており、トッププレートが2mmだと浮いてしまう。
ツメは1.61.2mmのプレートを挟み込むスナップフィットになっており、0.61.0mm分をガスケットで埋めるのが設計としては常道だろう。
もう一つ注意したいのは、キーキャップの嵌合がかなりタイトだということ。専用キーキャップならさほど問題ないが、その他のキーキャップでは非常に外しづらかったり、精度の甘い3Dプリント品(特にレジン)では破損のおそれもある。
キーキャップを自由に選びたいなら、Geon Trimmerの購入がおすすめだ。
Gateron Low Profile 2.0 Switch(KS-33)
フットプリントは1.0と互換で、打鍵感についても、正直Shadowに比べると変わり映えしない。
ただし、通常ラインナップに加え、Nuphy Airシリーズ専用の位置づけで販売されている製品が多数あり、バリエーションが圧倒的に増えている。
押下圧はもとより、プレトラベル1.2mmとスピード仕様のCowberryがあるのが特に重要だ。また逆に、スピード系しか選択肢のないShadowと異なり、深めのスイッチも含めて選べるともいえる。
Shadowの官能性は圧倒的だが、キーキャップ問題も含めそこそこクセはあるため、こちらの方が好みという方も少なくないはずだ。
Kailh Amber Switch
Choc V1互換のスピードスイッチ。キーボード用ではなく、アケコン用に開発されたものだ。
プレトラベル1.0mmと上記二製品を超えており、メカニカルスイッチの無改造で限界スピードを求めるなら選択肢に入るだろう。Choc V1互換ゆえ、そのまま使用できるキーボードも多い。
ただし、国内代理店が存在しない上に送料も高く、入手性は悪い。僕も試してません
NAYA Create専用スイッチ(KS-28)
現在未発売、期待の新星。
モジュラーなキーボードとして注目を集めているプロジェクトNAYA Create用に開発された専用スイッチだ。現在公式サイトで予約注文を受け付けている。
公式サイトがリニューアルされてまとまった情報がなくなってしまったのだが、型番からしてGLP1.0ベースのカスタム品と思われる。
既発表の情報では、Kailh Amberと並ぶプレトラベル1.0mm、さらにフルトラベル2.0mmと、驚異のショートストロークを実現している。
注文済みです。早く試してみたい。
全部付けられるようにできるという話もあります(下記スレッド)
この記事はCorne Light V2 (Kailh x Lofree Ghost) で書きました
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